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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2015年12月25日金曜日

2015年12月25日金曜日7:30
石野葉穂香です。

震災から4年8カ月。
被災地では、かさ上げ工事や災害公営住宅の整備など、今も多くの工事が進められています。
物理的な復旧は、時間はかかっているものの、ともあれ前へ進んでいる印象です。

この冬が終わりに近づく来春3月には「震災から5年目」という、ある意味で区切りやすい「時間経過の節目」を迎えます。
でも、工事はまだまだ続くし、人々が負ってしまった「痛み」は、カレンダーの側から区切ることなんて、まだまだできません。
震災から4年8カ月。志津川中学校から見下ろした志津川地区。
盛り土、新しい道・・・。昔の建物もまだ残されています
「震災の記憶の風化」も語られています。
被災地のこと、震災の教訓・・・それらが記憶の中から薄れていくことは、人々の往き来、流れ、交流にも関わってくること。

訪ね来て、誰かと言葉を交わし、触れ合うことで心が動きます。
心が動かされたなら、写真を撮ったり、文字を綴ったりするでしょう。
さらに、手が動けば、足も動き始め、身体が動き出す・・・。
身体が動くことで、心はもっともっと動いて行く。
未来へと流れていく時間の中で、人は動き、たくさんの可能性を見つけることができるはず。
歌津にある平成の森仮設住宅。今冬は点る灯りも少なくなりましたが、
平成27年1月時点では246戸中、195世帯が入居していました。
今回はそんな、ある「出会い」を取材させていただきました。

11月10日。南三陸町に、ある学園が修学旅行にやって来ました。
訪ねてきたのは、長野県上田市にある「NPO法人 侍学園スクオーラ 今人」の生徒の皆さんです。

侍学園は、心にちょっとした不全を抱えている人、自立した生活が送れないで悩んでいる若者たちの自立を支援する学校です。

働きたいけれど、社会へ踏み出すことを躊躇してしまったり、人付き合いが苦手だったり、働くことで自分のペースを見失ってしまったり・・・。
理由はそれぞれですが、そんな若者たちが自立して、充実した未来を自らの力で切り開いて行けるようになることを支援する学校。それが侍学園です。

侍学園と南三陸町の縁を結んだのは、学園の教頭先生である平形有子先生と、先生の友人である南三陸町在住のMさんという方です。
今秋、侍学園の学園祭で、南三陸町を舞台に撮影された映画『ガレキとラジオ』が上映されました。
実は、平形有子さんは南三陸町のご出身。この映画にも出演されていた方なのです。

こちらが過去記事です。

2014年1月1日(水曜日)
「映画『ガレキとラジオ』が伝えてくれたこと(南三陸町)」
http://kokoropress.blogspot.jp/2014/01/blog-post_3543.html

「映画『ガレキとラジオ』のポスター。
真ん中下、大きなヒマワリの花の上の方が平形さんです
学園祭での映画上映会の入場料は1000円でした。
この収益金の使途を考えていたとき、「被災地のために使いたい」という意見で皆が一致。では、どういうカタチにしようかと話し合ううち、「子どもたちの未来のために使いたいね」ということになったのでした。

平形さんは、友人であるMさんに電話して、相談しました。
Mさんは、南三陸町でボランティア活動を続けている「ボーズ」という団体の活動をいつもコーディネートされている方です。

Mさんは、南三陸町で子どもたちのための『Hop Kids Club』という体操教室を開いている阿部純子先生にこの話を持ちかけました。
「子どもたちの活動が目について、いつも気なっていたから」とMさん。

阿部先生は、この申し出に大喜び。「子どもたちの練習発表会で着るユニフォームが欲しい」ということになり、映画の収益金は、ユニフォームを作るための製作料に充てられることになりました。

さらにMさんは、ユニフォームの制作を、地元・南三陸町のデザイン事務所「マスタッシュ・ビアド」の小野寺敬さんに依頼。
小野寺さんは、背中とフロントに『Hop Kids Club』のオリジナルロゴを入れたTシャツを製作します。
Tシャツをデザインした小野寺敬さん
そして11月10日夜、侍学園の皆さんと『Hop Kids Club』の子どもたちが、南三陸町歌津にある「平成の森」で対面し、ユニフォームのお披露目会が開かれたのでした。
Tシャツフロント
Tシャツの背中にはチーム名













『Hop Kids Club』は、平成の森アリーナで、毎週1回、体操教室を開催しています。
体操教室といっても、いわゆる採点競技としての体操ではなく、マット運動や跳び箱、ダッシュなど身体を動かすのが目的。

震災後、町は工事している場所も多く、ダンプカーなどの交通量も増え、以前のように思い切り遊び回れる場所が少なくなっています。そんな運動不足気味の子どもたちのためにと、体育大学出身の阿部純子先生が2013年10月に南三陸体操教室として開いたのが始まりでした。
侍学園の皆さんと
今回の申し出について、阿部先生は、
「涙が出るぐらいうれしかったです。子どもたちはすぐ大きくなる、でもユニフォーム代は集めにくい。そんな中で、こんな支援をいただけるのはほんとうにありがたいです。ユニフォームは、教室の発表会などで着させていただきます」と大感激でした。

「歌津には内気な子が多いんですよね。でも〝身体を動かすのは楽しい〟って思ってもらいたい。身体を動かすという経験の中からも、自分のやりたいものが見つけられるかもしれません。将来、子どもたちの中から、体育の先生が誕生するかもしれないし、あるいはダンサーや芸能人も(笑)。そういう可能性を引き出せたら何よりうれしいですね。」(阿部さん)
阿部先生
侍学園の平形有子教頭先生も「喜んでいただけ、私もうれしいです」。

「今回の修学旅行は2泊3日の予定で、南三陸町や松島、仙台などを訪ねます。震災があったということを忘れない、そして、困難に負けないでがんばっている人たちの姿も見てほしいと思っています」(平形先生)

現在、侍学園に在籍する生徒は15歳から41歳までの青年たち。受け入れる年齢に制限はありません。
また、画一的な授業は行われず、農業体験や体育、美術など、目標達成のための知識と技術の習得を実践します。

「いろんな経験を積んで、自分が生きていくための基本となる力、自分に何が必要なのかを、〝自分で動く〟という体験の中から見つけてほしいんです」と平形先生。
「価値観を広げ、小さな世界だけで考えないこと。自分にはいろいろな可能性があるということを見つけてくれたらと願っています」(平形先生)
平形有子先生(手前左)と樋口あやめ先生。
栗原渉校長先生(後列左)と齋藤勇太先生
可能性をいくつも見つけながら、自分の未来をつくって行く若者や子どもたち。
人は、日々変わって行くのです。

被災地もまた、地形、建物、道路、産業・・・それらを引っくるめた「暮らしの風景=まち」が、たくさんの可能性をはらんで、今、日々変わっています。

人との「出会い」、何事かとの出合い。
それはいつだって、誰にとっても契機です。

出会ったことで、心は動かされ、そして身体が動き出す。
身体が動けば、止まっていた空気が「風」になります。

その風が、また誰かの顔をなでたり、心に届いたりしながら、やさしく広がって行けたらいいな・・・。

そんなふうに感じた取材でした。

(取材日 平成27年11月10日)