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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2015年11月23日月曜日

2015年11月23日月曜日9:37
こんにちはエムです。

ここは仙台市青葉区上杉にある、一般財団法人仙台YWCA(Young Women's Christian Association )。
秋の日射しに街路樹のイチョウが明るい影を歩道に落とす午後、訪れた先に待っていたのは温かな笑顔の60代~80代の女性の皆さんでした。

ご存じの方も多いとは思いますが、YWCAはキリスト教を基盤に、世界中の女性が言語や文化の壁を越えて力を合わせ、人権や健康、環境が守られる平和な世界を実現しようと活動をする国際NGOです。

この仙台YWCAでは東日本大震災発生の2011年、独自に「仙台YWCA震災復興支援室『こころの杜』」を立ち上げ、被災者支援活動をしてきました。
それはどういった支援活動だったのか、また、今もその活動は続いているのかを知るため、代表理事の伊藤香美子さんにお話をお聞きしました。


YWCAが始めた被災者支援活動「こころの杜」、それは被災者のこころのケアを目的に作られたものでした。

「震災が発生した年は、国内外からたくさんの人たちがボランティアに来て助けてくれました。そこで私たちはYWCA会館を宿泊所としてボランティアの方に提供し、約1年間夕食のサービスをしました。
私たちは高齢者が多く力仕事はできませんので、その他の活動を考えたとき、私たちができるのは、被災された皆さんのこころのケアだと話し合いました。
それは長い時間がかかります。そしてその活動をするためには対人支援のボランティアを育成する必要がありましたので、まず『こころのケア・ボランティア養成講座』を立ち上げました」


[こころのケア・ボランティア養成講座]

講師に大阪YWCAから“こころのケア・ボランティア養成”の専門家、金香百合氏を迎え、2011年6月に「養成講座」を開講しました。「養成講座」は現在も不定期に行われており、これまで延べ約800人が受講しました。

笑いが絶えないという金香百合氏の講座。
金氏は阪神淡路大震災で被災した方のこころのケアを長年実践してきました
(画像提供:仙台YWCA)

「2011年と12年は毎月行っていましたが、2013年からは年に1、2回、土日に“集中講座”として行っています。
金先生は、『阪神淡路大震災ではこころのケアはこれで大丈夫かな……と感じるまでに6年かかりました』と言っておられました」

講座受講者は、介護施設や保育施設の職員、地域活動のリーダー、仙台市内や他県の高校生、自ら被災しながも被災地支援に当たっている支援者、心の専門家や教育者、ボランティア志望者などさまざまな職種、年代の方です。
リピーターも多く、この講座で知り合ったのがきっかけで支援が広がる場合や、YWCAの支援活動に協力が得られる場合もあり、人脈は広がったと伊藤さんは言います。

金先生による講演の他、実践者コースなど
丸2日間の集中した講座です(画像提供:仙台YWCA)

「こころの杜」の支援活動は全部で5つ。
基礎となる「こころのケア・ボランティア養成講座」の他、「仮設住宅訪問・お茶っこサロン」、「マルシェとサロンの開催」、「リフレッシュツアー」、「スタディツアー」があり、それは現在も続いているのだそうです。


[若林区卸町5丁目公園仮設住宅訪問・お茶っこサロン]

この活動はYWCAの会員と、養成講座の修了者が一緒に仮設住宅を訪問し、「お茶っこサロン」を開いて交流しながら住居者の話を傾聴するというものです。
サロンは同時に、住居者同士の交流の場や、時には自治体職員の情報交換の場にもなっています。
2013年4月から毎月1回、第2火曜日の午前10時半~昼頃まで実施されています。

「震災後、1年目2年目は全国からいろんなボランティアが来て、仮設住宅などでもいろんなイベントを行っていましたが、3年目になると資金など難しい面もあり、ほとんどが来なくなりました。

やはり現地の私たちが、末永くこころのケアをさせていただくのがよいのでは……と思っていた頃、『仮設の皆さんが寂しい思いをしているのでお願いします』という申し出を受け、喜んでYWCAが訪問するようになりました」

卸町5丁目はもともと約100世帯程度の小さな仮設住宅でしたが、今年に入って復興公営住宅や、自力で自宅を再建して移転する方が多くなり、現在残っているのは約30世帯です。
仙台市では来年の5月で仮設住宅を撤去する方針ですが、仮設住宅から移転した方でも、こころのケアはまだまだこれから……と、伊藤さん始めYWCAのメンバーは感じています。

「サロンの参加者は高齢の方が多いんです。
最初は何か楽しい催しなど考えていたんですが、そのうち皆さんの“話したい”という気持ちが現れてきました。
震災後1、2年はまだまだ生々しくて、自分の被災体験を話せない状態だったんですね。

やっと話せるようになってきたと感じますが、話すことが癒しにもなるわけなんですね。
悲惨な体験をして辛い思いをした、その話を傾聴させていただくこと、それがこのサロンです。
それにこころのケアといっても状況は刻々と変わります。5年目の今年はまた、仮設住宅居住者の気持ちも以前とは全然違いますから」

