平成28年3月21日と22日の2日間、南三陸町の南三陸ホテル観洋を会場に「全国被災地語り部シンポジウムin東北」が開催されました。
南三陸ホテル観洋を会場に開催された 全国被災地語り部シンポジウムin東北の会場 |
会場には300人を超える皆さんが集まりました |
1日目は、東日本大震災や阪神大震災の語り部など300名を超える人が参加して開催されました。
プログラムは5部構成でした。
第1部は、「語りべバス」乗車体験。21日午前11時に、南三陸ホテル観洋が震災以来毎日運行している、「震災を風化させない語り部バス」に乗車し、南三陸町の復興の様子を視察しました。
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震災を風化させない語り部バスで南三陸町内を視察しました 写真提供:南三陸ホテル観洋 伊藤俊さん |
午後1時からの第2部は、実行委員長の阿部隆二郎さん(南三陸町地域観光復興協議会会長)の開会挨拶から始まりました。
全国被災地語り部ジンポジウムin東北実行委員長 阿部隆二郎さん |
その後、仙台市在住の民俗研究家・結城登美雄さんが「もう一度、ここで生きていく。」と題した基調講演を行いました。
基調講演をする 民俗研究家結城登美雄さん |
その中で、結城さんは、東日本大震災被災地の人々は、自然と共に生き、謙虚に質素に暮らしてきたこと、季節を感じ、自然からの恵みを大切にして生きていること、沿岸被災地で暮らす人たちは、本当に「ここはいいところ」だと話し、地域の歴史、文化を大切にし、自分たちの生きる糧となる自然を大切にしていることなどを紹介しました。
日本の食糧自給率はカロリーベース39%で、北海道、東北地方の農業や漁業が日本の食を支えているという事実から、東日本大震災で被災した農漁業の復興は、今の私たちの生活だけでなく、日本の未来にも関わる重大な問題であるとも述べました。
さらに結城さんは、復興再生のための7つのテーマの言葉を示し、地域文化や暮らしをよく知ることも風化の防止と地域再生につながると述べました。
復興再生の7つテーマの言葉
1.よい自然風土があること
2.よい仕事の場があること
3.よい居住空間があること
4.よい文化があること
5.よい仲間がいること
6.よい学び場があること
7.よい行政があること
パネルディスカッションでは、南三陸町と全国各地から4名の語り部の皆さんが集まって行われました。
兵庫県人と防災未来センター上級研究員の小林郁雄さんは、1995年の阪神・淡路大震災の経験とそれを伝えていくための淡路、阪神地域各々の取り組みを紹介しました。
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小林郁雄さん(兵庫県人と防災未来センター上級研究員) 写真提供:南三陸ホテル観洋 伊藤俊さん |
和歌山県の稲むらの火の館館長の崎山光一さんは、1854年(嘉永7年/安政元年)の安政南海地震津波で村民の命を守った「稲村の火」とその後162年にわたる伝承について話しました。
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崎山光一さん(和歌山県 稲むらの火の館館長) 写真提供:南三陸ホテル観洋 伊藤俊さん |
北淡震災記念公園副支配人の米山正幸さんは、1995年の阪神・淡路大震災の北淡町の経験と地域の結びつきについて紹介しました。
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米山正幸さん(北淡震災記念公園副支配人) 写真提供:南三陸ホテル観洋 伊藤俊さん |
一般社団法人復興みなさん会代表の後藤一磨さんは、1960年(昭和35年)のチリ地震津波の経験、東日本大震災の経験を語り継ぐことなどを話しました。
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後藤一磨さん(一般社団法人復興みなさん会代表) 写真提供:南三陸ホテル観洋 伊藤俊さん |
今回のシンポジウムのテーマは「命を守ること」。
「防災・減災の重要性を伝えていく」語り部の大切を会場全体で確認しました。
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コーディネーター:山地久美子さん(大阪府立大学客員研究員) 写真提供:南三陸ホテル観洋 伊藤俊さん |
大切なのは「命を守る」こと。それを伝え続けるのは私たち「人(ひと)」であることも確認されました。
その後、3つの分科会に分かれて、それぞれのテーマに沿って意見交換が行なわれました。
第1分科会(コーディネーター:気仙沼コンベンション協会の宝田和夫さん)では、南三陸町の2人の語り部の講話と東日本大震災、阪神・淡路大震災被災地から8つの団体からリレートークで取組み紹介がされました。
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第1分科会の会場の様子 写真提供:南三陸ホテル観洋 伊藤俊さん |
皆が集い、つながる場の必要性も話し合われました。
第2分科会「南海トラフ等今後の大地震へ向けた語り部ワークショップ」(コーディネーター:小林郁雄さん)では、和歌山県稲むらの火の館館長の崎山光一さんと兵庫県の北淡震災記念公園副支配人の米山正幸さんから講話がありました。
第2分科会会場風景 |
崎山さんは、震災を知らない世代が語り継ぐことの難しさについて、米山さんは地域の連携の重要性を話しました。
会場からは熱い意見がのべられました |
会場からは、将来の災害、その時に命を守るための語り継ぎの重要性について考えさせられたなどの発言がありました。
第3分科会では「次世代へ繋ぐ語り部ワークショップ」(コーディネーター:南三陸ホテル観洋の伊藤俊さん)が南三陸町と兵庫県淡路市からの高校生の講話で始まりました。震災後に生まれた淡路高校の高校生と東日本大震災を経験した南三陸町高校生の交流は、未来に「命を守る」ためにどのような活動が必要か、これからの交流の重要性が挙げられました。
語り部バスで町内を視察する参加者たち高野会館では震災当日の様子を熱心に聞いていました |
2日目(22日)は南三陸ホテル観洋が毎朝運行している「語り部バス」と「物言わぬ語り部」である高野会館を巡る2コースに分かれ乗車し、町内の様子を語り部の方の説明を受けながら視察しました。
高野会館の3階のトイレは津波で壊れ便器だけが残りました 津波の力の強さを示していました |
ホテル観洋の所有する「高野会館」では、329人(内2つはイヌ)の命が施設スタッフの機転で守られたことなどが説明されました。
震災翌日会場327人で分け合った飲料の空き瓶 |
当日施設に勤務していたスタッフの方に、当日の寒さ、津波が退いた後、会場に散乱した飲み物を集め一口ずつ327人で分け合って飲んだことなどを聞きました。
閉会式には100名を超える人が参加しました。
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2日間のシンポジウムに参加してみて、誰もが参加できる活動の継続が大切であると感じました。
(取材日 平成28年3月21日、22日)