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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2015年11月11日水曜日

2015年11月11日水曜日9:59
石野葉穂香です。

東日本大震災から11カ月後の2012年2月25日にオープンした「南三陸さんさん商店街(以下、さんさん商店街)」。

町に住む人たちのために日常品や食料品を販売するお店、理髪店、電気店、写真館、そして町へやってくる観光客にお土産品やおいしい食事を提供する飲食店などがあり、生活利便施設として、そして地域復興のシンボルとして、連日1000人に近いお客様が訪ねてきます。

入居しているのは、東日本大震災前から町内で営業していた事業者が中心ですが、その後、町外から新規に参入した方もいて、現在では32店舗が営業中です。

11月初めの週末、さんさん商店街設立当時からのオリジナルメンバーの一軒である「豊楽食堂」さんへお邪魔しました。
若くて元気で、笑顔が印象的な「若旦那」ががんばっているお店です。
元気な笑顔が魅力的な若旦那(ただし独身)の岩田大さん。
メッセージの下に「彼女募集中」と書いてあるところにも注目を(笑)
「豊楽食堂」の創業は、昭和30年代の初めごろとのこと。さんさん商店街にあるお店の中でも老舗になります。

以前の店舗は、公立志津川病院のすぐそばにありました。
1960年(昭和35)のチリ地震津波でも1階の天井近くまで浸水。
「今回の津波でお店がなくなるまで、その時の痕跡が残っていましたね」
と話すのは、若旦那の岩田大(ひろし)さん。

「ラーメンや定食を出す、フツーの大衆食堂って感じでした。通院する人、お見舞いに来た人、あとは役場も近かったから出前に行ったり。入院していた患者さんが病院を抜け出して焼きそばを食べに来たこともあったそうです」
明るいキャラクターは商店街の人気者
大さんは、実は東京生まれ、東京育ち。
さんさん商店街で豊楽食堂が再開するのに合わせて志津川へやって来ました。
「豊楽食堂は、おじいちゃんとおばあちゃんが創業した店です。お盆やお正月にはいつも志津川へ帰って来ていたので、いつか、お店を乗っ取ってやろうと思ってたんです(笑)」

2011年3月11日、東日本大震災が起こったときは仙台の調理師専門学校にいて、最後の授業を受けていたそうです。

おじいちゃんはその数年前に他界していて、豊楽食堂は、おばあちゃんが切り盛りしていました。
創業者で大さんの祖母にあたる遠藤とよ子さん。
60年近くのれんを守り続けてきました
おばあちゃんやお店のスタッフは全員避難して無事でしたが、50年以上も営業していた店舗は流失。
でも、さんさん商店街が立ち上がると聞いてすぐに、おばあちゃんはお店の再開を決めました。

大さんは、調理師学校を卒業後、仙台市内の和食のお店で修業していました。
「ところが、さんさん商店街がオープンする前月に、おばあちゃんから『明日、大事な会議があるから来てくれ』と電話があり、大雪の中、仙台からオートバイで駆けつけて。そのとき、商店街がもうすぐオープンするということも初めて知りました(笑)。
それで、修業先のお店に事情を話して退職を許してもらいました。志津川に引っ越し、2月25日のオープンのときには厨房に立っていました」
今もおばあちゃんと、そして震災前からのスタッフさんと一緒。皆でお店を盛り立てています。
カウンターと小上がりとテーブルで19席
人気のメニューは、震災前からの自慢の一品である「焼きそば」。
醤油ベースで味付けした焼きそばに目玉焼きが乗っています。
昭和の時代から変わらない、志津川の昔の思い出を伝えてくれる、おばあちゃんの味。
焼きそばは、7並が500円。盛りが1.5倍となる特大は700円
また、さんさん商店街で開業後には「南三陸キラキラ丼」の提供も始めました。
「開店の2日前に飲食店組合のオヤジさんがやってきて、作れるよね?・・・って(笑)。聞かされてなかったんですが何とか作り上げました。和食のお店で修業しててよかったです」
南三陸キラキラ丼もあります。
この季節は「キラキラいくら丼」(1800円)
2014年夏からは「釜あげシラス丼」も新メニューとしてレギュラー入り。
シラス=小女子(コウナゴ)、めろうど。南三陸の方言では「よど」。
「100%地ものです」。これも人気の品。

「釜あげシラス丼」(750円)
シラスの上のあしらい(トッピング)はキュウリのほか、
ミョウガ、ダイコンおろしなど季節の野菜。
香の物、お味噌汁付きです
「ここでお店を始めて3年8カ月。正直、ここまでお客さんに来ていただけるお店になるとは思っていませんでした。だって『田舎の食堂』を乗っ取ったつもりだったから(笑)、観光客の方々にたくさん来てもらえている。うれしい誤算というか。でも、ありがたいです」

さて、「さんさん商店街」は、1年後の2016年12月、新たにかさ上げされた造成地に移転する予定です。
志津川地区では10月24日、造成が進められている五日町の高台で、「志津川地区観光交流拠点整備予定地造成完了見学会」が開催されました。

ここは、やがて商業地として開かれて「まち」になっていく予定。
でも、一方では、志津川の復興のシンボルとして親しまれてきた「さんさん商店街」が消えることになります。
残り約1年の営業期間となった
「南三陸さんさん商店街」
初めにあった地域コミュニティ、次いで避難所で、仮設住宅で・・・また新たに結ばれたコミュニティ。そして商店街で生まれたコミュニティ。
でも、それらは、移転や引っ越しが繰り返される度に、また消えて行きます。
いわば、何度も壊される「ふるさと」。

津波が生んだ最大の悲劇かもしれません。

新しい商業地への移転。豊楽食堂さんは、どうされるのでしょうか?
「僕ですか? 実はお店をいったん閉めて、修業し直そうと考えているんです。その期間は1年か2年か・・・分かりませんが、でも、修業が終わったら、きっと南三陸でお店を再開します!」
さんさん商店街で撮影されたJR東日本のポスター。
大さんは吉永小百合さんの隣のポジションに抜擢されました。
堂々の準主役(!?)
大さんの次の目標は「ラーメン屋」さんなのだとか。
「でも、豊楽食堂の味は受け継いで、ずっと伝えていきたい。そしてその上に、新しい何かを加えたいなって思っています。
志津川の街も、これからどう変わっていくのか・・・。そんなことも見極めながら、次に出店する場所とかも考えたい。ビジョンはまだハッキリと見えていませんが、いろんな選択肢を模索しながら、挑戦していきたいですね」

志津川で50年以上も愛され続けている豊楽食堂。
皆の思い出や街の記憶を繋いできたお店でもあります。

守り伝えながら、新しい「何か」への挑戦も加わって、これからできていく街でもきっと、皆の笑顔が集う元気なお店になって、またおいしい思い出や記憶が紡がれていくはず。

食堂と、街の未来が楽しみです。

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DATA

【豊楽食堂】
●〒986-0768 宮城県本吉郡南三陸町志津川字御前59-1
●お問い合わせ/0226-46-3512
●営業時間/11:00~19:00(昼休憩あり)
●定休日/水曜日
●HP/http://www.sansan-minamisanriku.com/(さんさん商店街HP)

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(取材日 平成27年11月6日)