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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2013年10月29日火曜日

2013年10月29日火曜日11:21
こんにちは エムです。

ケナフの花

先日、「閖上のケナフ」を使った初の炭焼きが行われました。

9月8日の取材以来、台風や大雨などの日もあって、とても気になっていた閖上のケナフ。

2013年9月20日金曜日
大きく育て心の復興。「閖上ケナフプロジェクト」(名取市閖上)

そのケナフを育てている橋浦さんから電話をいただき、ケナフの炭を見てみたいと思った私は、早速 “長靴” を持ってケナフ畑を訪れました。
朝8時半に着いてみると、畑にはすでに橋浦祺卓(はしうら よしたか)さんと弟の橋浦 司(つかさ)さんの姿がありました。

炭を半分取り出した窯の内部
畑の作業場に設置されている炭窯は、今年8月に群馬高専特命教授の青井透氏や学生、窯の部材を提供してくれた足利工業大学名誉教授、岩崎眞理(まさと)氏協力の元、共同で製作されたものです。
群馬高専の青井教授が、このプロジェクトを支援する「NPO法人ケナフ協議会」(愛媛県)の会員という縁で設置が実現しました。
「NPO法人ケナフ協議会」副会長の高知県大学名誉教授、鮫島一彦氏はこのケナフ作りの発案者であり、欠かせない協力者です。


炭窯で焼いた後は、1晩置いて十分冷まさなければなりません。そして今日はいよいよ炭を取り出す日。
ケナフの炭は、東北でも試みた方はいましたが成功例はなかったとのこと。橋浦さんご兄弟は、育て方も炭を焼くのも試行錯誤で挑戦し続けています。
ケナフは木のように固い素材に感じますが、実は1年草。木とは違って素材自体に熱量はあまりありません。木炭を焼くときのような温度管理では灰になってしまうのだそうです。


ところがこの炭を見てください!
閖上で育ったケナフの炭の第1号の誕生です!

30kgのケナフが(約)3.4kgの炭になりました。とても軽い炭です


重さを量ってみると、炭になったのは総重量の約9分の1、容量にすると3分の1ほどになっているそうです。

[工程1〜2]ケナフを刈り取り、枝や実を取った後、
一定の長さに切りそろえる(橋浦祺卓さん)

[工程3]皮をむく(格井直光さん)

[工程4]乾かす

[工程5〜6]炭窯で焼いて取り出す(橋浦司さん)

ケナフの炭は脱臭効果の他、よく洗ったものは調理などにも使えます。ご飯を炊く時に一緒に入れたり、焼酎などに入れるとおいしくなるそうです。
「閖上育ちのケナフで作った炭だよ」
「閖上復興だより」の編集長であり、このケナフプロジェクトのスタッフの1人でもある格井さんも加わり、ケナフの炭の出来をしばし討論している3人の様子は、本当にうれしそうでした。


皮を乾かす方法も試行錯誤。皮は繊維を取るために使われます

橋浦さんや格井さんが「閖上育ち」にこだわり、丹精込めてケナフを育てているのには訳がありました。
もちろんこの炭や、これから挑戦するケナフの紙を閖上の特産品にするためです。
しかしそれは単に地元の売り上げに貢献したいだけではありません。

「震災のある前は閖上で一緒に生きて生活し、育ってきた人たちが、今ではバラバラに住んでいる。東部道路をくぐって来るのは嫌だと言う人もいる。イベントなども大事だとは思うが、こうして自分たちがやってることがきっかけになって、一緒に何かを作ることができたらと思ってやっている」
「閖上の人がここに足を運び、滞在時間が長くいられるような、しかも1回で終わらない活動があったら本当の意味での復興につながると思う」
「いつかは自立しなければならない時が来る。その時に困らない準備と体制作りが大事」。
2人はそう語りました。


4mはありそうなケナフ畑

しかし現実に、閖上は具体的な政策は何一つ進んでいません。
今閖上にある計画の1つは、震災で残った住宅、閖上に戻って今現在住んでいる橋浦さんのような方の家、このケナフ畑も2、3年後には全て壊して埋め立て、新しい町を作るというものだそうです。
それが実行されると閖上は誰も住まない土地になるようです。
ケナフ畑も移転先を検討中です。
「それでも」
橋浦さんと格井さんは言います。
「それでもここにいる以上は、人のために今できることを進んでやりたい」。
「計画が何も進んでない中こうしてやっているのは、忙しくしてないと心の不安が大きいという理由もある」

ケナフ畑の作業場。復興の計画ではここもなくなる予定

また驚いたことには、今までかかった経費は橋浦さんの持ち出しで行っていたとのこと。

炭焼き窯作りに協力してくれた群馬高専、足利工大総合研究センターの教授や学生、ボランティアの飲食も橋浦さんがお世話をしてきました。
ケナフを育てる過程で必要な機材なども当然ありますので、このままでは長い活動は難しいと感じていました。
そのため、橋浦さんの気持ちに賛同し、このプロジェクトを責任を持ってサポートしてくれる有志のメンバーで新たに体制を作り直し、プロジェクト名も変えて助成金を申請することにしました。


新しい名称は
「閖上ケナフの会」~閖上育ち、希望のケナフ~

代表の橋浦さんを筆頭に、ケナフ畑の責任者の橋浦司さん、広報担当の格井さん、その他にも4、5人の方が名前を連ねています。素晴らしいこの名称で再スタートです。この名前で製品に貼るステッカーも作られているとのこと。

ただ、相変わらず作業量に対して人手は足りていないのが実情です。
ケナフは人の都合に関わらず成長し続けていますし、冬が近づいています。
作業人員は、土日には少し行える人もいますが、ほとんど橋浦さんご兄弟頼みです。

「土日だけの手伝いでも良いけど、ちょっと見て帰ってしまうんじゃなくて、せめて朝から午前中いっぱいやってくれる人に来てほしい。5、6人で一斉にやると結構はかどるんだけどね」


もうすぐ冬がやってきます

私も素人ながら、見よう見まねで皮むきをしてみました。
1本目はとても時間がかかりました。皮も途中で途切れてしまい、なかなかスルッと長くはむけませんでしたが、やってるうちにコツが分かり、どんどん楽しく作業ができるようになりました。
畑の作業場で、広い空や新鮮な空気を感じながら、そしておしゃべりしながら作業していると、「ああ……私も大地に生きてるんだな」と自然とそんな気持ちになってきます。
これは私のように、街の生活に少しお疲れ気味で、気分転換したいと思っている人にはお勧めです。週末には訪れることのできる畑がある。そんな生活は体も心も元気になるようです。


ケナフの種も何かに利用できるかもしれません

「復興のため」と考えると重く感じる方もいるかもしれませんが、「自分のため」「地元だから」「少しでも役にたちたい」「子どもに体験させたい」など動機はさまざまで良いと思います。
ケナフ畑では、冬の前の手助けを必要としています
1度、足を運んでみませんか。

ますは橋浦さんに連絡を入れてみてください。

090-1936-3812(橋浦祺卓さんの携帯 )

橋浦さんご兄弟と格井さん。とても優しい方ばかりです

(取材日 平成25年10月14日)