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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2016年2月12日金曜日

2016年2月12日金曜日9:24
石野葉穂香です。

海色に染まった青雲を遠く見上げる多賀城市東郊の丘の上。
今春、創立から40年目を迎える宮城県多賀城高校があります。

普通科7クラスで、全校生徒は840人。
メモリアルイヤーを迎える多賀城高校に、この春、もう一つのニュースがあります。

高等学校に設置される例としては全国で2例目となる防災系専門学科「災害科学科」が新たに誕生することになりました。



その教育が目指すところは、万が一の災害発生時に、命と暮らしを守ることができるスペシャリストを育てること。
「防災」について、そして災害が起きてしまった場合の「減災」や「被害軽減」などについて多角的に学ぶことができます。

災害科学科の定員は40人。
科目は理科系を中心に、地歴・公民の「社会と災害」、家庭科と保健体育を合わせた「くらしと安全」といった実践的なカリキュラムが組まれています。

「理系の大学や大学院への進学を視野に入れた学習を行います。そして進学後は、自然環境や、災害・防災の研究、都市計画や心理学といったより専門的な研究を深めて、研究者や技術者、医療や介護などさまざまな分野の専門家となって、地域や世界の防災・減災のリーダーになってほしいと考えます」
と、小泉博校長先生がお話しくださいました。
小泉博校長先生
あの日、3月11日――。
津波は多賀城市内にも広範囲に渡って押し寄せて来て、生徒たちの通学路でもある国道45号や県道仙台塩釜線(通称・産業道路)などが浸水しました。
学校では、帰宅の機会を逸した生徒108人が校内で一夜を明かしました。

在校生に犠牲者はいませんでしたが、自宅が被災したり、家族を亡くしてしまった生徒がいます。
でも
「辛かった経験だけれど、この教訓をこれからに活かしていきたい――」
生徒たちは、震災直後から様々な取り組みや試みを開始しました。

平成25年には、津波被害に遭った学校周辺地域と通学路・通学区域をまとめた「通学防災マップ」を作成しました。
多賀城高校通学防災マップ。
同心円の中心が多賀城高校。ピンク色の部分が、3.11の津波震災箇所です
さらには、教員と生徒たちが一緒になって行政や関係機関、地元の住民たちから許可を得て、実際に津波が到達した高さを示す「津波波高標識」を通学路の電柱や施設などに100枚以上取り付けてきました。
多賀城高校の生徒たちが設置した津波波高標識。
津波が到達した高さと記憶を伝え、未来の〝もしも〟に備えます。
奥の建物の壁にも貼られています
校内では防災ワークショップを開催して意識を高め、起きてしまった災害と付き合う方法の学習なども積極的に行ってきました。

平成27年3月14日には、仙台市で開催された国連防災世界会議のパブリックフォーラム「世界防災ジュニア会議」にも参加。
若い世代の目線から災害に備え、被害を最小限にするための知恵を考えるこの会議では、参加9団体がさまざまなアイデアで最優秀賞である「グッド減災賞」を競いました。
そして、その中で、多賀城高校の発表『命を守る 未来に伝える』が最優秀賞に選ばれたのでした。

また、県内外の高校生、仙台市内の大学に留学中の学生と一緒に市域や松島を歩いたり。
「留学生の皆さんに市内を案内したり、松島で一緒に観光船に乗ったり。伝える、というスキルも学べました」と話すのは語学研究部の佐藤千咲さん(1年生)。
「復興している現状だけじゃなく、地域の魅力や松島の美しさなども伝えていきたい」
語学研究部の佐藤千咲さん
そして、2015年10月に行われた「JAXA(宇宙航空研究開発機構)」との連携授業では、衛星の防災利用について学び、被害規模の把握や防災・減災に科学技術がどんなふうに役立つのかを学びました。
「JAXA(宇宙航空研究開発機構)」との連携授業。
昨年のネパール大地震や、世界各地での火山噴火被害などがあったとき
衛星がどんなふうに役立てられたかを学びました
同年12月には、阪神淡路大震災を経験した神戸市から神戸大学附属中等教育学校の訪問を受けました。


意見や情報の交換ばかりではなく、そこには友情も芽生えました。
「知り合いも友だちもいなかった東北。でも、来るたびに誰かと知り合い、今では仲良しの誰々ちゃんがいる東北、友だちがいる東北です。もう知らなかった土地じゃない」
(渋谷祥子さん/神戸大学附属中等教育学校4年生)

渋谷祥子さん/神戸大学附属中等教育学校4年生
「災害科学科の設置校として本校が選ばれたのは、多賀城市が公共交通の便に優れ、仙台市内や他県の大学・研究機関などと連携しやすいこと。また、市内にある陸上自衛隊多賀城駐屯地や、隣市・塩竈市に本部を置く海上保安庁宮城海上保安部(海保第二管区)などとも連携や協力し、助言がもらえる体勢をつくりやすいことなどが理由でした」
とお話しくださったのは、佐々木克教教頭先生。



「しかし、それだけでなく、津波という辛い経験の中から得た、災害に備えよう、防災や減災について学ぼうという本校生徒の積極的な活動と高い意識も評価されたのだと思います」

生徒会長の岩佐彩音さん(2年生)は
「宮城県で最初にできる災害科学科です。多賀城高校が減災や防災の面で高校生たちをリードして行けたらいいなと思いますし、私たちの活動や願いももっと全国に発信していきたい」
岩佐彩音さん/2年生/生徒会長
自然災害は、これからも世界のどこかで起きてしまうかもしれません。
でも、その発生を予測し、あるいは備えを万端に整え、被害を最小限に食い止め、起きてしまった状況に対しては適切な処置が行える能力と人材がますます必要とされていきます。

自然災害なんて起きないことが一番です。

災害科学科で学んだ彼らの知識やスキルが発揮されないまま未来へと過ぎていってくれるのが、本当は一番なのかもしれません。

でも、いつかまた自然が牙をあらわにしたときには、彼らの力がたくさんの人を守ってくれるはず。
『この出会いに感謝やな』
災害科学科の後輩を迎える在校生の皆さんと、神戸大学附属中等教育学校の皆さん。
一緒に記念撮影。
次代を拓いていく彼ら。元気と笑顔が印象的でした。
命を守る科学を学ぶ。
そして、出会いと絆をつくり、広げて、寄り添い合える世界をつくっていく。

「私たちには伝えたい今と守りたい命、そして創りたい未来がある」。
高校生たちの夢と可能性をのせて、多賀城高校災害科学科、今春、新しいスタートです。

(取材日 平成27年10月28日ほか)