東北地方の梅雨入り宣言。
関東地方の梅雨入り以降、東北でも明らかにぐずついた天気が続いていたので、気象庁発表で厳かに「梅雨入りの条件を満たした」と言われても、今ひとつピンとこなかったYUUです。
6月ってこんなに暑かったかしら。
近年は、毎年のように同じことを思っている気がします。
夏は7月からって、プール通いしていた幼少時の刷り込みがいつまでたっても抜けません。実際は、5、6月より、6、7月の気温差の方が大きいはずだと思うんですけどね。
100メートルも歩くと、シャツが肌に吸い付いてしまう6月の快晴のある1日、以前、ココロプレスでも紹介した「亘理いちごっこ」に行ってきました。
2011年12月22日木曜日
淡々とそしてきっちりと (亘理町)
http://kokoropress.blogspot.jp/search?q=%E3%81%84%E3%81%A1%E3%81%94%E3%81%A3%E3%81%93
JR亘理駅を降りて歩くこと20分。
歴史の面影ある商家が残る亘理町中町を通ります。
亘理町は古代より交通の要衝として開け、伊達政宗の治世に移ると、重臣片倉小十郎景綱が一時期預かり、景綱が白石城に移ると、一族の伊達成実が亘理の城下町の町割りを行ったそうです。政宗を支える両輪と言われた2人が移封されるぐらいですから。政宗もよほどこの地域を重要視していたんでしょうね。
雰囲気のある中町の通りをしばらく歩くと無事、到着しました。
通常の飲食店のような大きな看板設置はなく、亘理いちごっこの活動や今後の活動計画を告知する掲示板が目印です。
レストランのカウンタースペースは亘理いちごっこの活動案内でいっぱい |
亘理いちごっこは、被災者に無料で食事を提供するカフェレストラン開設が活動の始まりですが、現在は、仮設集会所などで寺小屋を開いたり、カウンセリング研修を受けたスタッフが仮設住宅を巡回するなど、活動の場を広げています。
馬場照子代表理事は、活動のきっかけを次のように話してくれました。
「震災後、避難所で炊き出しのお手伝いをしていたんです。私自身、料理サークルを開いた経験や、栄養学を学ぶため仙台市の大学に通っていたこともあり、被災者の方にバランスの良い温かい料理を食べてもらいたい、との思いでカフェレストランを立ち上げました」
震災直後は、多数の被災者が食糧の確保に窮していました。とりあえず、口に入るものならば何でもいい、仕方がない、というような日々が続いたことも確かです。しかし、ある程度の時間が経過してなお、遭難直後の非常食のような食事が続いたとしたならどうでしょう。茫然自失の震災直後の精神状態から、ある程度、諸状況が把握できて、逆に精神的苦痛が増してくるような時期だけに、食事が要因で体調を崩された方が大勢いたと聞きます。
「亘理町は、震災により町の約半分が浸水しました。仮設住宅やみなし仮設での生活を与儀なくされた方も大勢いらっしゃいました。震災以前の日常とかけ離れた生活を送ることは、それだけで体調を崩しやすいんです。炊き出しのお手伝いをしていた頃から、せめて食事の面だけでも体調管理のサポートを行うことができれば、との思いが強かったですね」
馬場さんは、炊き出しの合間をぬって、避難所にお浸しやおから炒りなどを作って持って行ったりしたそうです。ところが、個人としては相当な量を作り運んだつもりでも、量的には焼け石に水でした。行列ができ、あっという間になくなってしまったそうです。
そうした経験を重ねるうちに、「個人の支援活動では限界がある。資金的にも体力的にも長続きするものではない」との思いが募り、亘理いちごっこの立ち上げにつながったといいます。
レストラン開設当初は、家庭的な惣菜がメインのバイキング方式で、罹災証明を持参した人には無料、それ以外の人からは被災者への食事提供資金として500円以上の志(こころざし)をもらう方式でした。
その後、被災者からも廉価ながら有料にする一方で、現在は、そうした区分けなく、来客者に対し、同一の料金設定のメニューとなっています。
6月1日から改変したというメニューを見せてもらいました。
日替わりの「おすすめ定食」がさんきゅーセット(390円)に代わり、人気のお魚セット(500円)、野菜炒めセット(500円)は、ワンコインで栄養のバランスが取れた食事ができます。他にも季節のメニューのいちごっこ御膳(800円)、お魚御膳など、メニューの種類も増えました。
現在のようになったレストランメニューについて、馬場さんは、こう話します。
いちごっこの野菜炒めセット ワンコイン(500円)で栄養のバランスが取れた食事ができる |
現在のようになったレストランメニューについて、馬場さんは、こう話します。
「復興、支援活動は1、2年で済むようなものではないでしょう。ただし、仮設やみなし仮設住宅に暮らしながら、元の家に戻っていく人、新築の家で暮らす人も増えてきました。震災直後からしばらく続けてきたレストランの運営方式は、変更する時期にきていました」
NPO法人が運営するレストランだからといって、食材が全て支援物資で賄えるわけではありません。人件費にしても、無償で働いてくれるボランティアスタッフが常駐している施設はそうそうないでしょう。
