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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2014年12月31日水曜日

2014年12月31日水曜日8:00
石野葉穂香です。

2014年8月10日と11日、南三陸町歌津で「歌津復興夏まつり」が行われ、その模様を取材させていただきました。
こちらの記事です。

『〝ポストくん〟と、歌津復興夏まつり』
平成26年9月3日 水曜日
http://kokoropress.blogspot.jp/2014/09/blog-post_3.html


ウタツギョリュウのぬいぐるみに先導されて
西表島から帰ってきた
「ポストくん」が会場入り(8月10日)

この日は大雨で、会場は伊里前中学校の体育館に変更。
でも、大盛り上がりの一日でした

写真の真ん中、
ウタツギョリュウの下に「ポストくん」がいます

歌津・伊里前の街から大津波にさらわれてしまった郵便ポスト。
1年9カ月後、沖縄県八重山郡竹富町西表島のユチン川河口付近で発見されました。

こうした縁から歌津と八重山の皆さんとの間に交流が生まれ、2013年の「夏まつり」には石垣市の観光大使である「BEGIN」のお三方をはじめとする10人の皆さんが「チーム八重山」として来町。
そして、2104年もまた、チーム八重山は歌津を訪問し、祭りに参加して大いに盛り上げてくださいました。

お祭りでは、志津川の子どもたちで編成された「サンシンズジュニア」という音楽グループもステージに立ちました。

体育館の屋根を叩く雨の音にも負けない
元気な歌声が会場に響きました

今回はこの「サンシンズジュニア」のお話です。

彼らの練習場所となっている南三陸町志津川のカフェ「commons(こもんず)」さんへ、おじゃましてまいりました。

コモンズさんの記事はこちらからご覧いただけます。

『コミュニティカフェ『commons(こもんず)』営業中です』
平成26年9月25日 木曜日
http://kokoropress.blogspot.jp/2014/09/commons.html

「サンシンズジュニア」。
その名の由来は、沖縄の楽器「三線」です。
チームは、東日本大震災のあと、志津川高校避難所にやってきた沖縄県の自衛隊員との交流の中で誕生したのでした。

かさ上げ工事が進む志津川の街
(志津川中学校から/平成26年11月8日撮影)

3.11の大津波で街が壊滅してしまった志津川。
人々は、高台にある志津川小学校や中学校、志津川高校などで、辛くて長い避難生活を余儀なくされました。
知らない人同士が、隣り合って眠ることもありました。
小さな口ゲンカが始まったり、グチや泣き声が聞こえてきたり。
そんな雰囲気の中で、元気や笑顔をなくしていく子どもたちも少なくありませんでした。

震災から数日後、志津川高校避難所に、沖縄県の陸上自衛隊第15旅団から「チムグクル生活支援隊」が派遣されてきました。

チムグクルとは、沖縄地方のことばで「助け合う心」「思いやりの心」という意味。
支援隊は、ガレキ撤去や行方不明者の捜索、他避難所での炊き出しも行い、また、休憩時間には、子どもたちの遊び相手になってくれたりしました。

ある日、何人かの隊員の方が、避難所の人たちを励まそうと、持参した三線を持ち出して、沖縄の音楽や民謡を演奏して聞かせてくれたことがありました。

やさしくて、ほのぼのとしていて、南の島の暖かさを思わせる、あの三線独特の音色が、避難所での辛い日々を送っていた人たちの心をそっと和ませてくれたのでした。


「BEGIN」とのジョイントも。
(中央はリーダーの比嘉栄昇さん)

毎日、演奏が始まると、いつも最前列に座って熱心に聞き入る高校生の女の子がいました。
「ちょっと弾いてみる?」
隊員に声をかけられたその子は大喜び。

それがキッカケで、それから隊員たちは、毎日任務が終わったあと、子どもたちに三線を教えてくれるようになったのです。

三線だけでなく、ギターやキーボードも加わり、やがてメンバーも増えて、1カ月後には隊員たちと一緒に慰問演奏会を開くほどになったのでした。

一次隊が沖縄へ帰るとき、隊員さんは「もっと練習してね」と三線を一台、子どもたちにプレゼント。
その後、沖縄からは五次隊まで派遣されてやって来てのですが、隊員たちの間で申し送りがあったらしく、プレゼントされた三線の台数も増え、志津川高校避難所が閉鎖されるまで、子どもたちと隊員たちの練習と合奏は続けられたのでした。

三次隊がやって来た5月には、志津川中学校で、子どもたちは隊員たちと一緒にコンサートも開催。
自衛隊に「サンシンズ」という音楽チームがいたことから、子どもたちのチームは「サンシンズジュニア」と名乗ることとなったのです。


「コモンズ」店内に飾られた三線
夏が過ぎ、自衛隊は撤収。避難所生活も終わって、子どもたちもバラバラになりました。
でも、子どもたちは
「三線を弾き続けていれば、きっと自衛隊の人たちにまた会える―」
そう信じて、練習を続けました。

また、辛かった時期に一緒に過ごした仲間たちと離れたくなかったし、活動を見守ってくれる大人たち、応援団、ファンもできていました。
「私たちの演奏を喜んでくれる人がいる。皆を元気にできる」・・・ということにも気づいたのです。

