これから夏休みシーズンですね!
海、山、旅行へレジャーに行ったりと、きっと楽しい思い出が待っていることでしょう。
その一方、この時期は台風、ゲリラ豪雨などが起こりやすい季節です。楽しいはずの夏休みが一変して事故に……というニュースが報道されるのは悲しいものです。中には「そうならずに済んだのでは…」という場合もあったりします。
日本は自然に恵まれている一方、地震、台風、大雪など、さまざまな自然災害に幾度となく見舞われています。
——もしそんな災害に遭遇した時、どうすればいいのか…?
地震が来たら、机の下に隠れる!
津波が来る前に、高い場所に避難する!
大人の皆さんなら、なにかしら対処法が思い浮かぶかと思います。
子どもはどうでしょうか?
学校の避難訓練などで学ぶ機会はあるものの、5歳前後の小さな子どもに教え、さらにそれを理解し、行動してもらうのは、なかなか難しいかと思います。
そこで、それを子どもにも分かりやすく伝えるために作られたのが、減災絵本「リオン」です。
今日はこの絵本についてご紹介します。
減災絵本「リオン」
「リオン」には、主人公のいちろう君とママ、そしてタンポポの綿毛から生まれた妖精「リオン」が登場します。
このリオンが地球を旅しながら、自然が私たちにもたらしてくれる恵みと、その反面、自然災害の危険とそれに対する備えをみんなにやさしく教えてくれます。
イラストもやさしいタッチと色使いで描かれ、子どもはすぐに引き付けられます。
特に津波のページでは、子どもの興味をかきたてるちょっとした仕掛けもあります。
絵本が誕生したきっかけ
この絵本が作られたきっかけは、東日本大震災でした。この震災に関連した犠牲者は、行方不明者も含めると18,481名となり、その内468名は9歳以下の幼い子どもたちでした。(警察庁調べ・平成27年7月10日時点)
——いざという時の行動を知っていれば、失われずに済んだ幼い命がもっとあったのではないだろうか…。
ところが防災・減災を分かりやすく教える子ども向けの本が、実はこれまでありませんでした。そこでNPO法人防災士会みやぎの有志が立ち上がり、幼児向けの減災絵本を作るプロジェクトがスタートしました。
制作に1年をかけて、2013年に発行されました。
コンセプトは「問い掛けること」と「怖がらせないこと」
リオンは「読み聞かせ」を前提にした絵本です。読み手が「問い掛け」をし、それに子どもが自分で答えることで、”気付き”を引き出してあげながら、備えることの大切さと生きるためにどうすればいいのかを一緒に考えてほしいという想いが込められています。
なにより「子どもを怖がらせずに教える」ことができるのが、この絵本の一番の特徴です。
実際に読み聞かせの場にお邪魔しました。
この日は東北大学でのイベント「サイエンスデイ」のなかで行われた「おてんき☆ぼうさい教室」(天気と防災をいつもと違った角度で学ぶことをテーマにした教室)に、子どもたちが集まりました。
"災害"とは自然の気象事例なので、最近では天気を知ることが災害を知ることになり、防災にもつながると考え、気象予報士と防災士が協力し、気象と防災をつなげていく試みが行われています。
朗読はアナウンサーで防災士の黒田典子さん。絵本制作に携わったメンバーの1人で、これまで読み聞かせで50カ所ほどを回ったそうです。今回は会場が広いので、絵本ではなく紙芝居を使っています。
黒田さんが朗読の途中で問い掛けると、
——地球には何があるかな?
「動物がいる!」
「日本が見える!」
——地震がきたよ。どうなってしまっているかな?
「火が燃えてる!」
「地面が崩れてる!」
子どもたちは気付いたことを一斉に答えていました。
リオンが教えてくれる重要な部分では、「からだを守ろう!」「早めに避難しよう!」とみんなで声をそろえて復唱します。
どこの施設でも毎回子どもたちはとても元気に反応してくれるそうです。
全国に広まるリオン
このように完成後は、防災士が幼稚園、保育所などを中心に回り、読み聞かせ活動を行っています。そしてさらに絵本を広めていこうと、各地域の防災士に呼び掛けたところ、県外からも声が上がり、”分かりやすい防災減災教材”として全国各地で絵本が読まれています。宮城県内の幼稚園と保育所には、月1回の防災訓練が義務付けられています。
これと合わせてリオンの読み聞かせ効果もあってか、幼児たちの防災への理解が進んできているといいます。
実際に「防災訓練の時と、普段地震が起こった時の園児たちの行動がすごく良くなった」と黒田さんは2回目の読み聞かせで訪れた時に言われ、「やってきてよかったな」と感じたそうです。
「早くから防災・減災を知ることが、自分で自分の身を守ることにつながると考え、幼児に向けた絵本を作りました。
日常の中に防災・減災意識があることが、より一層自分の身を守ることになるし、さらに読む世代が変わると、見方や捉え方も変わると思うので、繰り返し読んでほしい本です。」
と黒田さんは言います。
絵本のお求めはコチラ
「リオン」は、NPO法人 防災士会みやぎのサイトで購入ができます。誰にでも読み聞かせができるように、巻末に解説と問い掛けのポイントが付いています。ご家庭やサークル、町内会の子どもたちにも、災害への備えをぜひ教えてあげてください。

1冊 ¥1,500(送料着払)
HP: http://bousaishi-miyagi.org/
※書店等では販売していません。
■リオンに関するお問い合わせ
Mail: ehon@bousaishi-miyagi.org
また依頼があれば、出張で読み聞かせも行っているので、ご希望の方は「NPO法人 防災士会みやぎ」までご連絡ください。
■NPO法人 防災士会みやぎ
HP: http://bousaishi-miyagi.org/
TEL: 080-1821-0335
Mail: jimukyoku@bousaishi-miyagi.org
(取材日 平成27年7月19日)