1月18日、塩竈市の「海商の家亀井邸」で「第三回亀井邸寄席新春落語会」が開催されました。
東北に笑いと元気を届けてくださる落語会。会を重ねて3回目となりました。
先日、告知もさせていただいた、こちらです。
「東北を笑いのチカラで盛り上げたい!「第三回亀井邸寄席新春落語会で塩竈」のお知らせ(塩竈市)
http://kokoropress.blogspot.jp/2015/01/n.html

会場となった「亀井邸」は、盬竈神社裏坂の途中にある和洋二階住宅です。
現在の「総合商社カメイ(株)」の初代社長である亀井文平氏が大正13年に建てたもの。
普段はNPO法人「みなとしほがま」が管理していて、館内を見学することもできるほか、こうした催事に貸し出されたりもしています。
開演間近。お客さんが続々と |
開演時間が近づき、用意された約50席はいっぱいに。
高座を務めたのは、江戸落語の古今亭文菊師匠と、上方落語の笑福亭笑助師匠です。
東のイケメン古今亭文菊師匠 |
昨秋には、市川海老蔵さんらが日本の伝統芸能を集結し、東京、京都、シンガポールで開催した「ジャパンシアター」にも落語家として出演しました。
「東京などから見ると、東北の皆さんって寡黙なイメージかな、なんて思っている人は多いかもしれません。でも、お話をさせていただくと、ニュアンスも間合いもやっぱり伝わるし、楽しんでくださっているなと感じます。特におばちゃんは元気ですね(笑)」(文菊師匠)
西のイケメン笑福亭笑助師匠 |
大阪の大手芸能プロダクション・吉本興業は、地域密着型プロジェクトとして2011年4月から「あなたの街に住みますプロジェクト」を進めています。
全国47都道府県すべてに所属の芸人さんを派遣して、実際に居住させ、地域に密着した芸能活動で地域貢献しようというものです。
笑助師匠の塩竈市での高座は第一回以来、1年3カ月ぶり。
「『東北住みます落語家』言うてやらせていただいてます(笑)。もう呼んでいただいたらいつでもどこでもまいります。お手伝いさせてください」(笑助師匠)
題して「東西イケメン二人会」。
トップバッターは文菊師匠。演目はおなじみの「時そば」です。
本当におそばを食べているよう・・・ リアルな表現にびっくり |
そば代は16文。お勘定のとき、男は主人の手のひらに一文銭を一枚ずつ「ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ・・・」とテンポよく載せていき、そして「やぁ(八文目)」と数えたところで、「おぅ、主人、今何時(なんどき)でぃ?」と質問。「へい、九つで」と主人が答えると、重ねて「とぉ、じゅういち、じゅうに・・・」と続けて数えあげ、さっと店を去ります。1文ごまかしたのでした。
これを見ていた別の男、先の男が勘定をごまかしたことに気づき、翌日、屋台へ行って真似をします。
ところが、お箸は使い回し、器は欠け、汁はしょっぱく、そばはのび、ちくわは偽物の麩。ほめようがありません。
男はそばを食べ残し、勘定を始めます。「ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ」・・・そして「やぁ・・・、おぅ、今何時でぃ?」。主人「へい、四つで」。「いつ、むう、なな・・・」
まずいそばを食べ、さらに5文も多く払ってしまったというオチ。
ちなみに「九つ」は「暁九つ(午前0時頃)」、「四つ」は「夜四つ(午後10時頃)」のことです。
2番目の男がまずいそばを食べた瞬間(笑) ほんとうにまずそう··· |
有名な噺なので知っている方もいらっしゃったかもしれません。
でも、そばをすするリアルな表現、勘定をごまかそうとするスリリングな展開、男の間抜けぶり・・・に、お客さんは引き込まれ、何度も大笑い。
笑助師匠の演目は、これもおなじみの「道具屋」。
噺の「まくら」は 「山形県と宮城県の県民性の違い」でした。 山形在住の笑助師匠ならでは |
