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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2016年3月10日木曜日

2016年3月10日木曜日14:16
こんにちはエムです。

凍てつく風が痛いような2月13日、仙台市青葉区上杉にある「仙台YWCA」の会館で、「震災から5年~これからの支援を考える」というタイトルの講演が行われました。

講師は「ケア宮城」代表・宮城学院女子大学名誉教授の畑山みさ子先生です。

広く一般に参加者を募って開催されたこの講演には、実際に被災者へのさまざまな支援活動を続けている個人や団体、支援活動に関心のある個人、仙台YWCAの関係者合わせて約50人が参加しました。


講演は、“心の支援”に重点を置く活動をしてきた方々に、今後の支援活動を考えるうえでのヒントとなるような内容でした。

畑山先生の専門は発達心理学・臨床心理学です。宮城学院女子大で40年以上、保育者と教員の養成に関わっていた畑山先生は、定年退職間近の2011年3月に発生した震災をきっかけに、宮城県内の仲間に呼び掛け、翌月の4月に支援者支援の組織「ケア宮城」を立ち上げました。

当初、畑山先生が真っ先に心配したのは、子どもたちの心でした。子どもの心を支えるためには大人への支援が必要と考えた先生は、「ケア宮城」のメンバーとともに、宮城県の教育員会と連携して、教員や保護者らへの心のケア研修を各地で開催してきました。
また、福島で被災した女性の支援を続ける「ふくしま総合相談支援センター」で自身も支援活動をしています。

畑山みさ子先生
「心を支えるとは専門家だけの仕事ではなくちょっとした配慮と
そのことを意識した対応によって誰にでもできることです」

[震災5年後の被災地の現状と被災者の心

新しい復興住宅へ移り住んだ人の中には、慣れない、隣はどんな人かも分からない大きな集合住宅で、孤立感・孤独感を抱えている人もいます。そこでは地域への再適応が課題になっています。
仮設住宅に残っている人は、クシの歯が抜けたようにポツンポツンと人がいなくなっていく中、「いつまで自分はここにいるんだろう、いなければならないんだろう」と、置いてきぼりを食ったような孤立感・孤独感を感じています。

このように生活ストレスを感じている人は少なくありません。それが蓄積すると、心・体・行動にも変調がでてきてしまいます。
復興の程度や状況の違いを「客観的」ではなく「主観的」に捉えがちになり、その結果、自分への攻撃・自分を責めるなどの行動が出たり、自己否定・孤独感などを募らせるようになったりします。他の人にその矛先を向けるときもあり、嫉妬や意地悪(攻撃的言動)をするようになるなどの反応が起きかねません。

PTSDの心配もあります。
PTSDとは外傷後ストレス障害のことですが、災害などの大きな出来事を体験した後に、突然その光景が目の前に浮かんで(フラッシュバック)きたりして、日常生活にも支障をきたすほど重傷になるケースもあります。

特に東北地区の人たちは「心が弱い」などと人に思われたくないという傾向が強く、自分がダメだと言われているように捉えがちで、精神科などの医療機関に行くことを拒否する人が結構います。
このような状態の人を「隠れPTSD」と言いますが、復興支援住宅に1人で住んでる人がPTSDを発症したとしたら、誰がそれを見つけて適切に対処していくのかという問題もあります。


[宮城県の小学校・中学校で起こっている問題]

小学校の問題:
現在の小学生の大半は、乳・幼児期の頃に震災があった子どもです。
震災の記憶もそれほど残っているとは思われない今の小学生ですが、学校の先生からは「落ち着きのない子どもが増えた」という話をよく聞きます。
「落ち着きがない」というのは大きな出来事(災害)の直後などにはよくあることです。そのため大震災の後も、ある程度周辺が落ち着いた頃には、子どもたちも落ち着くだろうと当初は考えられていました。しかし落ち着くはずの時期になっても、落ち着かない子どもたちが多くみられるのです。

中学校の問題:
中学校では不登校の問題が多くなっています。2014年に発表された前年度の資料によると、不登校の生徒の発生率(人口に対する割合)は、宮城県は全国1位でした。2015年発表では2位で、やはり発生率が高いままです。
宮城県内の市町村別発表の発生率を見てみると、必ずしも沿岸部が高いわけではありません。つまり、被災が大きかった地域だからこういう結果になっているというわけではなく、宮城県全体が高くなっているのです。

