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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2015年2月28日土曜日

2015年2月28日土曜日13:48
大崎市に住む大友良三さんが撮影した初日の出。自宅からの居久根の風景
(写真提供:大友良三氏)
ザーリャです。
自然の豊かさを暮らしに取り入れた、先人の知恵。それが『居久根(いぐね)』です。
宮城を中心とする地域では、屋敷を取り囲むように植えられた屋敷林をそう呼び、大切に育んできました。

しかし、東日本大震災の大津波は、仙台平野の沿岸部の居久根にも、壊滅的な被害をもたらしました。

その被災地の一つ、仙台市宮城野区の南蒲生(みなみがもう)地区。ここで、津波により失われた居久根をこれからの暮らしに沿ったかたちで再生し、次世代へ継承する試みが始まっています。

それが仙台平野 「みんなの居久根」プロジェクトです。

取り組むのは、南蒲生地区の住民の皆さんと、そのサポートを行う都市デザインワークス
ココロプレスでは昨年から、その取り組みの様子をご紹介してきました。
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2014年6月4日 水曜日
[前編] 約200世帯が現地再建をする、南蒲生の新たな試み(仙台市)
http://kokoropress.blogspot.jp/2014/06/100_4.html
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2014年6月24日 火曜日
[後編]「居久根ひろば」と現地実践の取り組み(仙台市)
http://kokoropress.blogspot.jp/2014/06/100_24.html
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2014年8月15日 金曜日
「私」の思う原風景。未来の「居久根」の姿とは(仙台市)
http://kokoropress.blogspot.jp/2014/08/blog-post_15.html
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2014年12月8日 月曜日
在りし日の居久根と、震災後の風景写真~南蒲生の定点観測(仙台市)
http://kokoropress.blogspot.jp/2014/12/blog-post_1.html
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今年の2月6日、この一年を振り返り、今後の活動を考えるワークショップが開催されました。


今回が今年度最後となるワークショップ。
テーマは「みんなの居久根」のこれから~2年目の活動を振り返る~

今年1年の活動を振り返りながら、次年度以降でさらに活動の「輪」を広げるためのアイデアを検討しました。

参加者からはさまざまな「振り返り」がありました。

「宮城県の北部に実家があり、高台に家、平場に水田がある環境で育ちました。それまで、家の周りに木があれば居久根だと思っていました。しかし、この活動に参加することで、それぞれの樹種にも役割があり、居久根にも地域性があることを学べました」

4世代にわたって受け継がれた居久根。樹齢は120年を越える杉もあります
(写真提供:大友良三氏)

大崎市古川で4世代にわたって居久根を所有する大友良三さんは、自らが撮影した写真を使って、冬の居久根の様子をレポートしました。

「雪が降った日に居久根の木々を観察すると、幹の北西側に雪が張り付いているのが分かります。北西からの強風や雪を、防いでくれているのです。そのおかげで、居久根の内側では、風の強さが外の半分ほど。おかげで、冬だからと言っても、特段に苦労はないのです」

居久根の外に出ると、周辺は大変な地吹雪だと言います。

また、かつて切り倒した杉の木の樹齢を調べると、約120年ほど前の明治時代に植えられたものだったことが分かりました。

居久根の内側では、風の勢いが半減します(写真提供:大友良三氏)

プロジェクトのモデル地区である南蒲生に住む男性は、「敷地に大きな木を植えたいと思っています。その木が育っていく様子を楽しみたいですね。昨年はその周辺にヒマワリをまいて、子どもたちが遊ぶ場所を作りました」と、自らの夢と取り組みについて話しました。

このような南蒲生の取り組みから、活動には「すぐにできること」と、「30年後にできること」のように、短期と長期の2通りの活動が考えられることや、また、「居久根」を介在し、人と人との関わりを広げてゆくことの大切さが指摘されました。

昨年11月、南蒲生で植樹体験が行われました
(写真提供:都市デザインワークス)
残った居久根の下で採集した木の実も植えられました
(写真提供:都市デザインワークス)
昨年の11月8日には南蒲生で、植樹体験が行われました。

敷地を提供した参加者の男性です。

「家には24本の杉の木がありましたが、津波によって全て枯死したために、伐採を余儀なくされました。生き残ったのは、大きな松の木が一本だけです。それで、昨年のモデル植樹の際には、新たに桜や桃の木と、別の敷地の残った居久根の苗木を植えました。今はまだ雪の下に埋もれていて、実際に根付いたかどうか、分かりません。いずれ春が来れば分かるでしょう。それを楽しみにしながら、植樹した木々を眺めています」

