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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2015年4月14日火曜日

2015年4月14日火曜日10:20
にゃんこです。

皆さんは「グリーフケア」、「グリーフサポート」という言葉をご存じでしょうか。
震災以降よく耳にするようになった言葉なので、聞いたことがあるという方もいらっしゃると思います。

大切な人やものを亡くした(失った)という「喪失体験」によって「悲嘆」を抱える人々に寄り添いケアやサポートを行うことを「グリーフケア」や「グリーフサポート」と言います。

「NPO法人仙台グリーフケア研究会」も2000年の発足以来、喪失体験をした人々のサポートを行ってきました。
この副代表が今回ご紹介する佐藤利憲先生です。


佐藤先生は精神科の看護師を経て、現在は仙台青葉(せいよう)学院短期大学の看護学科で講師を務めていらっしゃいます。
発達障害のある子ども・家族のサポートや子ども・子育てのサポート、子ども・家族のグリーフサポートなど子どものメンタルヘルスに関わることを専門にしていらっしゃいます。

また、震災遺児や震災以外でも大切な人を亡くした中学生までの子どもを対象にグリーフサポートを行う「NPO法人子どもグリーフサポートステーション」では、グリーフサポートプログラムのディレクター兼理事を務め、子ども支援プログラムを行っています。

◆NPO法人仙台グリーフケア研究会
http://www.sendai-griefcare.org/

NPO法人子どもグリーフサポートステーション
http://www.cgss.jp/

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2015年3月8日、佐藤先生が主催するワークショップ「震災を体験した子どものこころのサポート」が行われました。
この日は県内の学生のほか行政、医療福祉関係者、カウンセラー、支援団体の方など約50名が参加。



「今日は“喪失”をテーマにお話をしたいと思います。喪失=死別と認識することが多いと思いますが、死別だけではなく、かけがえのない、大切な、愛着がある人やものを失うことを喪失体験と言います。
病気、ケガ、失恋、引っ越し、絶交、そして姓が変わるという意味では結婚もその一つです。実は喪失体験はごく日常にあるもので皆さんもたくさんの喪失体験の中で生活をしているんです。ライフイベントで変化を伴うときは、何らかの喪失体験をしていると言われています。どんなものをなくしているのか、どんなものとのつながりが薄れてきたのかをぜひ皆さんも考えてみてください」

そして最近注目されるようになった「グリーフ」という言葉。

「日本では“悲嘆”と訳されることが多いですが、私は嘆き悲しむだけではないと思っています。
大切な人やものをなくしたときのさまざまな感情や反応をグリーフと言いますが、悲しみのほかにも『その人に会いたい』、『その人の声を聞きたい』というのもグリーフ反応だと思います。
悲しみ、つらさ、愛惜、怒り、後悔、不眠、だるい―。これは心と体の正常な反応、自然な感情であり、決して病気や障害や異常ではありません。自分自身のことを考えるとそうでもないことが、他者のこういった反応を見たときに『精神的な病気なんじゃないか』と思ってしまう。でもそうではないと理解することが実はすごく大事なことなんです」



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震災を体験(喪失体験)した子どもたちは今、どんな心理状況にあるのか―。

震災によって子どもたちが喪失したものとは…



家族、親戚、友達、先生、学校、家、ペット、遊び場、思い出、地震、夢、希望、そして日常。
大人と同じように子どもたちも人的、物的、心理社会的な喪失を体験しています。

そして喪失体験をした子どもたちの特徴的な反応とは?

・心理的反応…悲しみ、怒り、恐れ、不安、愛惜、抑うつ、罪悪感、自責感

・行動的(身体的)反応…泣く、赤ちゃん返りなどの退行、乱暴、落ち着かない、何もなかったように過ごす、活気がない

・身体的反応…頭痛・腹痛、倦怠感、めまい、食欲不振、不眠

・スピリチュアル的(社会的)反応…自問、生きている意味の喪失感・戸惑い、親や先生など信じていたものが信じられなくなる(信念の崩壊)、安全や信頼の喪失感

「先程、他者のことを考えるとつい病気や異常、障害など思ってしまうと話をしましたが、この対象が子どもとなると余計そう思ってしまう傾向にあります。でもこれも正常な子どもの反応であり、自然な感情です。これを当たり前だと理解することが大切なんです」と繰り返し佐藤先生は話します。


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皆さんもこれまで経験してきたように子どもたちは、入学式や卒業式、授業参観、運動会、学習発表などさまざまな“イベント”が日常的に訪れます。

