5月になり山菜のおいしいシーズンになりました。
気仙沼でサンプル採取された一部の山菜から基準値を超える放射線セシウムが検出されたというニュースが流れたことから、山菜採りを自粛する人が今年は多いようです。
菜の花畑 |
震災から2年2カ月が過ぎましたが、福島第1原子力発電所から飛散した放射性物質による土壌の汚染は今も深刻な問題です。汚染された土壌の除染作業もなかなか進んでいません。原子炉の廃炉までの道のりは遠いと伝えられ、食の安全について心配している人がたくさんいます。
気仙沼市役所で実施している空間放射線量の測定結果は毎時0.06マイクロシーベルト(5月10日)ですが、幾分高い数値を示す場所やサンプル採取された食品から基準値を超えた放射線セシウムが検出され出荷自粛になっている食品もあります。
こんな状況を心配する女性たちが、「安心安全な食糧を消費者に届けたい」と、気仙沼市の中山間部に位置する気仙沼市瘻槻(こぶつき)地区で農業を始めました。
「行動する!! VOAR LUZ(ボア ラズ) 佐藤春佳 |
代表の佐藤春佳(はるか)さんは、2児のお母さんです。震災の1年前まで東京で仕事をしていました。
帰郷して気仙沼市の中心地の借家に住み、仕事をしながら子育てをしていた時に被災。借家は地震で大規模半壊となりました。
この時、佐藤さんは第2子を妊娠中でした。情報を得られるようになって驚いたのが福島第1原子力発電所事故のニュースでした。「これからどうなってしまうのか?」と不安になりました。
「買い物をしていて、放射性物質の量が基準値以下と表示されていても、実際には含まれているであろう放射性物質の具体的な数値が表示されていないことに疑問を持ちました」
「子どもたちに安全な食品を食べさせるために、自分何ができるのかと考えました。まず、放射線を測るための簡易測定器を買いました。そして、自分でお米や野菜を作ればいい、と思いつきました」
佐藤さんの麦畑。もう少しで収穫できます。 |
佐藤さんは、祖父母が所有する休耕地の放射性物質の数値を測定してみました。すると数値が低いことが確認できたので、同じ思いを持つ仲間たちとともに昨年の夏からここを耕し始めました。
「全ての作業が初めてです。じいちゃん、ばあちゃんの指導を受けながら作業をしています。ボランティアの協力なども受けながら少しずつ前に進んでいけるといいです」
と話す佐藤さん。
草取りや草刈などの農作業は女性にはキツイのではないですか? と尋ねると、
「好きなんです」
と答えが返ってきました。
「これからは雑草との戦いです」
と笑顔で話していました。
現在は、地元の野菜やお惣菜などの直売所に手づくりのジャムなどを出荷して販売しています。
近く、敷地の一角にトレーラーハウスを設置して工房をつくり、将来は自分たちの育てた野菜を使って若年層向けにお惣菜なども販売したいという夢をもっています。
団体の名前は「VOAR LUZ」。
ポルトガル語で「飛ぶ光」という意味です。
いつも光のような輝きを持った佐藤さん。
「まずは行動あるのみです。いつか結果を出して意見を言えるようになりたいです」
と話します。
彼女自身が育てた麦のように、踏まれても強く夢を叶えていく人だと感じました。
(取材日 平成25年5月10日)