2月5日。富谷町にある東北自治研修センターで、「熱い」報告会が開かれました。
参加したのは宮城、岩手、福島の被災3県で活動している「復興支援員」やNPOなどの皆さん150人余り。
震災から3年を迎えようとする今、それぞれの課題を発表し、共有し合い、解決への道を模索しました。
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東北自治研修センター(富谷町)。 自治体職員の研修施設として、1997年に宮城県をはじめとした東北各県と 宮城県市町村自治振興センターが共同で設置しました。 |
復興支援員とは、被災地で被災者の見守りやケア、地域おこし活動の支援等の「復興に伴う地域協力活動」に取り組む人たちです。
震災の後、被災した自治体が復興計画を進めていくために、被災した地域の内外から委嘱した人たちで、財源は総務省の「震災復興特別交付税による財政措置」です。
現在では、被災3県で計153名の復興支援員が活躍中です。
今日はその活動の1年間を振り返る、「平成25年度復興支援員研修報告会」なのです。
基調講演の講師は、公益社団法人中越防災安全推進機構復興デザインセンター長で、総務省地域力創造アドバイザーの稲垣文彦さん。
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稲垣文彦さん |
「復興支援員の可能性と課題」と題した講演では、
「人の力を信じ、人と人とが向き合い、被災者(人)本来の顔を見出し、人と地域の中に夢と希望を作る活動。それが復興支援員の役割」
「住民の力を引き出し(エンパワーメント)、住民の今の課題や不安に寄り添い、最後の一人まで支えるセーフティーネットであれ」
「行政は、“コミュニティづくりは支援員にお任せ”とい発想は禁物。市町村、県、国それぞれのレベルで復興支援員をバックアップしてほしい」
中越地震からの復興の経験を踏まえた、こうした実践的な提言に、会場は大きくうなずいていました。
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続いて、各県の代表から事例報告です。
それぞれの県から、復興の現場で活動している支援員と、彼らをサポートする県の担当者が登壇しました。
岩手県では平成24年10月に「いわて復興応援隊」が活動を開始し、現在では30名がさまざまな形で活動中であることが紹介されました。
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岩手県地域振興室 齊藤千花子さん |
震災後、ボランティアに関わるうちに「また岩手に戻って被災した現地で働きたい」と会社を辞めて「いわて復興応援隊」に。前職の経験を生かし、陸前高田市でパソコン講習、地元事業者のウェブサイト開設・運用支援、高校生へのキャリア教育などIT関連のプロジェクトを担当しています。
「被災地の問題を狭く考えてはいけない。根本には過疎と高齢化の問題がある。これは全国に普遍的なテーマ」と、いわて復興応援隊の今後の課題を述べました。
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「高校生のキャリアサポートは長くかかる。8年先まで見届けたい」 いわて復興応援隊 齊藤健祐さん |
宮城県からは、宮城県地域復興支援課の荒井遥さんと、復幸まちづくり女川合同会社の青木久幸さんが登壇しました。
県内では、南三陸町、女川町、石巻市、東松島市、仙台市が県と連携して復興応援隊を設置しているほか、気仙沼市、多賀城市、丸森町でも独自事業として設置していることが報告されました。そして、支援員をサポートするために、研修の実施やアドバイザーの派遣、専用ウェブサイトやパンフレットによる情報発信などの施策を実施していることが紹介されました。
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県内の取組みを紹介する、宮城県地域復興支援課 荒井 遥さん |
行政からは自立しつつもガッチリと連携して、「女川ブランドの復幸による観光まちづくり」に取り組んでいます。
その最前線で活動しているのが復興支援員(「復興応援隊」)です。隊員は、女川町出身者が2名、インターンが1名の計3名です。
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「住み残る、住み戻る、住み来る町、女川町を目指す」 復幸まちづくり女川合同会社 青木久幸さん |
しかし、「女川町の基幹産業である水産業から、女川町全体を活性化させる」という志のもと、地元事業者はもちろん、応援隊員やNPOとも連携して、まちづくりに懸命に取り組んでいます。
「復興事業が終了した後から、本当の復興は始まる」
「制度の期間のみで復興事業を終わらせるのではなく、収益を確保して、今働いている復興応援隊員を継続雇用もしくは、独立起業させることが目標」
青木さんは、そう熱く語りました。
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原発事故による深刻な影響に苦しむ福島県からは、田村市復興応援隊の渡邊奈保子さんが発表しました。
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「私自身が等身大で見て感じた”都路の今”を発信したい」 田村市復興応援隊 渡邊奈保子さん |
田村市は2005年に旧田村郡の5町村が合併して誕生した、人口約3万8千人のまち。阿武隈山地の中央に位置し、東部にある都路地区の一部は福島第一原発から20km圏内にかかっています。
渡邊さんは、復興応援隊の「住民力向上チーム」のメンバーとして、この都路地区でヒアリング活動を行いながら、イベントやさまざまな企画の運営支援などに取り組んでいます。
「除染」と「帰還」は大きな課題ですが、それだけではなく、人口が流出した結果、産業や雇用がしぼみ、日常生活にも不便が増しているといいます。
それでも、応援隊がサロンやイベントに参加したり、ここのお宅で作業をお手伝いすることによって、住民の方々の孤独感を和らげることができているそうです。
また、情報不足を嘆く声に応えて、かわら版「いいね! みやこじ」を発行したところ、「こういうものが欲しかった」と好評を得たそうです。
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福島県地域振興課 伊藤裕幸さん |
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各県からの発表に続いて、パネルディスカッションが持たれました。
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泊りがけの参加者も多く、この後も遅くまで熱い議論が続いたようです。 |
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被災地の現場では、復興や支援の担い手の絶対数が先細りになっているのが現実です。
そんな中、人生に大きく舵を切って現場に飛び込み、根を下ろしてじっくりと復興に取り組んでくださる人たちの力は、何よりありがたく思います。
口には出せないような大変な苦労を背負っているはずなのに、3年後、5年後、10年後と未来だけを向いて目の前の課題を解決している復興支援員の皆さん。
ココロプレスも、及ばずながら皆さんに声援を送りたいと思います。
(取材日 平成26年2月5日)