お茶っこサロンを楽しみに待っている方が多いのだそうです
(2014年12月のサロン「クリスマス会」/画像提供:仙台YWCA)
また、この「お茶っこサロン」と同時間に「一般社団法人産直広場ぐるぐる」が仮設住宅の敷地内で産地直送野菜のマルシェを開いており、サロンでは毎回「産直広場ぐるぐる」のメンバーが作る野菜スープが無料で提供されています。


[仙台YWCA会館でのマルシェとサロン]

仙台YWCA会館の庭で開催されています

「産直広場ぐるぐる」のメンバーが「養成講座」を受講していたことが縁で、2013年から始まった一般市民向けの「Y(わい)わいマルシェ」は、「お茶っこサロン」でのマルシェ同様、産地直送の新鮮でおいしい野菜が安価で入手できるマルシェです。

若林区の津波被災農家の野菜を販売、購入することで支援に結びつくのはもちろんですが、野菜は全て減農薬、無農薬、有機栽培などで育てられた安心、安全な野菜です。
毎週木曜日の午後、13時半〜15時まで開催しています。

またYWCA会館内では、同時間帯に“サロン”が開催されており、買い物客が立ち寄っています。
ここでも「産直広場ぐるぐる」が提供する野菜スープが無料で振る舞われ、それをいただきながら楽しくおしゃべりをするなど、交流の場を提供しているのだそうです。

関連記事 ===============
2014年12月13日土曜日
「産直広場ぐるぐる」のこだわりの農家(仙台市)
http://kokoropress.blogspot.jp/2014/12/blog-post_47.html
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[リフレッシュツアー]

被災者と支援者の両者を招待し、疲れた心身を少しでも癒すことができるよう、温泉に行ってのんびりしてもらうための「日帰りバスツアー」を毎年1回開催しています。

「最初は無料でご招待していたのですが、皆さん遠慮して参加されないので、現在は少しだけ負担していただいています。
バスの大きさの関係で決まった人数しかご招待できないのが残念ですが、みんなでランチを食べ、大きなお風呂に入りゆっくり過ごしてリフレッシュしていただき、とても喜ばれています」

2015年2月28日のリフレッシュツアー。仮設住宅に住んでる方の他、YWCAメンバー
「養成講座」修了者も参加しています(画像提供:仙台YWCA)


[スタディツアー]

「このツアーの目的は、被災と復興状況の視察だけではなく、支援者としてこれから何を成すべきかを問い直す機会でもあるのです。
復興に尽力する皆さんの姿に学ぶことは、私たちの次の一歩につながるのです」

2012年から毎年実施しているこのツアーではこれまで、石巻市、南三陸町、仙台市若林区、閖上、亘理町、山元町、気仙沼市を訪れ、若林区で出会った津波被災農家は「Yわいマルシェ」開催につながりました。

2015年は気仙沼市の地福寺。YWCAが行っている支援活動のための助成金をいただいたのが縁だそうです。
前列右端が伊藤香美子さん(画像提供:仙台YWCA)

東日本大震災発生後、仙台YWCA会館の建物が無事だったことから、3階ホールを「国際飢餓対策機構」が行う支援活動の拠点として、約1年間貸与したこともありました。
世界中から宮城県に駆けつけたたくさんのボランティアが、入れ替わり宿泊していたのだそうです。
その他、福島県相馬郡新地町の中高生の学習支援活動をするなど、現在は終わっていますが、多くの支援活動をしてきた仙台YWCAの皆さん。

「震災から4年8カ月が過ぎ、もうすぐ5年がたとうとしていますが、衣食はある程度整ったとしても、“住”と“こころのケア”はこれからが重要です」

そう語る伊藤さんですが、これらの活動を支える資金には苦労があると言います。

「私たちはYWCAの会員ですので会費や寄付金から資金は出ていますが、それだけでは充分ではありません。活動の都度、助成金の提供先を探して申し込んではいるのですが、宗教団体とみなされて断られてしまうこともあります」

キリスト教が説く“隣人愛”としてやっている活動であり、宗教色を出してるわけではないことを強調する伊藤さん。せめてYWCAのことを、知ってほしいと話します。

「まだまだ被災者支援は必要です。
当初の頃とは生活形態や必要とされることはどんどん違ってきています。その中で、これからどこで、どんな形で行うのか考えてゆかねばならないですね。
それがこれからの課題ですが、必要とされる限りは私たちにできる範囲で、それに応えた活動をしてゆきたいと考えています」

被災者のみならず、高齢者や障がい者、子どもたちや大人が抱えるこころの問題など、現代の社会が抱える多くの問題にそっと寄り添うように、さまざまな支援を考えているYWCAの活動を、この取材を通して知ることができました。

仙台YWCA会館の庭で、冷たい風の中でも凛と咲いている1輪のバラに、YWCAの皆さんの姿がだぶりました。


仙台YWCAの活動の詳細は、ホームページを参照ください。

◆ 一般財団法人仙台YWCA
http://sendai.ywca.or.jp/home.html
◇ 「こころの杜」
http://kokoronomori-sendaiywca.jimdo.com/

(取材日 平成27年10月15日)