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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2014年8月31日日曜日

2014年8月31日日曜日21:15
荒浜の風物詩の「キノコ狩り」が行われた深い松林は、
津波によってほぼすべてが失われました
ザーリャです。
今回の公開討論会の会場は、テーマとなる荒浜の現地。
貴田喜一さんの敷地の一角には、真新しいコンクリート基礎が打たれていました。その上に、夏の日差しを防ぐためのテントと、参加者用の椅子が並べられていました。

開催されたのは「荒浜アカデミア」。現地再生を願う住民グループ「荒浜再生を願う会」と、それを支援する有識者等によって開かれる公開討論会です。

ココロプレスでは、その模様をご紹介しています。

2014年8月30日土曜日
思いが、かなわない。でも、ふるさとを残したい~荒浜アカデミア~(仙台市)

真新しい基礎の上で、現地再生の議論が交わされました

今回のアカデミアの会場を提供したのは「荒浜再生を願う会」代表の貴田喜一さん。会員と共に、貞山運河や深沼海水浴場などの清掃活動を続けてきました。

「自宅の跡地に、新しい事務所の建築許可を得ることができました。震災以前の事業を継続し、事務所として使用するという
条件でです」

「人がここに戻るための、産業を興したい」と語る、貴田喜一さん

貴田さんは新築する事務所に活動拠点を構え、新たな地域の産業おこしを始めようとしています。
描くのは、原材料の生産から加工までを行う、農業の6次産業化を中心とした現地の再生プランです。

「震災から3年4カ月が過ぎ、その間も現地再建を目指して頑張ってきました。しかし現状は厳しく、私の代では荒浜に
『住む』ことは難しいと感じています。それならば、住まいは集団移転の場所に、そして、産業は現地の荒浜で興すほか
ありません」
他の選択肢がない、悩みながらの決断を、貴田さんは振り返りました。


荒浜地区が災害危険区域から除外されることが一番望ましい。しかし、それが難しいのであれば、せめて次の世代が荒浜に戻れるように準備を進めたい。貴田さんはそう考えています。

「そのための『産業おこし』を、まずは自分から広げていきたいのです」

個人の再建を越えた、荒浜地区全体の街づくり。産業が興れば、人が集まる。そして人が集まることで、状況が変わるかもしれない。貴田さんは、そのための準備を行っています。

「今は黒にんにくなどの農作物を生産しています。収穫した野菜を加工して、販売したい。現在は計画段階ですが、私たちが直接販売できる商品を開発したいと思っています」

「荒浜再生を願う会」では、農業の6次産業化の推進とともに、地区全体を『記録』と人が集まる『図書館』に見立てた『浜辺の図書館』の構想や、貞山運河をきれいにして『川で遊ぶ』など、交流人口を増やすプロジェクトも検討しています。

多くの専門家から、喫緊の課題へのアドバイスがありました

現地での取り組みの紹介後、集まった専門家からもさまざまな意見やアドバイスがありました。

「現地で開催された今回のアカデミアでは、参加者の皆さんも一人一人が触発されて、今までにない方向性を感じたのではないかと思います」

アカデミアの閉会にあたって、延藤安弘さん(NPO法人まちの縁側育くみ隊)が今回のまとめを行いました。

総評として、今回の「まとめ」を話す延藤安弘さん

1. ワタリガニも赤貝も、青空もいなさもみんな生きる仲間。
「佐藤優子さんの話にあった言葉です。住んでいた人たちの気持、風の心地よさ、
それらがすべてつながっている場所、それが荒浜なのだという魅力を感じました」

2. 楽しくて仕方ない、松茸狩りやお祭りのあるコミュニティ。
「荒浜の紹介をした中島敏さんのお話にあった、駄菓子屋や神社の縁日、季節の味を楽しむキノコ狩り。これらは荒浜の
コミュニティの誇るべき宝です」

3. 真に心がほっとする場所に住むことは、ニーズであり人権である。
「佐藤優子さんは仮設住宅に住むようになって、荒浜がどれほど良い場所であったかに気が付いた、そう話しました。
住民が『望む場所に住む』ということは、人権であり、ニーズです」

4. NO、住居!YES、産業!を起こそう!
「貴田さんは、産業を興して、荒浜の再生へつなげようとしています」

5. 考えるべき津波に考える減災策、地区防災づくりへ。
「住民の皆さんが自ら津波減災策を考えて、政策提言を行う。より能動的に未来に対するプランニングを行うこと大切です」

6. 絵のような敷地の花の縁取り、貝の縁取りは、再建設への強い意思表示である。
「佐藤優子さんの敷地境界に植えられた花々や、敷き並べられた貝殻は、住まう事への意思の表明です」

7. るる荒浜の暮らし方を次世代へ伝えよう。
「数世代後の世代に、私たちの荒浜の暮らし方の魅力を伝えよう」

8. 図書館や「6次産業」や、ボランティアツーリズムで若者を巻き込もう。

9. 困りごとも思いも市民間で分かち合うには。
「共感を広めるにはどうしたらいいのか。情報発信など、今後の課題が分かりました」

10. 論も大切。行動はもっと大切。
「私たちは行動によって、『思い』を『形』にします。議論を重ね、ロジカルな筋道だった方策を構築して、アクションを起こす。『行動すること』はもっと大切です。」

延藤さんのまとめた1から10の言葉の頭文字をならべると・・・

「わ、た、し、の、か、え、る、と、こ、ろ。(私の帰る所)」


「今回のアカデミアでは、現地での再建を望む皆さんに、その現地で話を聞くことができました。皆さんの再建に対する強い思いをもらったと感じています。『私の帰る所は荒浜である』。その思いを形にするために、これからも議論を積み重ねていくことが重要です」
延藤さんは、今回のアカデミアの感想をそう語りました。


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公開討論会が閉会するころ、日はだいぶ西の空に傾いていました。
被災地を訪れる人々の足並みも途絶え、草が浜風にそよぐ音だけが聞こえていました。

ココロプレスでは、これからも引き続き荒浜での復興への取り組みをご紹介していきます。

(取材日 平成26年7月21日)