練習場所は、プレハブや仮設住宅の集会所などを転々。2012年1月にオープンした「さんさカフェ」も練習場所の一つでした。

「さんさカフェ」は2014年1月末に閉店しましたが、同年4月末、同じ場所に「コモンズ」ができたことで、今では週2回、お店に集まって練習を行っています。


楽器を演奏する組と
合唱を受け持つ組とに分かれています

「練習時間は1時間ぐらいです。練習は、彼らの自主性に任せています。私たちは三線が弾けないですし(笑)。でも、『元気がないよ』『もっと大声で歌おう』とかダメ出しはします」
とお話しくださったのは、コモンズの店主である内海明美さん。
チームの世話人であり、メンバーの保護者のお一人です。

右の楽器は「一五一会(いちごいちえ)」といいます
BEGINと岐阜県のギター製造会社が
「三線とギターのチャンプルー(混合)」として考案・共同開発。
「大正琴」以来、90年ぶりに日本で誕生した創作楽器と言われています。
三線とギターの長所を併せ持ち、しかも指一本でコードを押さえられ、
キャッチコピーは「世界一簡単な伴奏楽器」

「メンバーの多くは仮設住宅住まいです。彼らにとってこのチームは居心地がいいんでしょうね。同じ気持ちで繋がれる仲間がいる。音楽を聞いてくれる人がいる」

「最初に三線に触れた女の子は、もう20歳になります。もちろん、今でも弾いています。震災直後の避難所の、ローソクの光の中で聞いた三線の音色は、彼女にとって、きっと『生きる希望』だったのかなって思いますね・・・」(内海さん)

「はい、もう一回やるよ~」
年長者が練習をリードします

そして、そして。
2012年8月、「サンシンズジュニア」は、ついに念願がかなって沖縄へ出掛けることになりました。

「また会えたね!」
自衛隊の隊員の皆さんも大喜び。

駐屯地では「サンシンズ」と「サンシンズジュニア」のジョイントコンサートも行われ、子どもたちは感謝の気持ちを一生懸命に歌い上げました。
三線の本場での演奏に、ちょっと緊張気味でしたが、何よりも、やさしい師匠たちと再会できたことが、いちばんうれしかったそうです。


自衛隊駐屯地でのステージのほか、
BEGINさんが毎年沖縄で開催している「うたの日コンサート」にも出演しました

「子どもたちにとって自衛隊の方々はヒーローです。交流は今でも続いていますし、ジュニアたちをずっと見守ってくださっています。
三線が東北に根付いて、南三陸の新しい地元文化になってくれたら・・・というのが夢です。それが、私たちからのお礼にもなると思っています」(内海さん)

彼らのレパートリーは約10曲。
その中には、千葉県のミュージシャン「チャオ」さんがプレゼントしてくれたオリジナルソング『太陽もかなわない』という歌もあります。

避難所生活から立ち上がり、決して負けないで、未来を創って行く・・・。
子どもたちの決意と元気が見事に盛り込まれた、とても素晴らしい歌。

ここに、その歌詞を紹介させていただきます。

ぜひ、声に出して、お読みください。

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『太陽もかなわない』

東の町で雪止まぬころ 小さなロウソクのなか
南の島の迷彩服たちが イヤサッ!と奏でる
本当の歌を この場所で 見つけた僕は
それから君の虜(とりこ)になった

津波なんかに負けるものか 立ち上がってやるぞ
皆で叫んだその声が イヤサッ!と天に届け
ありがとうのひと言じゃ とても伝えきれない
町が戻るまで 声枯れるまで

もう一人で歌えるよ 僕が大人になったら
必ず君の町に 歌いに行くから
濡れた星を誰よりも たくさん眺めた君の
瞳の光には 太陽もかなわない

また一緒に歌えるかな? 僕の空がかげる時
君の声が聞こえて 雲の行き先を気にした

ハイビスカスより眩しい たくさんの花が咲く公園で
新しい故郷の歌 歌う僕らがいる

濡れた星が乾いて 輝き始めた時
世界中 響く歌には 太陽もかなわない

作詞:チャオ 作曲:一郎

※【You tube】で観ることもできます。
https://www.youtube.com/watch?v=qLerTF612Jc


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「BEGIN」の皆さんが南三陸へ来てくださったのは、ポストが縁を結んでくれたのもひとつですが「南三陸に『サンシンズジュニア』がいたから」・・・というのも大きなキッカケでした。

「サンシンズジュニア」は、夏まつりをはじめ、各種団体が主催するコンサートやパーティにも招かれ、演奏を披露しています。
また、沖縄をはじめ、長野、東京、埼玉など、県外へ出掛けて行ったこともありました。

暗くて寒かった避難所で、皆の心に寄り添うようにやさしく響いた三線の音色。歌声。
それは、子どもたちの希望でした。

『サンシンズジュニア』ではメンバーの募集もしています。
親御さんの同意があれば、他に応募資格は特にありません

三本の〝糸〟が奏でる音が、自衛隊の隊員、BEGINのメンバーをはじめ、たくさんの縁を結んでくれたのです。

人はこうして繋がって、世界はこうして結ばれて、音楽が街角に流れていた、あの何気ない日常が、また南三陸に築かれていくことを願っています。

音楽っていいなー。

そう思わせてもらえた取材でした。

(取材日 平成26年12月11日)