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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2014年8月3日日曜日

2014年8月3日日曜日7:17
石野葉穂香です。

現在、宮城県内には22カ所の「復興商店街」があります。
観光客や、ボランティアさんたちが「地元にお金を落とそう」と商店街を訪ね、「買って支援、食べて応援」というふうに励ましてくださっています。
もちろん、地元の皆さんも、日々の買い物にやって来ます。
街のカタチは変わってしまったけれども、店のご主人とお客さんが交わす昔なじみ同士の会話が聞こえてきたりすると、なんだかほっこりさせられたり。

南三陸町の志津川中学校の丘下、国道398号のそばに、仮設商店街である「南三陸さんさん商店街」があります。
開設は2012年2月25日。震災前、志津川の街で営業していた商店のうち32軒が、今ここで商いの灯を守り続けています。
2013年度には、経済産業省「がんばる商店街30選」にも選定されました。

さんさん商店街の入り口には
チリ共和国から送られたモアイ像があります。
マナ(霊力)を宿した目が入れられた本物は、
チリ本国以外では、ドイツと志津川にしかないのだとか


商店街が建つこの場所は、5年契約で借りている土地。その契約期間の半分が経過しました。
商店街のこれまで、そしてこれからについて、「南三陸志津川福興名店街運営組合」の副組合長でもいらっしゃる『創菜旬魚 はしもと』の店主・及川満さんに、ご自身のお店の歩みと併せてお話を伺いました。


店主の及川満さん


『創菜旬魚 はしもと』は、「さんさん商店街」に8軒ある飲食店の一軒。
満さんは、震災の時、「南三陸ホテル観洋」の板場で働いていました。

満さんのご実家は、歌津にあった「歌津ドライブイン」。震災の数年前から休業中でした。
「父がやっていた店です。僕も料理の道を選んだし、いつかは〝自分の店〟を出したいと考えていました。でも、店を出すなら歌津よりも街として大きかった志津川でやりたいと思っていた」と満さん。

そこへ東日本大震災が発生。大津波は、「歌津ドライブイン」と、隣に建っていた実家を流失させてしまいます。
「何もかもなくなってしまいました。でも、何もなくなってしまったからこそ、逆に『やってやろう!』というか。開き直りの気持ちも湧いてきて、志津川の仮設商店街の出店希望に応募したんです」
2011年11月に「ホテル観洋」を辞め、そして2012年2月25日、「さんさん商店街」のオープンと同時に、お店も開業しました。
お店の名前である「はしもと」とは、ご実家の〝屋号〟なのだそうです。

お店の入り口。
さんさん商店街のフードコートの北側にあります


そんな満さんの出発を、ひとつ年下の幼なじみである佐藤仁さんが支えます。
仁さんは、運送会社の志津川営業所に勤めていましたが、満さんがお店を出すことを知って、一緒にやりたいと考えたのでした。
「接客業に興味があったんです。1月に会社を辞め、お店の内装工事などは仲間たちと一緒に手作りしたりして、そこからスタート」(仁さん)

でも、お店を始めてみると、思っていたこととは違うこともたくさん出てきました。
「最初は夜の営業をメインにしたかったのですが、お昼時は予想以上にたくさんのお客様でもう大忙しに(笑)」(仁さん)

「被災地を見学するバスツアーもあるなど、団体さんの予約もあったりします。お店に入りきれないときは、商店街の広場にあるフードコートを使っていただきます」(満さん)

ボランティアの方もたくさん来てくださいました。
「忙しかったけれど、でも楽しかった。全国の知らない土地の人とお話できたし、震災なんてことがなかったら出会うこともなかった人とたくさん会えました」(仁さん)


店内の壁には「さかなクン」が描いていったイラストが。
見ているだけで元気になれそう


一方、夜、お店に来られるのは地元の方が中心。でも、以前なら、お酒を飲んで歩いて帰れていた人も、今はタクシーや運転代行を利用したり、家族に送迎を頼まなければ、離れた住居へは帰れません。
「震災から4年目。誰もがお金を大切にしています。タクシー代を使ってでも飲み歩こうという人は、かつてほど多くいません」(満さん)

さらに志津川は港町。〝魚はもらって食べる〟という方も多く、魚介を中心とした和食のお店は、ちょっと苦戦します。
「でも、同じ日に獲れた同じ魚でも、家庭では出せない味を提供するのが料理店の仕事。『創菜旬魚』というサブの店名には〝たくさん獲れる季節の魚や野菜を使って、新しいおいしさを創る〟という意気込みを込めたのです」(満さん)

