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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2014年8月15日金曜日

2014年8月15日金曜日15:09

ザーリャです。
自然の豊かさを暮らしに取り入れた先人の知恵、『居久根(いぐね)』。
宮城を中心とする地域では、屋敷を取り囲むように植えられた屋敷林をそう呼びました。

東日本大震災の大津波では、仙台平野の沿岸部が甚大な被害を受けました。
仙台市宮城野区の南蒲生(みなみがもう)地区は、ことに被害が大きかった地域の一つです。
そこでは、失われた居久根を「新しいかたち」でよみがえらせ、次世代へつなごうとする試みが始まっています。

南蒲生の皆さんをサポートする都市デザインワークスが推進する「仙台平野 みんなの居久根プロジェクト」です。

100万都市の「新しい田舎」を創る~みんなの居久根プロジェクト~
2014年6月4日 水曜日
[前編] 約200世帯が現地再建をする、南蒲生の新たな試み(仙台市)
http://kokoropress.blogspot.jp/2014/06/100_4.html

2014年6月24日 火曜日
[後編]「居久根ひろば」と現地実践の取り組み(仙台市)
http://kokoropress.blogspot.jp/2014/06/100_24.html

「居久根のある集落は、『杜の都』仙台の原風景。南蒲生の人たちだけではなく、仙台平野に住む多くの市民を交えて、
議論を深めなければいけません」
そう話すのは、都市デザインワークス代表の榊原進さんです。

7月11日、都市デザインワークスでは、広く一般の方々に参加を呼び掛けた第1回目のワークショップを開催しました。


会場には、今回初めて「居久根」を知った方や、実際に居久根を所有されている方、また復興活動の支援者など、10代から80代までの、さまざまな立場の28人が集まりました。

その第1回のテーマは、「私が考える‘これからの’居久根〜そもそも居久根って何?!〜」

参加者はまず、居久根についてその歴史や現状を学び、その後、それぞれが考える「これからの居久根」について、グループごとにディスカッションを行いました。 

「ワークショップを重ね、秋には現地での実践も予定しています」
そう語る、都市デザインワークス代表の榊原進さん
「阪神淡路大震災では公園の木々が、街を延焼から防ぎました」
事例紹介を行う廣瀬俊介さん
「人間が作るさまざまな役割を持った庭の一部、それが居久根です。人間が作る庭が、長年にわたって地域の生態系を肩代わりする役割を持ってきました」

そう語るのは、プロジェクトにアドバイザーとして関わる、ランドスケイプデザイナーの廣瀬俊介さんです。公園や道路を設計する専門家の立場から、居久根が果たしてきた役割を、多くの事例を交えて解説しました。

「居久根によって光が遮られ、熱が冷やされる。『エネルギーを使わない』という事は、二酸化炭素の排出量を抑えることにも繋がります」

廣瀬さんは、居久根の必要性を「温故知新を基本にしながら、現代的に説くことが重要だ」と考えています。

「人が生きることに必要なものを、実は居久根は持っています」
廣瀬さんはそう語ります。

居久根再生のモデルプランの説明を行う早坂さん
居久根の保全や再生については、仙台市も積極的に調査検討を行っています。
仙台市建設局百年の杜推進課の早坂さんは、仙台市が提案する「再生居久根モデルプラン」を紹介しました。居久根再生への導入がしやすいように、敷地の規模によって現代風にアレンジされたプランです。

こちらの仙台市のホームページより、ダウンロードすることができます。


「これまでの居久根は主に個人が維持管理するものでした。しかし、『みんなの居久根プロジェクト』では、個人と公共を合わせた、全てのスペースを含めて検討しています」

都市デザインワークスの岡井健さんは、プロジェクトの活動によって作られた「新しい居久根」のイメージについて解説しました。

「個人所有のスペースでは、“にわ”、“むかえ”、“かこい”、など空間を『分節』して考えます。また地域に開かれた新たな入り口として、『居久根ひろば』などのスペースも考えています」


参加者はそれぞれの説明を聞きながら、自分の感想やアイデアを次々と付箋に書き出していきました。

「なるほど、へぇー」と感じたことは「」、「大切だ、重要だ」と感じたことは「」、「分からないこと、疑問点」は「」のカードに記します。




参加者の皆さんは、各々のカードについて話し合いながら、グループごとに分類し、張り出していきました。



最後に、まとめられた「これからの居久根」が各グループから発表されました。


・「まずは、花でもいい、小さい緑から。みんなで育てていく。そういった活動が、10年、20年と続いていけば、結果的に居久根になっていくのではないか」

・「最初から居久根ではなく、まずは身の回りの緑を増やしてゆく。そういうイメージでプロジェクトを進めれば、地元の人も、外部の人も、関わりやすいのではないか」


・「昔の『結(ゆい)』に基いて、『みんなで育てていく』。そうやって、現代のコミュニティガーデンなどに学びながら、作っていけばいいのでは」

・「デザイン重視の『新しさ』、ではなく、『歴史を踏まえた居久根』があるべきでは」

・「個人ではなく、地域全体で居久根を管理して、居久根の恩恵を受けて生きていく。それを地域の皆が意識する事が大切なのでは」


・「人口が減少してきているので、外に住む人も受け入れ、居久根のある南蒲生地区を、第二の故郷にしてもらう。そうやって作っていけないか」

・「『居久根で遊んでみたいね』という話に対して、居久根の所有者の方から『どうぞ遊びに来て、代わりにちょっとした木の手入れでもしていただければ』という話があった。お手伝いと交換で、参加者が『遊ばせてもらう』。そのようなお金を介在しない、『活動の交換システム』があるといい」


「いろんな地域の人たちで話しができることは、素晴らしいですね」
廣瀬俊介さんは今回のワークショップの印象をそう語りました。

「『うちの方ではこうだけど』というように、互いを比較することで、触発される。その話を地元に持ち帰ることもできます。
続けていければ、これからいろんなことができるでしょう」


都市デザインワークスでは、このようなワークショップを今後も継続してゆく予定です。

榊原さんは言います。
「今回のワークショップでは、皆さんからさまざまな意見をいただくことができました。私たちの方で全体を整理して、次回のワークにつなげていきたいと思っています」

次回のワークショップの開催は9月5日(金)18:30より、
仙台市市民活動サポートセンターを会場に開かれる予定です
(どなたでも参加が可能ですので、詳細は下記にお問い合わせください)

都市デザインワークス
http://www.udworks.net/news

秋には現地で実践する活動も予定しているとのこと。

少しずつ成長する居久根の実生は、仙台平野にどのような森を創るのでしょうか。
ココロプレスでは、これからもその新しい居久根の姿をご紹介していきます。

(取材日 平成26年7月11日)