アミーゴ!
突然ですが、これは言わずと知れたスペイン語の挨拶。「友達」(男性形名詞)という意味があり、スペイン語圏では初対面でも気軽に使っているようです。
日本語だと、「我が友よ!」…って感じでしょうか。
その挨拶を連想させる「アミー号」という名前の高速乗合い夜行バスがあることを、最近知りました。
しかもそのバスは、関東や関西からのボランティアを乗せて、今も山元町に来ているのです。
関西発アミー号(撮影:2015年8月29日) |
東日本大震災後の2011年8月19日に、「アミー号で行く!東北災害支援ボランティアバス」として第一便を運行して以来、「関東発の便」と「関西発の便」併せて、のべ15,000人のボランティアを乗せて、東北へと走り続けてくれています。
アミイファクト代表取締役、その名も“走り広敏”さんは、ボランティアの皆さんと一緒に毎回活動を共にしてきました。
現在のボランティア先は山元町に限定して行っていますが、かつては七ヶ浜町や石巻市の牡鹿半島、岩手県陸前高田市などへも「ボランティアバス」を出していました。
「当初は参加人数が多かったので、1回のバスで最低2台出しておったし、3〜4台で来る時もありました。
2011年は8月〜12月で約40便、2012年は約85便のボランティアバスを運行し、2013年からは『東北応援バス』に改名し、約80便のバスを出しました。僕もずっと立ち会っているのでその時はフラフラでしたが……。」
「東北応援バス」はやがて、水曜の夜に出発して木曜日に、あるいは金曜に出発して土曜日に活動して帰るという運行になりました。休みを1日取るだけでボランティアに参加できる日程です。
その後、時間の経過とともにボランティア活動に参加する人が減り、現在は不定期になっています。
その後、時間の経過とともにボランティア活動に参加する人が減り、現在は不定期になっています。
「今は日程を決めて、人数が集まったらやろうという流れになっています。
最低人数は11名。でも11名といったら、農家さんにとったら莫大な人数なんですよ。普段は家族だけで3~4名でやってますからね。
最低人数は11名。でも11名といったら、農家さんにとったら莫大な人数なんですよ。普段は家族だけで3~4名でやってますからね。
その人数が作業してくれるわけなので、普段の1週間分の仕事ができるわけなんですわ。
なのでそれを考えると今回は中止や……ってなかなか言えないですね。
しかし「走りさん」は、これからも山元町への「復興応援バス」を出し続けると言います。
それは山元町に知り合いが増え、とても喜んでくれる人がいるから。という理由もありますが、その発端となった“出会い”に、そもそもの理由があるようです。
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大震災直後の2011年4月、走りさんは友人の落語家と、被災地慰問を考えていました。しかし当時の被災地では、落語会の受け入れは困難な状況でした。
そんな中、最初に受け入れに名乗りを上げたのが山元町。7月9日のことでした。
そんな中、最初に受け入れに名乗りを上げたのが山元町。7月9日のことでした。
山元町社会福祉協議会(当時)の協力で実現した落語会でしたが、協議会スタッフの中に、1人の人好きがする男性がいました。
聞くと、その男性は愛娘を震災で亡くしていました。
「すごい明るいんですよ。いつもニコニコ笑っとって、そんでまあその話聞いて……こいつ助けなかあかんのかな…と思ったんです」
「すごい明るいんですよ。いつもニコニコ笑っとって、そんでまあその話聞いて……こいつ助けなかあかんのかな…と思ったんです」
そして走りさんはすぐに協議会の局長に提案しました。
「『ボランティアする人集めるから、なんか手伝うことあったら言ってくれ』とは言ったんやけど、局長は本気にしてくれなかったんですよ。それで次の週の7月16日、もう1回山元町に来たんです。
そこでやっと『8月からバスだすわ』という話を了承してもらって、それが今まで続いているんです」
毎回必ず「やまもと語りべの会」による話を聞いてもらっています (撮影:2015年8月29日) |
現在の応援先は、今回のいちご農家「岩佐清さんのイチゴ園」、同じくいちご農家の「菅野農園」、「NPO法人未来に向かって助け合い」の3カ所です。
旅行会社であるアミイファクトが行う復興支援は、ともすると営利目的と誤解される場合が多いと語る走りさん。
「ボランティアに参加する方には、最低限の必要経費はいただいています。
支援を長く続けるためには必要ですし、1回寄付しただけで終わるのは好きじゃなかったんです。渡した時点で終わりますしね。
被災地は各地にありますが、基本的には山元町を応援したいと思っています」
「ボランティアに参加する方には、最低限の必要経費はいただいています。
支援を長く続けるためには必要ですし、1回寄付しただけで終わるのは好きじゃなかったんです。渡した時点で終わりますしね。
被災地は各地にありますが、基本的には山元町を応援したいと思っています」
今回の作業は、台風で飛ばされてしまったハウスのビニール掛け。 大勢でないとできない作業です |
生まれて初めてやる人も多い農作業ですが 岩佐さんの説明を聞きながら皆さん一生懸命でした |
小雨混じりの風のある日でしたが、人数が多いと着々と作業が進みます |