亘理いちごっこの場合、野菜に関しては、支援物資と自己調達(被災農家からの購入など)半々ぐらいで賄えているそうですが、たんぱく源である魚や肉は、ほぼ、市場調達だそうです。
震災後の炊き出しが発展した形の食事処とは、多少、趣(おもむき)も変わりました。現在のカフェレストランは、体に配慮された食事がリーズナブルに楽しめる他に、震災により大きな傷跡を負った地域に欠かせないコミュニティスペースとなっています。
レストラン内部の様子 畳敷きの部屋に椅子テーブルと座敷椅子が両方配置されている。 |
2012年6月より現在の場所に移ったというカフェレストランの建物は、リースプレハブです。
この場所で、レストランを運営するだけでなく、NPO法人「亘理いちごっこ」のさまざまな活動も行ってきました。
馬場さんは、復興支援~地域コミュニティの活性化を目指す活動を続けていくためにも、恒久的に活動の拠点となるようなコミュニティセンターの建築を目指していきたいと言います。
そのために、賛助会員を募集するだけでなく、いちごっこ関連グッズや商品の製作・販売を継続的に行い、活動の原資にしたい考えのようです。
以前はいちごっこ関連グッズとして、ストラップやTシャツの製作・販売が主だったそうですが、昨年度から地元農家と契約して、「クラッシュいちご」、「ピュアとまと」の販売を開始しました。
両商品ともに亘理産の採れたての果物や野菜を原料としているのが大きな特徴です。
「いちごはアイスにからめてデザートに、トマトはパスタのソースにと、もともとレストランのメニューに使用していたものなんです。非常に評判も良く、地元の産品の販路を新しい形で広げることにもつながると思い、販売を開始しました」
クラッシュいちごを使用したアイスパフェを試食させてもらいました。甘みは十分なのですが、しつこくなく、ヘルシーな味わいです。馬場さんによると、保存料等添加物は一切使用しておらず、そのまま食べても美味しいそうです。
炊き出しの手伝いから始まった「亘理いちごっこ」の活動は、馬場さんの思いとともに、大きな広がりを見せているようです。関連グッズの販売が、ストラップなどからクラッシュいちごやピュアとまとにまで波及していった過程など、いちごっこの活動の広がりについて、馬場さんは、こう話します。
以前はいちごっこ関連グッズとして、ストラップやTシャツの製作・販売が主だったそうですが、昨年度から地元農家と契約して、「クラッシュいちご」、「ピュアとまと」の販売を開始しました。
両商品ともに亘理産の採れたての果物や野菜を原料としているのが大きな特徴です。
「いちごはアイスにからめてデザートに、トマトはパスタのソースにと、もともとレストランのメニューに使用していたものなんです。非常に評判も良く、地元の産品の販路を新しい形で広げることにもつながると思い、販売を開始しました」
クラッシュいちごを使用したいちごっこアイスパフェ 採れたてのいちごのほど良い甘さが特徴 |
炊き出しの手伝いから始まった「亘理いちごっこ」の活動は、馬場さんの思いとともに、大きな広がりを見せているようです。関連グッズの販売が、ストラップなどからクラッシュいちごやピュアとまとにまで波及していった過程など、いちごっこの活動の広がりについて、馬場さんは、こう話します。
「私たちは、”亘理いちごっこ”の活動を通じて、顔の見えない支援金、支援物資にも心をつなげる努力を行ってきました。支援したい側が一生懸命努力しても、受け取る側が感謝の気持ちでいても、一方通行で循環しないと、大概、一過性のことで終わり、時の経過とともに風化してしまいます。支援活動と並行して地域コミュニティの活性化を目指していくことこそが、時間はかかるでしょうが、本当の意味での復興につながると考えています」
「いちごっこは大きな家族」と話す馬場さん |
被災地復興を考えるうえでの重要なテーマは、震災前の状態に戻すことができれば、それがゴールなのか、地域の問題は解決するのか、ということだと思います。
建物や道路に関しては、以前の状態に近づけること、改修し、新築することが、復興の1つの目安にはなるでしょう。
しかし、日本全国の多くの自治体が抱える共通課題でもある「地域活性化」に関する問題は、震災で大きな傷を負った市町村ほど、震災以前からの懸案事項にさらに重しが加わってしまったような状態です。
若年層人口の減少、医療、高齢者介護の問題。
地域を疲弊させてしまう、こうした諸問題が、震災によって、より深刻度が増してしまったことは、目を背けることのできない被災地における1つの現実です。
「亘理いちごっこ」が、活動の輪を広げていくことを目指す取り組みは、馬場さんの話を聞けば聞くほど、今後の復興支援を中長期的に捉えていくうえで欠かせない、地域コミュニティーの活性化を目指す活動だと思うよりほかありませんでした。
取材を終えて帰り支度をする際、馬場さんに、
「中町の通りは雰囲気がありますね」と、話したら、
「あら、遠回りしたのね」
と、涼しげに返されました。
馬場さんは終始、穏やかな物言いをされる方でしたが、一方で、視点がぶれない、決めたことをやり抜く、芯の強い印象を感じました。
今度は道も覚えたことですし、カフェレストラン以外のいちごっこの活動の取材に、いずれまた、訪れてみたいと思います。