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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2015年7月23日木曜日

2015年7月23日木曜日9:31
こんにちはエムです。

私は先日、ある映画の試写会に行きました。
タイトルは「物置のピアノ」

手元のチラシには、女の子が立ったままピアノに触っていました。
まだ幼さが残るその横顔は、愛おしそうにピアノを見つめています。
「物置」と「ピアノ」の間にある物語を思い、早くもその映画に心惹かれた私は、いそいそと会場に向かいました。

(画像提供:「物置のピアノ」制作委員会)

映画の舞台になっているのは、福島県伊達郡桑折町(こおりまち)。
宮城県との県境に近い、福島市の北に位置する小さな町です。
果物の生産が盛んな桑折町は、特に質の高い桃の生産地として知られ、20年連続で皇室・宮家への献上桃として指定を受けていたほどでした。

映画は、そんな美しく小さな町、桑折町やそこで暮らす人々の穏やかな日常を追いながら、確実にそこに存在し続ける東日本大震災の傷跡をも描いています。


〈ストーリー〉
東日本大震災から1年4カ月が経過した2012年7月。
高校3年生の宮本春香は、物置でピアノを弾いていました。

「あの子、物置から出てこないのよ」
春香の母親が心配して父親に嘆く通り、暇さえあれば物置でピアノを弾く春香。

(画像提供:「物置のピアノ」制作委員会)

優秀で何でも器用にこなしてしまう人気者の姉へのコンプレックスや、5年前に幼い弟を亡くした悲しみ、自分への許せない気持ちなどを抱えた春香。
誰にも本当の気持ちを言えない不器用で臆病な性格の春香にとって、物置でピアノを弾くことは唯一、安らぎを感じられる時間だったのです。

そんなある日、東京の大学に通う姉の秋葉が突然帰って来るのですが、そこから物語はスピードを上げて展開してゆきます。

(画像提供:「物置のピアノ」制作委員会)

姉と妹の葛藤を軸に、震災後、風評被害に苦しみ、痴呆の症状が現れた桃農家を営む春香の祖父や、浪江町から避難し転校して来た、仮設住宅に住む同級生の少年との気持ちの交流などが交錯して物語は進みます。
だんだん明らかになる物置に置かれたピアノの理由や、春香が静かに抱く音楽への情熱など、実に多彩な出来事を、多彩な登場人物の心の動きと共に丁寧に描いています。

(画像提供:「物置のピアノ」制作委員会)

しかし、自分を見失い、迷い、もがき、なんとか前向きに生きようと懸命に生きる登場人物たちは、紛れもなく私たち自身の姿。ごく普通の人々です。

(画像提供:「物置のピアノ」制作委員会)

オーディションで選ばれた春香役の芳根京子さんのピアノの腕前は素晴らしく、瑞々しく自然な表情は魅力的で惹き付けられます。
そして脇を固めるベテラン俳優陣がドラマに厚みを与えています。中でも祖父役の織本順吉さんの演技は圧巻です。

この映画は決して何かを声高に訴えているわけではありませんが、見た人が何に関心があるのかによって、違った視点が生まれ、違った気付きがあるようでした。
そして日本社会が抱えるいくつもの問題点、さらに「本当の幸せとは」という人生の命題を浮き彫りにしてしまう要素を持った、長く、多くの人に見てもらいたい映画です。

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「物置のピアノ」製作委員会、配給・宣伝プロデューサーの岡元一徳さんが、映画について語ってくださいました。

宮崎県出身の岡元一徳さん。
「宮崎での上映会では、生産者と消費者が語り合うパネルディスカッションと
生産者の野菜の販売を組み合わせ、好評でした

「仙台では初めての試写会です。

この映画は、メッセージ性の強い作品でありながら、自らの意見を強く主張するものではありません。
被災地の現状を優しく届けることで、見ていただいた方が被災地へ思いを馳せ、何らかの支援を考えていただく。見た人が被災地とつながるようなきっかけになると良いなと考えています。
そのためには劇場の公開だけではなく、小さな会場で地道に活動をすることで、本当の意味での『映画を使った復興支援』にしたいと考えました。

いままで上映したのは主に関西や関東などです。
会場は文化センターのような大きな場所から、学校、幼稚園、公民館、小さいところではカフェでもやりましたが、集客は平均して200名くらいでした。

他にもオーストラリア・ロンドン・ボリビア・イタリアなど海外でも上映しましたが、現地にいる福島県人会の方々が、「なんとか自分たちの福島の現状を海外の人に伝えたい」そういった思いで人を集め、主催してくださって上映会を開催してきました。