大きなハウスのビニール掛けを2棟完成する頃には皆さん手際が良くなっていました。青空も見えてきました! |
今回ボランティアが訪れたいちご農家の岩佐清さんは、イチゴ栽培を始めて36年。
大震災では全てが流され、この農地は瓦礫に被われ尽くされていたのだと話してくれました。その時岩佐さんは、もうイチゴ作りは諦めて辞めてしまおう思ったと言います。
「でも“走りさんボランティア”が入ってくれて、瓦礫やヘドロの撤去をしてくれた。
機械じゃできない仕事を、たくさんの人数、人の手でしてくれたんです」
岩佐清さん夫婦と、息子さん夫婦。 「いつかこの恩返しはしたいと思っているけれど今は何もできない。 だから赤いイチゴがなったら食べに来て。ってボランティアの方には言っています」 |
「瓦礫の撤去」「ヘドロの撤去」「ハウス建て」など、全部ボランティアと家族で、一緒にやったと話す岩佐さんと奥さま。
「ボランティアさんにお世話になった人じゃないと、私らみたいな気持ちは分からないと思う。この面積を全部人の手でやってくれました。その人の力っていうか、ありがたさ……。
ボランティアさんは私たちの宝物みたいに思えるし、被災してる私たちを忘れないで、いまだに来てくれるのは、本当にありがたいです」
「ボランティアさんが来てくれるのは本当に助かります。やっぱり家族だけではできないこともあるし、心折れる時もあるのね。そういうとき暖かい言葉かけてもらったりしたこともあって……ボランティアさんと会うとね、元気もらえるんだよね」
「名前も知らない、どこから来てるかも知らないたくさんの人に助けてもらった……その感謝の気持ちっていうのは一生忘れられない。
「もう4年も5年も経ったなんてまだ思えないね~。私らにしたらあっという間。
でも、いつまでも頼っていられないんだ……と思っている気持ちがある反面、私たちを忘れないでまだ来てくれていることが、自分たちの励みになっている時もあるし。
だから応援してくれた人をがっかりさせないように、ここでいつも頑張ってちゃんとしてないとね!」
岩佐さんご夫妻は、あふれる思いを交互に語ってくれました。
「共に歩みたい」 関東発のアミー号に乗ってボランティアに参加してくれた16名。初めて参加の方が多い中 繰り返し来ているリピーターの方も。大阪から参加した青年2名もいます |
「前からボランティアに参加してみたいと思ってたけど、仕事が忙しくてなかなかできなかった。今回は有給休暇を使って参加しました」
「写真や映像じゃなくて、実際に被災地を自分の目で見てみたいと思っていたのと、少しでもできる事があれば…という気持ちです」
ボランティアに参加した方の多くは、そう語っていました。「写真や映像じゃなくて、実際に被災地を自分の目で見てみたいと思っていたのと、少しでもできる事があれば…という気持ちです」
バスの中で聞いた語り部の話の感想も聞いてみました。
「信じられないですね。丘の上に登って、そこまで津波が来たんですよと説明してくれましたが、そういう説明を聞いても、信じられなかったです」
「今までテレビや写真で見て知ってはいましたが、自分でここの景色を見て涙が出ました」
「今までテレビや写真で見て知ってはいましたが、自分でここの景色を見て涙が出ました」
「まだ人は足りてないようでお困りの方がたくさんいらっしゃいます。 勇気を振り絞って来てくててば、こんなおっさんがいます(笑)」 と話す走り広敏さん。大阪人らしいユーモアと人情を感じました |
自ら進んで仕事をし、今ではいちご農家の年間通した仕事を理解していると、自他ともに定評がある走りさん。
最後にメッセージをいただきました。
「ボランティアと身構えず、気楽に来てほしいと思っています。そして学んでもらいたい。
ここに来れば、来てない人よりは少しは知識を得ることができます。そういう人が増えれば増えただけ、人が助かるんだと思うんです。
今後いつかどこかで災害はきっと起こります。そうなると、中にはぼーっとしてる人、パニックを起こしている人がいるでしょう。でもその中に、指揮を執る人が1人いるだけで、死なんでいいひとが増えるんじゃないかと思います。
そういうことを、みんなで発信してほしいと思ってやってます。
でも来ていただいたら、いろんな出会いもあるし、楽しいこともありますよ」
☆ アミイファクトのこれまでの活動や、「アミー号」の運行状況など、詳しくはホームページを参照ください。
そういうことを、みんなで発信してほしいと思ってやってます。
でも来ていただいたら、いろんな出会いもあるし、楽しいこともありますよ」
☆ アミイファクトのこれまでの活動や、「アミー号」の運行状況など、詳しくはホームページを参照ください。
関連記事 ===============
2013年12月7日 土曜日
希望の赤い星。ありがとう「復興いちご」(山元町)
http://kokoropress.blogspot.jp/2013/12/blog-post_3202.html
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http://www.amy-go.com/
https://www.facebook.com/アミイファクト株式会社-234442156628675/
(取材日 平成27年10月13日)