「鳥屋さんから伝書鳩を買ってオイラのところへ帰ってくる訓練をした。それを売っても必ずオイラのところへ帰ってくる。繰り返せば大もうけ」
「うまくいったのかい?」「いや、みんな鳥屋に帰っちまった」
叔父さんは、自分が副業でやっている「道具屋」をやってみないかと持ち掛けました。でも、その品物というのが・・・。
火事場で拾ってきてヤスリで削って柄を付け替えた「ノコギリ」、つくりだけは立派だけれど決して抜けない「芝居用の刀」、首が抜ける「ひな人形」、ほこりだらけの「笛」・・・。
与太郎は、道具を担いで露天商が並んだ場所へ行き、さっそく店を開きます。
ところが商売の要領も知らない与太郎のこと - 。
最初の客は大工の棟梁。ノコギリを手にとって「(焼きが)甘そうだな」。
与太郎は「(味が)甘い」と勘違い。ノコギリをなめたりします。「そうじゃなくて焼き入れが甘いってことだ」「それなら大丈夫。火事場で拾ったものだから」
焼きが甘い···って ノコギリをなめる場面 |
「抜けるヤツはねぇのか?」「ひな人形の首」
万事がこの調子。
そして、次に来たのはご隠居さん。
「なんだい笛の穴にほこりがたまってるじゃないか。掃除しないと。・・・んっ指が抜けない!」「困りますよ。売り物なんだから」「仕方がない。これ、幾らじゃ?」 「・・・えっと、元帳を見て、掛け値、掛け値・・・と。10万円です」「高すぎる!足元を見たな?」「いえ、手元を見ました」
間近に感じられる間合い、息づかい、表情・・・ やっぱりライブならではですね |
落語の世界に引き込まれ、誰もが時間を忘れてしまいます。
中入りのあとはもう一話ずつ。
文菊師匠は『やかん』、笑助師匠は『餅つき』を披露してくださいました。
3回目となった宮城での落語会。
これを企画されたのは、神奈川県在住の古橋直子さん。ボランティアで宮城に来られたとき、東松島市のNPO法人「のんび~りすみちゃんの家」の代表・伊藤寿美子さんと出会い、そのご縁から、宮城の方に落語の楽しさを知って欲しい、と2年前、伊藤さんと相談して、始まったのでした。
落語会は、いつも東松島市と塩竈市で開催されています。
塩竈市で行われるようになったのは、「すみちゃんの家」のスタッフでもある塩竈市ご出身で在宅の尼僧である菊地永良さんが主催されている「楽しいふつふつ塾」とのご縁もありました。
この日、古橋直子さんは体調を崩してしまい、塩竈には来られませんでした。
でも、古橋さんのお仲間である三田村真さん、神林麻里さん、中村臨子さん、古橋直子さんのお姉さんである洋子さんが現場を手伝ってくださいました。
ややご年配の方が多かった会場。 誰もが生の落語を心の底から楽しんでいました |
落語会のあと、塩竈で人気の「金谷豆腐」さんの湯豆腐と、「荻原醸造」さんの玉こんにゃくが、来場者の皆さんに振る舞われました。
大豆の味が濃厚なお豆腐と おしょうゆの風味がたまらない玉こん |
「東松島の私たちの施設は津波で浸水しました。でも、塩竈の皆さんにたくさん助けていただきました。生かされて今があります。塩竈の皆さんとのご縁も大事にしたいと思います」
とあいさつしました。
「のんび〜りすみちゃんの家」 代表伊藤寿美子さん |
「落語は江戸時代や明治・大正時代の、庶民ののんきな暮らしや、人と人とのつながりを描いたものです。我々ものんきに行きたいものです。落語を聞いて、ひとときでも裸の心でのんきになってもらえたら」(文菊師匠)
「お家にこもらないで、今日みたいにお出掛けして、誰かとの会話や、あるいは落語などで楽しんでもらえたらうれしいですね。これからも皆さんのそばにいて寄り添えたらと思います。それが都会から来た元気な僕にできること」(笑助師匠)
落語会のあと。師匠とスタッフの皆さん 「共に笑って、共に前へ」 |
今回見逃してしまった方は、次回はぜひ会場へお運びください。
リピーターの方も、もちろん。
ひとときの「のんき」になれて、お腹の底から笑えたら、「元気」もきっと満タンになります。
(取材日 平成27年1月18日)