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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2016年2月18日木曜日

2016年2月18日木曜日8:51
石野葉穂香です。

七ヶ浜町花渕浜の丘の上に建つ、地域密着型の国際交流や芸術文化の創造と発信を図るための拠点「七ヶ浜国際村」に、「NaNa5931(なな ごーきゅうさんいち)」という、子どもたちのミュージカルチームがあることをご存じですか?

「NaNa5931」は、七ヶ浜国際村の劇場付きのチーム。
平成13年に結成され、平成14年、七ヶ浜国際村開館10周年記念事業として『ナナ』という作品で旗揚げしました。

一作品ごとに町内からキャストを募集する・・・という市民劇団とは違い、メンバーは団員として研鑽を重ねます。
そして毎週、練習と努力を積み、チームとしてのパフォーマンスの調和と美しさと確かな表現力を磨き上げてきました。
「子どものミュージカル?」・・・ちょっと油断した気持ちでステージを観ると、きっと腰を抜かすはずです。

平成27年11月21日と22日、最新作である『ゴスタン Go Astern』が上演されました。
そして、私も初めて観劇し、腰を抜かした一人です。

ステージ衣装は子どもたちの保護者(お母さんたち)で編成された
「おはりこーず」の手作りです
『ゴスタン Go Astern』は、震災から1年半後の平成24年11月17日に発表された前作『ゴーヘGo Ahead』と対をなす作品。
東日本大震災の津波被害をテーマにした作品『ゴーヘGo Ahead』は、七ヶ浜はもとより、名古屋大学豊田講堂、そしてミュージカルの聖地といわれる東京「日生劇場」でも公演を行い、全国から多くの賛辞と高い評価を受けました。

なお、Go Aheadは「前へ」、Go Asternは「後ろへ」という意味。
地元・七ヶ浜の漁師さんたちは、実際に海で船を誘導するとき「ごーへ」「ごすたん」と言って、普段から使っている言葉です。

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町域の三方を海に囲まれた七ヶ浜町。
海辺には南西から順番に、湊浜、松ヶ浜、菖蒲田浜、花渕浜、吉田浜、代ヶ崎浜、東宮浜と7つの浜(地区)があります。

「7つの浜があるから七ヶ浜」。明治時代、廃藩置県が行われたとき、このエリアは自然と「七ヶ浜」と呼ばれるようになりました。

人気のサーフスポット・小豆浜
仙台湾の海明かりが町を明るく包みます
海辺のまちの歴史は、ある意味、津波との闘いの歴史です。
1000年前には、貞観地震大津波、江戸時代初めには三陸慶長大津波、そして明治三陸、昭和三陸、さらにはチリ地震津波・・・。
そして東日本大震災に伴って発生した大津波が、再び7つの浜を襲いました。

「お家がなくなっちゃった!」
避難場所でもあった松ヶ浜小学校の校舎からは、菖蒲田浜地区の家々が流されていく様が間近に見え、泣き叫ぶ子どもたちもいました。

「NaNa5931」の団員の中にも、家を、あるいは親戚や友だちを亡くしてしまった子どもたちがいます。
しかし、彼らは、悲しみを乗り越えて、再び歌い始めたのでした。

「震災直後、子どもたちの歌声に励まされたという方もたくさんいらっしゃいました」
と話すのは、七ヶ浜国際村の事務局長である高橋勉さん。
七ヶ浜国際村の高橋勉事務局長
「町の大使的な存在でもあります。彼らを呼んでもらえること。そして元気と勇気がもらえたよ・・・って言っていただけることは、私たちへの支援や応援にもなる。NaNa5931は七ヶ浜町の宝物でもあるのです」

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「NaNa5931」の舞台を指導し、まとめるのは、宮城県出身の演出家でミュージカル作家の梶賀千鶴子さんです。
劇団四季に『ユタと不思議な仲間たち』や『人間になりたがった猫』などを、劇団わらび座『きらきら風の旅冒険』などの創作ミュージカルを提供してきたほか、冨田勲氏のオペラ、松本幸四郎氏主演の『ZEAMI』の演出も手がけました。

現在は、舞台プロデューサーでシンガーソングライターの廣瀬純さんとともに「SCSミュージカル研究所(仙台)」を主宰し、東北各地の劇団やミュージカルチームのプロデュースや指導を行っています。
梶賀千鶴子さん

