header

宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

ヘッダー写真説明文

写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2016年1月30日土曜日

2016年1月30日土曜日12:06
こんにちは、にゃんこです。

震災からまもなく5年がたとうとしています。
この5年間、想定外だらけの中で人々は、さまざまな課題や苦悩に直面してきました。

“震災以降、DVや児童虐待が増加している”
おそらく皆さんも耳にしたことがあるのではないでしょうか。

震災は私たちの日常を突然奪っていきました。
非日常が続くにつれて募っていく喪失感や孤独感、不安やストレス。
こういったことがDVや虐待が増えた要因の一つとも言われています。

昨年の11月25日、私は多賀城市で開かれた「被災地におけるDV予防啓発講座」に参加してきました。

3日に1人の子どもがなくなる病気…「子ども虐待」
体の傷は治っても、心の傷は…

主催した多賀城市の保健福祉部長の菅野さんは、
「多賀城市では宮城県との協働事業として1年間に3回DV予防啓発講座を開催しており、今年で3年目になります。本市においても虐待と思われる件数が増えており、児童相談所などでの一時保護ケースも年々増加傾向にあります。多賀城市としても保健福祉部内に児童福祉、保育等施設、生活困窮者自立支援、児童発達支援担当者が日々連携を取り、要保護児童対策地域協議会で各機関との調整をしながらアプローチを行っておりますが、なかなか行政支援の受け入れに至らない保護者の方も多くいらっしゃいます。地道に寄り添い、つながる支援を目指しています」

同じく保健福祉部こども福祉課長の吉田さんは、
「多賀城市は、宮城県内でも転入転出などが多く、子育て世帯も多い地域です。震災以降は、生活環境の変化などによりDVや児童虐待に関する相談も増加傾向にあります。こういった研修を通して、DVや児童虐待の問題、その解決手法について、ひとりでも多くの方に知っていただけたらと思います」

-----------------------------------
会場となった多賀城市の文化センターには、児童福祉や保健医療、教育関係者の方々などが参加。
この日の講演テーマは「児童虐待・仙台市立病院の取組―背景にある機能不全家族とDVの問題」
講師は、仙台市立病院副院長で、仙台市立病院救命救急センター長と小児科医長も兼務する村田祐二先生です。

村田祐二先生

仙台市立病院は、児童虐待に係る医療ネットワーク事業の拠点病院として、平成26年4月1日よりさまざまな取り組みを行っています。
「児童虐待に係る医療ネットワーク事業」を開始します(仙台市)
http://www.city.sendai.jp/report/2013/1212922_1415.html

非常につらいことですが、虐待により亡くなってしまう子どもは1年間で約50人。心中なども含めればその倍はあるはずだと村田先生は話します。

仙台市でも児童虐待の事例があり、死亡事故も起きています。日々のニュースのなかでもこういった報道を目にする機会が増えているように思います。児童虐待が実は身近にあるという事実。どうしてこんなことが起きるのか?未来ある幼い子どもたちの命がなぜ奪われなければいけないのか?疑問と腹立たしさと…。私も子どもを持つ母親の一人として胸が張り裂けそうな思いです。

「病院に来てくれてありがとう」
講演の中で一番印象に残った先生の言葉。

「病院や役所、保育園などに助けを求めることはすごく勇気がいること。子どものために勇気を出して来てくれてありがとうって思うんです」
と、村田先生。

子どもたちを守るためには何ができるのか。
皆さんも一緒に考えていただければと思います。

-----------------------------------
児童虐待にはどんなものがあるのでしょうか?

・身体的虐待…児童の身体に外傷が生じる、または生じるおそれのある暴行を加えること
(首を絞める、殴る、蹴る、熱いものを押し付ける、逆さ吊りにする、戸外に放置する…)
・性的虐待…児童にわいせつな行為をすること、または児童をしてわいせつな行為をさせること
(近親姦、レイプ、露出症、売春、性行為を見せる…)特に6歳頃と12歳頃にピークなのだそうです。
・ネグレクト…児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食または長時間の放置、その他保護者としての監護を著しく怠ること
(ご飯を与えない、衣類を着せない、子どもを残して外出する、車内に放置する…)
心理的虐待…児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと
(無視、拒否、言葉の暴力、恐怖を与える、見世物にする、DVの目撃…)

「一番見つけるのが難しいのはネグレクト。子ども以外だれも困っていないからです。親は困っていないですからね。発見されていないだけで実はネグレクトはものすごく多いんです。また夫婦の暴力を見たり、生まれてこなければよかったのにと言われたりする心理的虐待も増えています。たたいてしまうことはなんだかんだ理由はつけれられますが、そういった言葉の暴力は理由はつけられません。子どものためを思ってなんて絶対ありえないです」

「心も体も健康に生きるためには自己肯定感や達成感、自尊感情が大事になります。そこに他人が介入してぐちゃぐちゃにしちゃうのが暴力なんです。DVも虐待も同じ構図。繰り返し繰り返し相手を支配する、コントロールして相手の自己肯定感や達成感を奪い、生きる力、反抗する力、抵抗する力を削いでしまうんです」
と、村田先生は話します。