小中学校の問題から言えるのは、宮城県の地域社会全体が落ち着きがない状況になっているのではないかということです。
子どもたちが楽しく、実りある生活を送られるようにするためには、子どもたちの生活環境を良くしていく必要があります。そういった気持ちを皆さんも持っていると思いますが、それをどうやって実現させていったらよいのかを、一緒に考えていただきたいのです。


[今後の活動を考えるために]

まずは5年一区切りと考えて、これまでの5年間の活動の振り返りと総括を各グループ、団体などで行っていただきたいと思います。
「被災者の心を支える」と考えて始めた活動であれば、“きちんと責任を持って支援・実行できていたのか”  “その考えに則した具体的な行動・対応ができていたのかどうか” そういった点も見ていただきたいと思います。

そのうえでこれからすべきことを考えていただきたい。それには支援対象者の人たちの現在の状況を把握し、“支援が必要な状況なのか” または “どんな支援が必要なのか” を今一度確認して動いていただきたい。
地域の人たちに受け入れられるような配慮の仕方はもちろん必要で、そこを抜きにして考えることはできません。勝手な思い込みで動かないことが大事です。

また、活動資金の助成・支援が削減される中で、資金をどう確保するかという問題もあります。しかし資金集めだけが問題なのではなく、資金が無くてもできる事を探すというのも1つだろうと思います。

そして冊子「被災者の心を支えるために」をあらためてう1度見直してほしいのです。

被災者の心を支援するための注意点や方法、支援活動をする本人自身も
気を付けるべきことなどが、分かりやすく書かれている冊子です

「被災者の心を支えるために」について:
2011年の夏にWHO(世界保健機関)が被災現場で心の支援活動を行う人たちのための手引き「Psychological first aid:Guide for field workers」を発表しました。
全文の翻訳に関わった畑山先生は、日本での災害支援に当たる人たちが現地で活動をする際に、すぐに直接役立つようにと、日本向け縮刷版(A5判46ページ)を作りました。
非常に分かりやすく、読みやすいと評価されているこの冊子には、今後の災害に備えて、被災者の心を支える活動を考える多くの方に読んでいただき、実践に役立ててほしいとの願いが込められています。
( ※ この冊子を入手希望の方は、記事の最後の連絡先を参照ください)


[支援者にも疲労が]

震災から5年がたちますので、支援活動をし続けてきた皆さんの心にも疲れがでてきています。
被災者の心に寄り添えば寄り添うほど、支援者の心も傷つき、痛む可能性があるのです。これを “二次的被災者” と言いますが、支援者自身の心の回復も重要な課題です。疲れたままで引きずっていては、適切な支援活動は期待できません。心の疲労を回復して元気をよみがえらせる必要があります。
それには組織間の連携、仲間同士つながることも大切です。職場や支援の仲間は良き理解者になってください。


[支援活動を終える際には]

団体として活動の記録をまとめたものを作っておいてください。
活動を通して出てきたこと、分かったことなどをまとめ「次の類似の事態にはその情報を現地の支援仲間に伝える」ことができるようにしておきましょう。

そして活動を終えることを、支援した相手の人たちにきちんと話して終えるようにしましょう。
その際気を付けることは、支援してきた人たちとの間に絶ち難い感情が生まれ、「これからはお友達付き合いしましょう」といったつもりで同窓会を開いたりすると、つい、今度は自分の愚痴を言いたくなることもあるようです。
支援者が被災者に寄りかかり、依存するような形になってしまうことのないように注意してほしいですね。
親しさの中にも、心の支援者としての立場をわきまえた振る舞いを続けてほしいと思います。それは “上に立つ” ということでは決してなく、あくまでも支援する立場でその人の心を支えてきたのですから、その “心を支える” という姿勢は崩さないでほしいと思います。

