仙台市宮城野区岡田は近年、みその産地として知られるようになりました。
岡田生産組合が製造・販売する「岡田産づくり」の出荷が再開されたと聞いて、新しい加工施設を訪ねてみました。
「前の味と同じものをつくることができました。岡田産のみそが復活できて、大変うれしいです」
話を伺ったのは、組合長の遠藤源二郎さんです。
岡田地区は、他の市内沿岸部の地区と同様、東日本大震災では大きな被害を受けています。5つの集落のうち、3つで津波をかぶり、住民78人が亡くなっています。
組合の被害は、みその原料となるコメと大豆の農地約460haが壊滅し、加工施設が流出しました。組合は苦境に立たされましたが、震災直後から、消費者からのみそづくりの復活を願う声が多く届けられ、昨年4月の段階で事業の継続を決定したといいます。
総工費約5800万円となった新しい加工施設の再建では、国の東日本大震災生産対策交付金のほか、県の農業生産復旧緊急対策事業(ヤマト福祉財団助成金事業)などを利用しました。組合の負担率は12%に軽減されたといいます。
遠藤組合長は増産を目指しています |
平成11年に生産が始まった「岡田産づくり」は熱処理をしない生みそです。一般的なみそと違って、麹(こうじ)と大豆を同じ分量使うことで、香りの良さとまろやかな甘みを生み出したといいます。震災以前は、直売所に加え、みやぎ生協やヨークベニマルなどの量販店などで販売されてきました。
出荷を本格再開したのは1年8カ月ぶりとなる11月初旬で、建物の完成と同時に仕込んだ原料が商品化されています。今年は天候がよく、熟成は半年程度となり、例年より早まったといいます。
年間の生産能力は以前と同じく10t以上を可能としていますが、現状では6割程度であり、来年の半ばまでに以前の水準に戻したいとのことです。
岡田生産組合は、昭和55年に設立された、稲作からの転作に対応した岡田水田協議会が母体になっています。現在の組合員数は70農家で、耕作面積は水稲460ha、大豆160ha、大麦77haなどとなっています。
「みその加工は、転作作物となった大豆を有効活用できないものかということから、始まっています。みそはもともと組合員の農家が個人でつくっていましたので、ノウハウはありました。個人のみそづくりは、麹(こうじ)菌の発酵や大豆の水浸けなど、材料の扱いに手間がかかり、いつの間にかすたれていってしまいました」
新米を使った仕込みも始まっています。仕込みは夏場の3カ月を除き、通年行うといいます。コメは今年の耕作を復活できませんでしたが、隣接する同区高砂に組合員が所有する田んぼがあり、代替の収穫が可能となりました。
みそづくりを支える加工班の皆さん |
みそづくりの仕込みでは、こうした工程のほか、ひと晩寝かせた麹を切り返す工程、その麹に蒸した大豆を合わせ、塩を混ぜるといった工程が必要とされています。1工程に1日を要し、それぞれに4、5人のメンバーが割かれるといいます。
せいろから取り出したばかりで、湯気が上がるコメです |
コメをほぐして細かくなるまでこすります |
「震災前と同じ味をつくることができました。皆さんの協力に感謝します。これからもおいしいみそをつくっていきたい」
メンバーの1人はこう述べ、事業再開のうれしさをにじませていました。
「岡田産づくり」は、JA農産物直売所「たなばたけ」で販売されています |
自分流に味付けが可能な「仕込み味噌」 |
「いち早く従来の生産態勢に戻して、再び量販店で販売していきたい。生産量を増やし、最終的には12、13tの数字を目指していきたい」
遠藤さんは岡田生産組合の今後について、抱負を力強く話しました。
農業の復興が注目されています。組合のみそづくりは都市型農業の先進事例であり、地産地消、六次産業化といった取り組みからは目が離せないと思います。
「岡田産づくり」は750g入りで、525円(税込み)です。仕込み直後の状態で販売し、購入者が自由に味付けして熟成させることができる「仕込み味噌」(5㎏税込み2625円、10㎏同5250円)も好評のようです。問い合わせは「たなばたけ」(電話022‐388‐7318)へ。
(取材日 平成24年12月13日)