-----------------------------------
では、児童虐待をしてしまう心理とは?
「自分を親として失格だと思いたくない、自分は親として有能だということを見せつけたいんです。
子どものためにたたいた、しつけようとしたと言われることが実際にあります。でも結局は自分のためにたたいているんです。自分の心の安定のためだけにたたいているだけ。子どもを使って自分の精神的な安定を得ているだけなんです。子どもに悪影響を及ぼす行為は虐待であると私は考えて対応しています」


「一番伝えたいことは暴力を受けるに値する人など絶対にいないということ。暴力を受けているうちに子どもたちは自分が悪い子だからなんだと思い込んでしまうんです。でも決してそうじゃないんだよということを強く伝えたい。
自尊感情は子どもが小さいときにこそ重要なんです。自尊感情の上に初めてしつけがでてきます。いろいろなことを教えるときの元になるんです。きちんとした愛着形成を持っていない子には、抱きしめてあなたはいい子なんだよとメッセージを伝えることで元に戻してあげる。自己肯定感、自分の居場所を作る所から始めないと先には進めないんです」
と、強調します。

また“怒る”ことと“叱る”ことは区別すべきだとも話します。
「怒るというは感情的になること、叱ることは相手にきちんと伝えること。急いでいるときなど感情が高ぶっているとつい声を荒げてしまいますが、これは叱っているのではなく、怒っていることになります。大事なのは、あなたがやっていることは悪いんだけど、あなたのことが好きだから叱っているんだよというメッセージを子どもに伝えること。これがないのはただ怒っているだけ。そしてこれが繰り返されると今度は手が出てしまうんです」

そこで感情が高ぶってしまったときの対処法として村田先生が教えてくださったのが3分ルール
3分待つと怒りが減り、言いたいことが言語化できるからなんだそうです。

皆さんはこんなときどうしていますか?

逆に、褒めるときは1分ルール!
「褒めるときはすぐに褒めること。忙しくても手を休めてきちんと子どもに向き合って褒めてあげてくださいね」

皆さんもぜひ実践してみてください!

-----------------------------------
さらに重要なことは虐待が起きた背景にあるものをきちんと見極めることだと伝えます。

例えば、子どもに虐待をした母親がいる。でも実はその母親も夫からDVを受けているなど。
機能不全家族の存在。家族全体のこととして捉える、家族の病気としてケアすることが大切だと訴えます。

「子どもを助けてほしいから病院に来るんです。でも自分のことも助けてほしいんですよ。子どもをたたいた母親を追い詰めた父親、父親にたたかれている子どもを守れない母親…気持ちが萎えてしまって生きる力なくなるとSOSも出せなくなる、小さなSOSを出しても周りは気づいてあげられない、そうやってどんどん孤立化していくんです。だからこそ、助けを求めて病院に来てくれてありがとうって思うんです」


さらには、
・SOSを出せない親たち
・小さなSOSに気づかない周囲
・孤立する家族
・関わりたくないご近所さん
・助けを求めて受診した家族
・医者のネグレクト

さらに村田先生は、親の成育歴も関係していることがあると言います。
「これまで関わってきて感じたことは、やっぱり自分も同じ育ち方をした人がほとんどなんですね。子どもに対して怒っているけど、無意識に自分の親に対する怒りが出て、それが子どもに向かっている。自分が育てられたように育てる、暴力は感染、連鎖します。そこに目をとめてあげることも大事なんです」


「虐待されると子どもたちは、自分が悪い子だからだ。自分を愛しているからたたくんだと考えるんです。そう思わなければ生きていけないんです。一時保護された子どもは、それでも親が好きだから家に帰りたいっていうんですよ。被虐待体験の封じ込め、体罰肯定論になってしまうんです」

どうして虐待が起こってしまったのか、その根本的な部分に重点を置くこと。

「昔は地域力もありましたが、今は核家族が増えて若い夫婦に子育てが丸投げされてしまっている。自分が子どもを産むまでまったく赤ちゃんに触れたことがないという人も多い。育て方が分からないんです。子どもを泣き止ませるためにどうしていいか分からなくて、思わず口を押えてしまった、逆さづりにしたという親もいました。子どもを守るためには、周りも親なんだから育てられて当たり前という古い観念はもう捨てるべき」



---------------------------------
非常にデリケートな問題だけに、一人一人の心にどう寄り添っていくべきなのか、さまざまな課題を投げかけます。

では子どもたちを守るためにどうすればいいのでしょうか…?

(後編へ続く)

206年2月9日
自信を持って生きる力を与えたい「被災地におけるDV啓発予防講座」[後編]
http://kokoropress.blogspot.jp/2016/02/dv.html

【関連記事】
▼震災を体験した子どものこころのサポート
http://kokoropress.blogspot.jp/2015/04/blog-post_89.html
▼ひとり親が抱える問題とは~「震災後のひとり親の現状と課題」
http://kokoropress.blogspot.jp/2015/01/blog-post_8.html


(取材日 平成27年11月23日)