南三陸の旬の素材を使ったおいしい料理に出合ってほしい。豊かな海と山がある南三陸の良さに、もう一度気づいてほしい――。
「お酒ももちろんご提供します。でも、飽きられない料理、一工夫、一手間かけた料理を出して、これから出来上がっていく〝街〟で、何度も足を運んでもらえるお店を作っていけたらって思っています」(満さん)

現在地は、2年後には更地に戻して地権者にお返しするのだそうです。
新しい商店街は、今、急ピッチでかさ上げ工事が進められている旧街区に再建される予定。


フードコートの周辺には飲食店が集まっています


――次は、どんな商店街をつくっていきたいですか?

「まず、昼でも夜でも、地元の方が出てきたいと思ってもらえる雰囲気のある場所にしたいですね。足を向けたくなる場所。そして、あの一軒のために今夜は出掛けようか・・・と思ってもらえるお店が、一軒だけじゃなく、何軒も並んでいる街がいいですよね」(仁さん)

町の若い人たちは〝カラオケ店が欲しい〟〝スナックがあるといいね〟とおっしゃいます。皆が集える場所、お店。〝たまり場〟というか、ネオン街というか。

「組合でもいろいろな意見が出ています。今後は法人しようかとか、商店街の運営方法も含めて、まとまっていくのはこれからですね」(満さん)

「自分たちよりも若い世代・・・30歳前後の連中が、元気に頑張っている姿や顔を見たいですね。僕らは基礎づくりの年代。街を、町を動かしていくのはもっと若い連中の代ですから」(仁さん)

励ましの寄せ書きも飾られています


――お店としては?

「夜の営業でお店に来られる方は同じ方が多いですので、毎回、違う味を届けたい。たいへんだけど楽しい(笑)。そして、喜んでくださる顔を見るのやっぱりうれしいです」(満さん)

「お母さん方が来られるお店に。お母さんがお店に来てくれたなら、子どもとダンナさんはくっついてきます(笑)。家族で食べに来てほしいです」(仁さん)

「南三陸キラキラ丼」の春バージョン・「キラキラ春告げ丼」。
めかぶの天ぷら、新ワカメの酢の物、そして春告げ野菜がいっぱい
(3月1日~4月30日)
※「南三陸キラキラ丼」は、町内の飲食店11店舗が、
それぞれ味やアレンジや盛りつけを競い合う、南三陸町の名物丼です
(写真提供:南三陸町観光協会)


こちらは夏バージョンの「キラキラうに丼」。
前湾で獲れたばかりの甘み深いウニがたっぷりと
(5月1日~8月31日/写真提供:南三陸町観光協会))


そして秋から冬は「キラキラいくら丼」。
ご飯が見えないほどのイクラと鮭のお刺身付き
(11月1日~2月28日 写真提供:南三陸町観光協会)

南三陸町では、震災前から売り出していた「南三陸きらきら丼」といった人気メニューがあり、また、今は鉄骨だけになってしまった町の「防災対策庁舎」跡の注目度も高く、この町の復興に関心を寄せてくれる方が、全国に多くいらっしゃいます。
「さんさん商店街」にも、復興応援ツアーなどで訪れる観光バスも立ち寄るなどして、多くの「交流」が生まれています。
及川満さん(右)と佐藤仁さん。
幼なじみコンビが、ふるさとのおいしさを届けてくださいます

そしてやがては、町の方と町外の方が、南三陸の旬味を一緒に食べて、お酒も飲んで、さらには一緒に歌ったり・・・という、かつてのにぎわいの〝まち〟へ・・・。

たとえ今は仮設の街だとしても、「海のまち」ならではの〝おもてなしの心〟を伝えてくれる場所です。
その心を、ずっと未来まで伝える、ステキな〝集いのまち〟が、きっとまた出来上がっていくはず。

もっともっと多くの方にお訪ねいただけますよう、願っています。


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【創菜旬魚 はしもと】

所在地:本吉郡南三陸町志津川御前下59-1 南三陸さんさん商店街内
電話:0226-29-6343
営業時間:11:00~14:00(LO)、17:00~21:30(LO)
休業日:月曜日夜と火曜日

きらきらうに丼 2315円
きらきらうに丼+ほたて 2593円
きらきらうに丼+たこ 2593円
きらきらうに丼+まぐろ 2778円 (※ 各税別) 


(取材日 平成26年7月10日)