『死』を漠然と理解できるのは4歳、そして大人と同じ死生観を持てるように
なるのは中学生だと言われているそうです

これは親を亡くした子どもにとっては、亡くした人を感じることであったり、亡くなったという事実を思い起こさせられたりするという機会が日常的に訪れるということでもあると佐藤先生は言います。

「震災から4年。子どもたちを支援するときにいつも大事だと思うのは、この4年間で子どもたちは成長しているということです。こういったイベントがある度に子どもたちの心は大きく揺れ動いています」

最近よく行われるようになった「二分の一成人式」。
「二分の一成人式のためにこれまでを振り返りましょうと学校から言われ、親を亡くしたことを無理やり思い出さなくてはいけなくなり学校に行きたくなくなる子もいるかもしれません。二分の一成人式って誰のためのものなんだろうと考えさせられます。

子どもたちは自分の意識やペースとは別に考えさせられる機会が多い。その度に子どもたちの心は揺れ動いているということを考えてほしい」と佐藤先生。

“楽しいね、うれしいね”と言っている陰で、こういった想いをしている子どももいる。
みんな一緒ということではなく、もっと一人ひとりの子どもたちに目を向けていかなければいけないことをあらためて考えさせられました。

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「仙台グリーフケア研究会」では震災直後の3月19日に、電話とメールによる相談を始めました。

子どもたちの反応としては、赤ちゃん返りや恐がり・不安・怯え、身体症状、自分を責める、暴力的、イライラしているなどの相談が多かったそうです。中には津波ごっこや地震ごっこ、グロテスクな話をするといった内容も。

「子どもたちはコントロールできないものを一生懸命コントロールし解釈しようとしています。地震や津波ごっこをすることで、それを必死に理解しようとしている。だから止めないであげてほしい」と佐藤先生。


そして、被災地の子どもたちの今とは―。

・日常生活支援の不足
・支援の継続と質の影響
・頑張ってきた疲れ
・経済的な問題
・生活空間の喪失
・引っ越しなどによる不自由さ
・イベント型支援への期待と落胆
・さまざまな喪失による孤立と孤独
・想いや感情を表現できないつらさ
(親が子どもに自分よりももっとつらい人がいるんだから、悲しいつらいと口に出しちゃダメと言うことで子どもは親を心配させないようにその感情を抑え込んでしまう。それは亡くなった人の声や思い出も抑え込んでしまうことと同じ。そして時間がたつにつれてその声や思い出すらも忘れてしまうという状況があるそうです)

「これらの状況は1年前からほとんど変わってない、子どもたちの間でも格差は大きく広がっている」

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震災当時3~6歳だった子どもとその保護者を対象に厚生労働省が行った調査結果に、“東日本大震災を経験した被災地の幼い子どもが自分を傷つけるといった問題行動が被災地以外に比べて高い傾向にある”ということをご存じでしょうか。

この結果を受けて佐藤先生は、

・被災・喪失体験は、子どものこころに大きな影響を及ぼしている
・子どもは環境(家族・保護者を含む)の影響を強く受けている
・言葉にならない(解決しきれない)何らかの大きなストレスがある

そして、
「子どもだけを支援しては意味がない。子どもとその周りの家族(保護者)、環境を支援しなければ子ども支援にはなりません。包括的な親の支援が大切」だと話します。

「子どもが死に関して語ったとき、その意味を十分考えていかなければなりませんが、ただ一方で、まだ死というもの理解できない小さな子どもが『死にたい』、『天国に行きたい』と言ったときに『=自殺』と限定して解釈をしてしまっていいのだろうか」とも問いかけます。

実は「死にたい」、「天国に行きたい」=「天国にいるパパやママに会いたい」という意味かも知れない。

言葉の表現が未熟な子どもたちだからこその表現がある。

「子どもたちが死を語ったときにそのまま死にたいという意味だけではなく、こういった解釈もあることを理解してほしい。解釈を間違えると間違ったサポートにつながってしまいます。そして被災地の子どもだからということではなく、喪失体験をした子どもはそうでない子ども以上に死という出来事を近い存在として感じることもある」と佐藤先生。

これが大きな喪失体験をした子どもたちの現状です。
では、その子どもたちの心に寄り添うためにはどうすればよいのでしょうか……?

(後編へ続く)
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2015年4月26 日日曜日
子どもの心に誠実に。「震災を体験した子どもの心のサポート」(後編)(仙台市)
http://kokoropress.blogspot.jp/2015/04/blog-post_26.html
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(取材日 平成25年3月8日)