皆さん、知っていますか。
宮城・岩手沖合の三陸沖は、世界三大漁場の1つなんです。
世界に多数存在する漁場の中でも魚獲種の多い優良な漁場として、ノルウェー沖、カナダ・ニューファンドランド島沖のグランドバンク、そして三陸・金華山沖があります。
中でも金華山沖は、暖流の黒潮(日本海流)と寒流の親潮(千島海流)がぶつかり合う潮目である上に、岩手の内陸から石巻まで249キロメートルを流れる北上川の水が注ぎ込みます。
この山の恵みをたっぷり含んだ植物プランクトンが海の幸を極上にしてくれるのです。
そんな漁業の大都市で生まれ育ち、漁業の魅力をカッコよく発信している集団がいます。
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FISHERMAN JAPAN |
今回は、東北の若手漁師集団のFISHERMAN JAPANのメンバーを紹介していこうと思います。
「漁師ってかっこいいな」
若者たちがそう思って、漁師を職業として選ぶ若者が増えてほしい。
そう語るのは、同団体の共同代表、赤間俊介さんです。
宮城県が誇る世界三大漁場も、今回の東日本大震災により多大な被害を受けました。
海を相手に生きる漁師は、津波によって船や漁具、納屋などを失っただけでなく、風評被害など多くの問題が同時に重なって、漁業の再開を諦めた人も多くいました。
魚食の低迷、後継者不足は震災前よりもより深刻な問題です。
「しかし、それはあくまでも課題であって、世の中にPRするべきは魅力なんです。
それを大きく発信していきたい」
と赤間さんは言います。
一般社団法人東の食の会とヤフー株式会社が運営する「三陸フィッシャーマンズ・プロジェクト」に集まった若手の漁師の皆さんは、お互いが持っている悩みを打ち明け、お互いが持つ知識を共有し、打開策を見出してきました。
一般的に、漁師は個人事業主。
同じ浜でも協働よりは、個々で営む人がほとんどです。
しかし、漁師という仕事で共通している想いは、誇りを持っているということです。
「かっこよく稼げる漁師になって、新しい産業を作り、漁師の後継者を増やすこと」
という想いを持つ漁師が集まり、昨年2014年の8月に一般社団法人FISHERMAN JAPAN(略:FJ)が設立されました。
現在のメンバーは13名。
かっこいよくて、稼げる漁師という漁業の魅力を発信して、さらに地域や業種の枠を超えて、営業だけでなくイベント、商品開発、水産業のIT 化を中心に取り組んでいます。
また、高校生を対象とした出前授業など、海の街だからできる水産業の教育、地域を巻き込む事業も各地で多く実行されています。
そして、赤間さんは、地元塩竈市で漁業の魅力を発信し続けています。
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赤間さんが漁をする松島湾は、大小の島々に囲まれる内湾で、湾岸いたるところに貝塚もあり、そのことから 昔から魚介類が豊富だったということが分かります。
また、陸と海の自然が融合して、海中では繁茂する藻場があり、魚介類だけでなく、海藻がよく育つ地域です。
魚にとっても海藻にとってもオアシスのような松島湾は、海藻の森なのです。
赤間さんが現在、塩竈から発信しているのは、
スーパー海藻の「アカモク」と塩の歴史ある「塩竈」で作った「藻塩」です。
アカモク |
FJの共同代表の赤間俊介さんは、アカモク漁師です。
また、塩竈市漁業協組合員であり漁師赤間3代目、株式会社シーフーズあかまの生産管理と営業を担当しています。
私がお伺いした(株)シーフーズあかまは、塩竈市藤倉の住宅街の一角にありました。
平成元年の創業以前から、松島湾で育まれたコンブやワカメ、アカモクの養殖から加工販売という六次化に加え、海藻加工食品の研究開発を行っています。
そして、平成19年アカモクの商品化が始まりました。
秋田県では「ギバサ」、山形では「ギンバソウ」、新潟では「ナガモ」と、地域によってアカモクの呼び名は違うそうです。
食感は、コリコリ、シャキシャキという食感で、味は海藻と同じ海の味です。