そういったたくさんの方々の尽力のおかげで、今までやってこれました。
これからは西日本だけではなく東北でも、是非ともたくさんの方々に見てもらいたいと考えています。
小さい上映会でも結構なので、進めていきたいと思っています。


震災からまだ4年しか経過していない現在、復興はまだまだ終わっていません。
しかしいつの間にか日本は、今の政権による経済成長やオリンピック開催の話が最優先になり、被災地のことを記憶の外に置きつつあるように感じます。

我々がこの活動を推進するのは、物質的な支援だけではなく、被災地の方々は何を本当に望んでいるのかを考え、もっと寄り添うきっかけにしてほしいのです。

なぜこの映画の上映会を推進するのか……それは「あの日の出来事を忘れないため」なんです。

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「物置のピアノ」製作委員会からもう1人、プロデューサーの橘内(きつない)裕人さんが映画製作について語ってくださいました。

福島県福島市出身の橘内裕人さん

この作品は2010年からスタートしていました。
途中で震災が起こってストップしていたんですが、地元に戻って来て友人の話を聞いたり、故郷の姿を見たり、家族の状況も見て、自分に何かできる事はないかと考えました。

その時は学生上がりでお金もなかったんですが、その中止していた映画を地元の人たちと一緒に作ることで地元の人たちも元気になってもらい、映画の中のその元気を全国に配信していけないか……そう思って再びスタートしました。

そして町の人たちを巻き込んで、一緒にスタッフとして作ってもらったんですが、公民館を貸し切って主婦の方に集まってもらい、毎日30人くらいの皆さんに炊き出ししてもらいました。
すると農家の人から野菜をもらったりして、他の現場を知っている映画スタッフも、「ここの現場はご飯が楽しみだ」ととても喜んで好評でした。

映画に関わることで「スタッフと町の人」、「町の人と町の人」、今まで知らなかった人同士が話す機会が増え、親しくなりました。そんな当時の様子がフィルムに焼き付いている部分が見えます。

撮影当時は今よりももっといろんな問題の影響が強い時期でしたが、そういうことで動いていた人間が、その時の福島にいたんだよと、伝えたいです。
そして今でも笑顔で暮らしている人がいることを見てもらいたいです。

でも本当の映画作りの原点は、それを見た自分の近しい人に、笑って楽しんでほしい……少しでも気分を紛らすことができれば……という思いです。

「我々のプロジェクトは被災地への文化的な復興を支援すると同時に
次世代の子どもたちに継承できるような、『住みやすく希望の持てる
新たな価値を創造すること』を目的としています」

最後に岡元さんは言いました。
「この映画を見た人は、『懐かしい』『子どもや孫に見せたい』と感想を言ってくださいます。
多くの皆さんが求めているのは、被災地のための映画というよりもこういうことかな……と思って我々は宣伝のコピーを変えました。
これは『ふるさとの映画』です

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この映画は、映画による被災地復興支援プロジェクト「あとから来る者のために」(仮)として、上映会場を募集しています。

これは、「物置のピアノ」をより多くの人に見てもらうことによって、まだ多くの課題を抱える被災地への支援につながることを目的に立ち上がった、映画によるプロジェクトです。
上映会収益金の一部は【風評被害の残る桑折町の農家の生産活動】、そして【「被災地へピアノをとどける会」の活動支援】として寄付されます。

「被災地へピアノをとどける会」は以前ココロプレスでも紹介しましたが、“ピアノが結んだ縁” でこの映画とつながり、今回の試写会は「ピアノをとどける会」の事務所がある、仙台中央音楽センターで行われました。

多くの方が興味を持ち、この作品が上映されることで支援につながります。
団体、個人、自治体、学校など、上映を希望の方は、「アルファテックス株式会社」までご連絡ください。
上映機材や集客方法など、分からないことは何でも相談できるそうです。


◆ 連絡先
アルファテックス株式会社
〒101-0047 東京都千代田区内神田1-3-9
電話:03-5577-6504 FAX:03-5577-6586

◆ 「物置のピアノ」公式サイト
http://www.cinemanest.com/monookinopiano/


「被災地へピアノをとどける会」これまでの記事
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その1[発足編]
http://kokoropress.blogspot.jp/2015/03/1.html
その2[活動編]
http://kokoropress.blogspot.jp/2015/03/2.html
その3[手紙編]
http://kokoropress.blogspot.jp/2015/03/3.html
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(取材日 平成27年7月8日)