苗木の移植については、出席した専門家からのアドバイスもありました。

「空気が乾燥し、霜によって土壌の表面が浮き上がるのがこの季節です。苗の移植はちょっと心配ですね。でも、移植した苗の根元に藁(わら)を敷き詰め、本来の森林の土壌と近い環境を作ってあげれば、根と土のバランスも良くなり、初期成長が促されるはずです」


また、この一年間の活動にオブザーバーとして参加してきた仙台市の「建設局百年の杜推進課」の中川さんが、一年を振り返りプロジェクトの感想を述べました。

「私たち仙台市は、現在進めている『ふるさとの杜再生プロジェクト』で、東日本大震災によって失われた東部沿岸地域の緑の再生を目指しています。市民の共有財産やアイデンティティとして、新たな心のふるさとになる緑です。それを『どのように、誰が再生するのか?』。『みんなの居久根プロジェクト』に参加させていただくことで、さまざまな方々の思いやアイデア、そしてその実行に必要な支援の規模など、将来像の一端を実際に見ることができました。『みんなの居久根』をモデルに、来年度の『ふるさとの杜再生プロジェクト』の計画を立てたいと思います」


ワークショップの後半では、それまでの振り返りを織り交ぜ、来年度の活動のアイデアを出し合いました。


「居久根を再生させて、そこに人を集めるのであれば、『風景』の再生を考えるべきです。居久根だけではなく、それを含めた地域の環境全体を考えて、環境循環型の生活を考える場にすれば良いと思います」

「古民家を移築し、そこでカフェを開いたり、バックパッカーが宿泊できたり、自転車で周囲をサイクリングできる。そんな、訪れる人が楽しめる仕掛けが欲しいですね」

「南蒲生地区の目の前は、仙台湾です。居久根だけをクローズアップするのではなく、海とのつながりも取り上げてはどうでしょうか。日本一の運河である『貞山掘』などにもつなげれば、活動が広がると思うのですが」

「居久根には、リスが住んでいたという話を聞きました。リスを呼び戻すことなど子どもたちも夢を持てる、分かりやすいキャッチコピーや目標があるといいですね」

「交流人口を増やすためには、通りかかった人の目を引く『もの』が、道路から見える場所にあることも重要なのでは。そのための土地も必要でしょう」


ワークショップには、今回が初めての参加となる方々もいました。

「私は今回初めて参加しました。震災後、新興住宅地だけが増えていく現状を見て、『これでいいのか?』と思い、学びたくて出席しました」

「私も初めての参加です。個人での居久根の管理には、限界があると思います。年をとれば居久根の維持管理は難しい。だからやはり、地域で取り組まなければいけません。若い人たちが楽しみながら参加できて、そこから活動に巻き込んでいく。そんな仕組みがあれば良いですね」

「初めての参加です。緑の再生を考えるのであれば、行政側である程度のルールや決まり事を作ったほうが良いかもしれません。町内会での取り組みや住宅新築の際に、緑化を推進ような『仕掛け』です。その方が、市民もやりやすいと思います」


ワークショップの終了後、アドバイザーであるランドスケイプデザイナーの廣瀬俊介さんが総括を行いました。

「今日の話し合いを聞いていて、居久根の再生が『できそうだ』と感じました。話し合いは居久根を中心としたものですが、それが教育や環境、古民家・・・という具合にさまざまな方向へ広がっていました。これが大事なことだと思います。一度バラバラになったものが、居久根を通じて結びつこうとしています。いずれ絵画や文学など、人間の精神活動の分野にも結び付けられる可能性があります。こうした活動を続けることが、次世代の育成にもつながり、総合的な『知恵』をもった子どもが育つはずです」

昨年11月に行われた南蒲生での植樹体験(写真提供:都市デザインワークス)

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都市デザインワークスでは、今年度のプロジェクトの成果をまとめ、3年目となる来年度の活動に反映していく予定です。来年度の予定につきましては、ホームページをご覧ください。

都市デザインワークス
http://www.udworks.net/news

その他の最新の仙台平野「みんなの居久根」プロジェクトの情報は、facebookで随時更新されています。モデル植樹を行った南蒲生のその後の様子や、苗の維持・手入れのお手伝いの呼びかけなど、こちらをご覧ください。

仙台平野「みんなの居久根」プロジェクト(facebookページ)
https://www.facebook.com/minnanoigune?fref=ts

数十年の後までも継承されていく、「みんなの居久根」プロジェクト。前例の無い取り組みです。
仙台平野で行われる居久根や緑の再生は、東日本大震災で失われた私たちの故郷の再生でもあります。

新年度の取り組みについても、引き続きココロプレスでご紹介する予定です。

(取材日 平成27年2月6日)