松を頂いた大小いくつもの島影が散らばる「松島湾八百八島」。
江戸を「大江戸八百八町」、大阪を「浪速八百八橋」・・・と呼んだように、要するにたくさんあるという意味です。
松島湾の島々で、実際に島と認められるものは約230島。岩礁を含めると300近くになります。
八百八島はオーバーですが、遊覧船に乗ってこの多島湾を行けば、島の数の多さにあらためて気付かされます。
松島湾の300近い島や岩礁は、七ヶ浜町、塩竈市、松島町、東松島市のいずれかに属しています。
また、人が暮らしているのは、このうち塩竈市に属する「浦戸諸島」の桂島、野々島、寒風沢島、朴島の4島のみです
野々島の宇内浜です。沖に浮かぶのは陰田島。 陰田島は、以前はもっときれいな三角形でしたが、 地震の揺れで崩落してしまいました |
実際、「浦戸」といえば、塩竈市営汽船で渡って行ける、この4つの島のことを思い浮かべる人が多いでしょう。
浦戸諸島はまた、花咲く島々でもあります。
よく知られる花景色は、桂島の菜の花でしょうか。
そして、家々の庭先はもちろん、野辺の道の傍らや、浜辺やヤブのそばなどにも、チューリップやスイセン、ウメ、サクラ、ヤブツバキ、ヤマツツジ、ワスレナグサ、ハマヒルガオ、ヤブムラサキ、そして夏にはハマナス、ラベンダー、ヒマワリ、キキョウ、秋にはコスモス、ワレモコウ・・・。
園芸種から山野草まで、ここに書ききれないほど、たくさんの花々が咲き競っています。
宇内浜に咲いていたハマヒルガオ |
でも、3.11の津波は、多くの家屋、そして農地や花畑などを侵し、花色にあふれていた場所をガレキに埋め、土色に変えてしまいました。
「花いっぱいの島を取り戻そう!」
震災後、浦戸諸島では、花の種を蒔いたり、苗や球根を植える活動がいくつもスタートしました。
6月6日、そうした活動を進めている「海と花の物語」の一行が、浦戸諸島へやって来ました。
この日は、今春、花を咲かせてくれたスイセンやチューリップの球根を掘り起こして回収するという活動。
秋になったら、これらの球根を、あらためて島の各所に植える予定です。
球根は、一度掘り起こしてやることで、いっそう元気になります。
そうしてまた、来年には、島を美しい春色に染め上げてくれるのです。
石浜地区でスイセンの球根を掘り起こしました |
2015年6月2日(火曜日)
浦戸諸島にたくさんの花と笑顔を! 「チューリップ球根堀り&島歩き」参加者募集(塩竈市)
http://kokoropress.blogspot.jp/2015/06/blog-post_25.html
「海と花の物語」は、桂島に縁のある内海啓二さん・友子さんご夫妻が、「島の人たちを元気づけたい」と2011年秋に始動した活動。
『花と緑の力で3.11プロジェクトみやぎ委員会』をはじめ、全国の方々から提供していただいた約3,000個の球根を、同年11月、桂島と野々島に、ボランティアの方々と一緒に植えたのが始まりでした。
6月6日の活動に参加された皆さんです(宇内浜にて) |
「海と花の物語」・・・という現在の名称となるよりもずっと前から、です。
「100回以上・・・かな? いえ、もう数えられないです(笑)。3.11以降でも30回以上は通い続けています」と、内海友子さん。
「この活動は不定期ですが、春と秋の開催が多いですね。秋には球根を植え、春になればそれを見に行き、そして初夏になったら球根を掘り起こす・・・」
いわば人にも植物にもやさしくてナチュラルなサイクル。
島の気候や日射し・・・。四季の巡りに合わせて、活動も、島を渡る風のように続けられています。
桂島の庵寺地区。ここは民家があった場所。 土嚢が置かれている向こう側にも、かつては住宅が立ち並んでいて、 この場所からは海は見えなかったそうです |
「もう一度、花の島々を取り戻したい、という気持ちもありますし、島のよさ、美しさも多くの人に知ってほしい。一人で島を歩くより、こうして皆で歩くことでと、その良さを共有できると思います」
昨秋、クロッカスを植えた活動が「海と花の物語」の第5章になります。
これまで綴られてきた「物語」の章は・・・
2011年と2012年が「第3章 チューリップ」
2012から「第4章 忘れな草」と「第5章 クロッカス」です。
そして2011年と2013年は「スイセン」も・・・。
、
「第1章は、元から咲いていた菜の花。第2章は、スイセンプロジェクトで、別の方々と島に植えたスイセンに敬意を表しています。
菜の花は、浦戸諸島の春景色の原点。私たちの活動は、チューリップから始まったんです」
「風の丘」に咲いていたエゾキスゲ |
民家の庭先の「ナデシコ」 |
この日の参加者は内海さんご夫妻を含む大人19名と子ども3名(途中から島の方も参加しました)。
マリンゲート塩釜から市営汽船でまずは桂島へ。港から小さな丘を乗り越えた先の庵寺という地区でチューリップの球根を掘り起こしました。
そのまま桂島を歩き、石浜近くで今度はスイセンの球根を回収。
そして石浜から市営汽船で寒風沢島へ行き、さらに渡船で野々島へ。
昼食のあとは野々島を横断しながら、花咲く丘や浜辺を訪ね、海と花の景色を楽しみました。
オオキンケイギク(左)とツツジ |
個人の方がお一人で作庭されたという野々島の「風の丘」 |
浦浜の景色を見渡せば、津波の爪痕はまだ残っています。でも、花たちはもう一度力強く根を張って、海と空の青色の中に可憐な笑顔を咲かせています。
宇内浜にはウッドデッキやブランコもあります |
島に暮らす皆さんもそうおっしゃいます。
花咲く景色が戻ってきた。
島の復興のひとつの風景です。
桂島の民家の庭先にはナデシコやポピー、オオキンケイギク、バラ、ツツジなどが、野々島の丘には、アジサイ、ニラ、キスゲなどが、そして浜辺にはハマヒルガオも咲いていました。
そして夏にはラベンダー、ヤマユリ、クルマユリ、ネムノキ、ツリガネニンジン、スミレ・・・などが次々に咲き代わり、海明かりの中に可憐な光をほとばしらせてくれるはず。
浦戸諸島へ、ぜひ一度お出掛けください。
瀬戸を渡り、浦々を訪ね、丘を越えて、野辺を歩いて、浜辺で遊び、たくさんの花々と笑顔を交わし、夏雲の影の下でお弁当を広げ、海風に吹かれながらのんびり過ごす・・・。
そんな「島の夏休み」がおすすめです。
塩竈市営汽船のデッキから。 航跡の向こうが浦戸諸島です |
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●島には数軒の商店はありますが、飲食店などはありません。
昼食やおやつなどは事前にご用意ください。
●県立自然公園内ですのでキャンプやたき火はできません。 島に宿泊したい方は、
桂島に3軒、石浜に1軒、寒風沢に2軒の民宿・ペンションがありますのでお問い合わせください。
●また、お手洗いは船着き場の公衆トイレなど数カ所しかありませんのでご注意を。
●崖地などは崩落の危険もありますので近づかないでください。
●船の運航時間や乗船場などもチェックしておきましょう。
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塩竈市HP → 「ようこそ、癒しの島へ。浦戸諸島」(船の時刻表など)
http://www.city.shiogama.miyagi.jp/urato/index.html
(取材日 平成27年6月6日)