平成19年に塩竈市のアカモクが地域産業資源に指定されました。
ミネラルや食物繊維、ポリフェノールなどを豊富に含んでおり、学術機関などの研究では、高血圧抑制、血糖値上昇予防、抗腫瘍作用、コレステロール低下に効果のあるフコイダンや、骨粗しょう症予防になるビタミンKが豊富に含まれていることが分かってきました。
まさに、現代の生活習慣病を予防できる食材でもあり、それだけでなく、美容と健康にもいい海藻です。
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震災は、周囲の住宅では浸水したところもあったそうです。
ライフラインが途絶えた震災当時、赤間さんは、お父さんとともに浄水場の水を汲んで、近隣への給水活動を始めました。
水道が使えるようになった半月後には、発電機を使い、機材を動かして、塩蔵ワカメの出荷を開始しました。
「定番品として出荷し続けなければ、自分たちが出している棚が空いてしまう・・・。
切らすということは、生命線が絶たれるということ。
2年空けたら、業界には忘れられてしまいます」
震災があっても、流通は止まることはありません。
厳しい状況でもできる限りの出荷を続けました。
しかし、「漁師赤間の方は大変だった」と赤間さんは振り返ります。
津波で船を失い、再建するにも震災直後は、復興に関する補助金のシステムが万全ではありませんでした。
補助金を待てばその分時間がかかり、造船場も発注が重なり手元に届くのがかなり遅れると考え、赤間さんは、被災者支援の補助金制度を待たず、震災から1カ月後に新造船を発注しました。
そして、8月には船おろしを行い、震災から半年後には、ワカメの種付けを開始し、12月には収穫をすることができました。
震災直後から常に動き続けていた赤間さんは、その後もアカモクを広めようと岩手のアカモク生産協同組合と共同で東の食の会のブランディング支援を受け、「地域横断あかもくプロジェクト」を始動しました。
さらに、再び藻塩産業を復活させようと商品開発を地元の人とともに進めています。
という想いで、赤間さんは藻塩造りに力を入れています。
「塩竈はもともと塩づくりが伝わる地域でした。
ここは藤倉という地名で、昔は藤浦と呼ばれていました。
梅雨時期になると藤の花がとてもきれいなんです。
その藤の枝を薪として使い塩が作られたという記述もあるんです」
赤間さんから塩竈の地名の由来について聞きましたがとても興味深いものでした。
その名の通り、「塩竈」は、海水を煮て塩をつくる竈(かまど)のことを言います。
昔は日本各地の渚に塩竈がありました。
塩竈市もこの竈のある場所として有名になり、それがそのまま地名になったと言われています。
また、塩竈市の塩造りの神である塩土老翁(しおづちおじ)が祀られている奥州一ノ宮塩竈神社の末社御釜神社に藻塩焼きの神事として塩造りの技法(藻刈神事・水替神事・藻塩焼神事)が現在も受け継がれています。
(株)シーフーズあかまの藻塩は、御釜神社に伝承されている神事と昭和18年に発行された神代の藻塩についての文献を参考にした独自の製法で作られているそうです。
「どんな状況でもできる限りのことはやる」
赤間さんはその後も県内外に漁師の魅力、塩竈の魅力、海藻の魅力を発信し続けています。
「アカモクで日本を元気に」 (株)シーフーズあかま 赤間 俊介 |
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「地産地消って観光資源にもなる!
地元で取れて、地元の食文化というのが観光資源でもあるのだと思います」
赤間さんは、あかもく漁師として、
フィッシャーマンジャパンの共同代表理事として、
漁業の魅力、ふるさとの魅力を同志とともに日本中、世界中に発信し続けます。
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(株)シーフーズあかま
http://www.kaisounomori.jp/
FISHERMAN JAPAN
http://fishermanjapan.com/
(取材日 平成26年12月8日)