そして支援活動の中で知り合った被災者の個人情報に関する守秘義務は、支援終了後も続くことを忘れないでください。



支援者自身の震災前の日常生活への復帰も選択肢に入れておいて良いと思います。
5年もの間支援活動をしてきたのです。まず一休み、一息ついてから今後のあり方を考えていただきたい。そして日常生活の中で、できる範囲で今後のボランティア活動を考えることも大事かと思います。

しかしあの時の助け合いの気持ち、「自分が何かしなければならない」「自分にどういうことができるのか」と思って活動を始めたその思いや、あの時のその気持ちを忘れてはならないでしょう。その気持ちまで捨ててしまうことはしてほしくないと思います。

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こうして約60分の講演が終わりました。私たちココロプレスのスタッフにも当てはまる話がたくさんあり、考えさせられる内容でした。
講演後は具体的な「リラクゼーションの方法」「活動の振り返り方法」のワークショップが行われました。

「呼吸法」「肩こり解消法」などを説明する畑山先生

「活動の振り返り」では参加者が5、6人でグループを作り、今まで個人や、所属している団体としてしてきた活動を話し、お互いの情報交換をしました。
こうすることで、自分の活動を客観視できるのだそうです。

それぞれの話を熱心に聞く参加者

どんな方が参加していたのか、ほんの一部ですがご紹介します。

・支援活動はしてなかったが、興味を持って参加した男性。
・震災3カ月後から仮設住宅を回って「フラワーセラピー」をしてきた女性。
・キリスト教系の団体に所属し、震災で親を亡くした子どもたちに、
 手作りのマフラーや人形を贈る活動をしている女性。
・近くに住んでいてこの講演を知り参加した女性。
・両親の介護と自身の体調不良で支援活動は今までできなかったが、両親の死と、
 震災を通して「生」の問題を深く考えるようになり、今回参加してみたという男性。

そして以前、ココロプレスでもその支援活動をご紹介した「一般社団法人 産直広場ぐるぐる」からも数人のメンバーが参加していました。

これまでの記事==============
http://kokoropress.blogspot.jp/2014/12/blog-post_7.html
http://kokoropress.blogspot.jp/2014/12/blog-post_47.html
http://kokoropress.blogspot.jp/2014/12/blog-post_25.html
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「限られた時間では足りない」「もっと話が聞きたかった」という声が多かったようです

「活動の振り返り」が終わると、同じ団体の中で「感謝のカード作り」をするように畑山先生から指導がありました。それは全ての人がもらう、メンバー全員からの寄せ書きです。
そこには活動してきたことをお互いに認め、褒め、感謝し合う言葉が書かれています。そうやって書き記すことにより、この5年間の気持ちの区切りを形として残すのが目的なのだそうです。

仙台YWCAのメンバーは「感謝のカード作り」をしました

こうして約2時間の講座が終わりましたが、「これからもボランティアの力が必要だと感じている」「5年間、皆さん本当に一生懸命やってこられたんだなと感じました」「もっと話したかった」などの感想がありました。

最後に畑山先生は言いました。
「ボランティアに関心があったけれど今まで何もしてなかった……という方のまず一歩目は、他の方々がどんな活動をしているのかを聞くことです。そうすることでハッと目覚めたり、『私にもできるかな』と思える活動があることに気付いたりします。

中でも『子どもたちの普通の生活を支えるボランティア』は非常にありがたいですね。
遊び場を作る・子どもの心の支援を行う・学習支援を行うなど、できる範囲でそれを積み重ねることで、『子どもを支える』が『地域を支える』に結びつくのです。
ぜひお身体に気を付けながら、これからも続けてください」


東日本大震災後5年。被災者の心を支えるために

これからできることを考え続けよう!


畑山みさ子先生と、仙台YWCAの皆さん

関連記事 ===============
こころのケアをこれからも~仙台YWCAの支援活動(仙台市)
http://kokoropress.blogspot.jp/2015/11/ywca.html
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◇ 冊子「被災者の心を支えるために〜地域で支援活動をする人の心得」
入手希望の方のお問い合わせ先
メール/caremiya@yahoo.co.jp

◆ ケア宮城
www.sed.tohoku.ac.jp/~caremiya

◆ ふくしま総合相談支援センター
Facebook/https://ja-jp.facebook.com/fukushimasogosodan

(取材日 平成28年2月13日)