七ヶ浜国際村に「NaNa5931」が結成されてからは、梶賀さんがずっとオリジナル作品の脚本、演出、振り付けや指導などを行い、チームを育ててきました。

「前作の『ゴーへ Go Ahead』は、震災直後の傷を癒し、被災地のことを知ってほしい、分かってもらいたいという強い気持ちを込めながら未来を目指す・・・という決意の物語でした。

そして新作の『ゴスタン Go Astern』は、自分たちは、もう明るい方向へ向かっているんだ・・・っていう希望を、子どもたちと一緒に表現したかった作品です」と廣瀬さん。

前作『ゴーへ Go Ahead』は、灯籠流しの灯を見つめて悲しむ遺族たちが、神様から仮の姿を借りてきたというカエルやフクロウやコウモリなど不思議な者たちと交流しながら、七ヶ浜に脈々と受け継がれてきた『Go Ahead=先取のスピリット』に気付いていくという物語です。
ネコとタヌキとイヌが千年の時を超えて冒険します
新作『ゴスタン Go Astern』は、「千年先の未来から現在の七ヶ浜を見てみよう」という作品です。
3011年の七ヶ浜町。この町に棲むネコとタヌキとイヌは、ある日、海岸の近くで「海に近づいてはいけない。『ゴスタン』 反対側へゴーヘ」と書かれた不思議な石を発見。
「ゴスタンゴスタン・・・」と念仏のように唱えていると、3匹は過去へタイムスリップして、町の歴史をたどりながら2011年3月11日に行き着くというストーリー。
涙あり、笑いありの大冒険。被災地から未来に託された希望を表現しています。

梶賀さんは、
「地球という星自体が生き物です。地震や噴火もある。長い歴史の中で何が起きてきたかを学ぶことで、これから起きる事柄に備えられるかもしれません」
と話します。

「『ゴスタン Go Astern』のステージでは『千年先も千年前も』という歌が合唱されます。

「大切なのは命を繋げていくこと。私たちの命はアンモナイトの昔からずっと繋がってきたもの。先へ先へと進むことも大事です。でも忘れないことももちろん大切。『ゴスタン Go Astern』とは後退することではなく、過去を見つめて学ぶことなのです」(梶賀さん)
幼稚園の年長さんから、大人になっても現役の30代まで、
チームのキャラクターもバラエティ豊か
土地で起きた出来事を、物語や芝居といった形の「文化」として伝承しようという例はあまり多くありません。

「NaNa5931」の子どもたちは「七ヶ浜が大好き」と大きな声で歌います。

そして子どもたちも大人たちも、ふるさとを意識する。それは音楽のチカラなのかもしれません。
誇れるまちがあって、今を未来へ繋いでいく歌を、みんなで歌う。そしてみんなの心にますます染みて、いつしか地域の文化になっていく。

2日間で3公演。いずれの回もほぼ満席でした
「歌うことで情景が浮かび、仲間たちの顔やふるさとの海や山の姿も浮かんでくる。歌には気持ちを一つにしてくれる力もあります。そして、もう一つ大事なことは歌い続けること、継続することです」(廣瀬さん)

『ゴーへ Go Ahead』と『ゴスタン Go Astern』。
梶賀さんと廣瀬さんは、この2つの作品を、将来的には防災の啓蒙に役立てていけたら・・・と考えています。

「全国から助けていただいた支援や応援が『輸入』だったとしたら、これらの作品は、いわば七ヶ浜からの『輸出』です。この先、七ヶ浜の子どもたちは、与える人、支える人に育ってほしいと願っています」(廣瀬さん)

例えば、科学者が講演会を開いて警鐘を鳴らすのも一つ。
でも、歌や物語を通じて防災の意識を高めていく・・・というのも一つの方法です。
そんな「文化」を、宮城から発信して行きます。

公演が終わったあとはキャスト全員がロビーに集合し
お客様を歌と踊りでお見送りします
命の大切さや、自分たちが体験した出来事を伝えていく。
命が失われてしまうような災害は、いつまたどこかで起きてしまうかもしれない。そのことを忘れないで・・・と伝えていく。

それは、宮城に住む私たちにできる、全国からいただいた応援や支援に対する恩返しであり、感謝を伝える方法の一つかなと思います。


(取材日 平成27年11月22日)