「継続」
石巻地域を取材する中で、たくさん耳にした言葉です。
震災を機に創刊された地域情報誌が、ここ石巻市にあります。
「この地域に『あったらいいな』という存在から『生活の一部』として、復興期が終わった後も末長く必要とされるような存在でありたい」
そんな思いから始まった「ゆくゆく輪」は、月に 1度、石巻市釜・大街道地区11町内会に月に配られています。
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地域情報誌「ゆくゆく輪」の始まりは、2014年8月です。
一般社団法人BIG UP石巻が主催して地域支援団体を対象に開催した大街道支援連絡会の話し合いがきっかけでした。
一般社団法人BIG UP石巻が主催して地域支援団体を対象に開催した大街道支援連絡会の話し合いがきっかけでした。
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編集部の話し合いの風景 この時間で記事の内容が決まっていきます。 |
さまざまな話し合いの中で浮き彫りになった課題が、在宅被災者への情報提供や情報の周知が難しいということでした。
その対策として、月1度の地域情報誌を発行することが決まりました。
そして「ゆくゆく輪」は、翌月に創刊されました。
いずれは・・・
いつかは・・・
「その後に続く言葉はそれぞれ違うのではないかと思います。
未曾有の大震災を乗り越えて、これから先の未来に対しての希望や夢を願って毎日を送ってほしい」
そんな想いで地域情報誌の名前は「ゆくゆく輪」と名付けられました。
毎月市報配布日に一緒に届けられるゆくゆく輪は、A4判4ページの情報誌です。
3面には、その月に開催されたイベントの報告や来月のイベント紹介が掲載され、最後のページはカレンダーで、さまざまなスケジュールが一覧できるようになっています。
釜・大街道地区は海の近くにあり、海沿いには工業地帯が広がっています。
震災の時は、工場が壁となり津波による流出を免れた家屋が多くありました。
そのため、家屋を撤去せずに自立再建をして住み続けている方々も多いのです。
さらにスーパーや飲食店などが建ち並ぶ大街道地区は生活の利便性が良いため、地区に建てられる災害復興住宅には10カ所530世帯の入居が予定されています。
その中には他の地域から移住してくる人も多くいました。
「震災直後から在宅避難者は、情報が来ないというのが一番の課題だと思っています。
そこで始めたコミュニティスペースは、人が集まる場となり、さまざまな情報が入ってくるようになりました。
しかし、情報が集まる場だけではだめで、アウトプットしなければなりませんでした。
コミュニティスペースの利用者を増やすためにもどういう使い方ができるのかなどの事例があれば、ここを使う選択肢につながると思います。
まずは情報の共有とコミュニティスペースの存在を知ってもらうために情報誌を作り始めました」
情報誌の発起人である一般社団法人BIG UP代表の原田豊さんは言います。
そして、ネット環境が整った場所、ネットを使える人など、読者が絞られてしまうSNSやホームページでの情報発信ではなく、いつでも誰でも見られるものとして、紙媒体を選びました。
イベント情報だけではなく、メディアでは紹介しきれない大街道地区の復興状況などの詳しい情報なども掲載されています。
【情報写真】
ゆくゆく輪が発行されて約1年半の間で、「これを読んでイベントに来た」という人や、掲載されていた消防団の求人情報をみて入団した人もいたと言います。
ポストに毎月届く「ゆくゆく輪」は、地域の人々に少しずつ浸透していきました。
創刊以来、一般社団法人BIG UPが編集部の窓口となっていましたが、より活動を円滑にするために昨年の10月からは、ゆくゆく輪編集部を設立し、大宝院の住職でもある天野秀栄さんが代表となって現在では5つの団体を中心に活動しています。
「私たちが住む釜・大街道地区は復興住宅の建造が進み市民も増え始めていますが、コミュニティの再構築が課題となっています。
ゆくゆく輪は町内会の枠組みを越え、地域の方々の交流の橋渡しとなる存在となっていけばいいと思っています」![]() |
ゆくゆく輪編集部 提供 |
街に寄り添い続ける人々が作り出す「ゆくゆく輪」
それは、住民の生活に楽しさと安心を与えてくれる温かな情報誌でした。
それは、住民の生活に楽しさと安心を与えてくれる温かな情報誌でした。
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情報誌「ゆくゆく輪」
http://www.big-up-ishinomaki.jp/%E6%83%85%E5%A0%B1%E8%AA%8C-%E3%82%86%E3%81%8F%E3%82%86%E3%81%8F%E8%BC%AA/
(取材日 平成27年12月3日)