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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2014年6月23日月曜日

2014年6月23日月曜日7:00
ココロデスクです。
生まれる前から、「ホヤ」が大好物でした。
(本当です。そのわけは最後に説明します)


ホヤ(海鞘、老海鼠)は脊索動物門 尾索動物亜門 ホヤ綱 に属する海産動物の総称。
(Wikipediaより)

こんな姿ですが、生物学的には貝類やイカ・タコたちよりも魚類や哺乳類など脊椎動物に近いのだそうです。

日本で食用にされるのはマボヤで、宮城県、とりわけ牡鹿半島の特産です。

6月1日、その牡鹿半島東岸の鮫浦湾に面した石巻市寄磯浜で、「金華ほや・帆立復興感謝祭」が開かれました。
主催したのは、宮城県漁協寄磯前網支所寄磯ほや養殖部会(部会員数20人)です。


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部会長の遠藤正さんにお聞きしました。

「ホヤの養殖には3年かかります。
その間、ボランティア団体や企業の皆さんからたくさんのご支援をいただきました」

震災後はじめての出荷がかなった今、「支援してくださった方々への感謝をこめて試食会を開こう」というのが、話の発端だったそうです。
どうせなら、せっかくの機会なので寄磯のホヤを大々的にPRしようと、今日の「金華ほや・帆立復興感謝祭」の開催に至ったそうです。

「宮城県のホヤの養殖は日本一、いや世界一と言ってもいい。
県内でもこの鮫浦湾での生産量がダントツで、そのうち半分が寄磯でした」

それが、津波で漁船や養殖施設は壊滅。
1年で水揚げができるカキやホタテと違って、ホヤの養殖には種付けから水揚げまで3年もかかってしまうそうです。

沖合の養殖棚から採ってきたホヤを水揚げします。
この日は合計7トンでした。

水揚げしたホヤは、いけすに

「その間、ある人は他人の船に雇われ、ある人は陸に上がって別の仕事に就き、生活を繋いできました。そもそも、ホヤの『種』を買うにも100万円単位の資金が必要なんです。今残っている部会員は、それぞれが語りつくせないほどの苦労を忍んできたはずです」

震災前は500人ほどいた浜の住民も、今では300人弱に減ってしまったそうです。

「それでも、今日はこんなに多くの人たちに来場していただいて、びっくりです。
建設中の漁港施設は、平成28年度には完工する予定。震災前にはなかったこのようなイベントも実現しました。これを弾みに、養殖を軌道に乗せていきたいですね」


試食会場ご担当のお母さんたち。
左から渡辺誠子さん、遠藤香苗さん、遠藤みゆきさん、渡辺洋美さん。
「寄磯には、渡辺と遠藤しかいないのよ(笑)」

「刺身の最初の一口は、醤油をつけずにぜひそのままでどうぞ」と遠藤香苗さん。
海の滋味をそのままいただいたような味わいです。
ほのかな甘さもありました。
車の運転さえなければなぁ・・・(ゴクリ)

蒸しホヤも味わい深かったです。
作り方も教わったので、いつかチャレンジします


9時半に販売開始の午前の部では、8時には行列ができたそうです。
石巻中心部の立町会場でも直売しましたが、そちらもたちまち完売だったそうです。
私は午後の部に並んで、なんとか購入できました。

10個500円というあまりの安さに目がくらみ、30個と大人買い(笑)
帰りに念のため石巻市内のスーパーを覗いてみたら、なんと1個158円もしました!
この柔らかい殻の中に、みずみずしいオレンジ色の身があります。
ホタテも13枚1000円(箱代込)と、格安で新鮮でした。

ホタテ焼きは1枚50円!
大粒なので、2枚でも大満足。

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会場を歩いていると、ひときわ目立つ女性が。


恐る恐る尋ねてみると、やはりホヤをイメージした帽子。手作りだそうです。
なんで、また?

女性は、東京在住のイラストレーター、浜村ゆうさん。
知人の紹介で出会った「一般社団法人海友支援隊」からの依頼で、寄磯復興のためにホタテ一家とホヤ一家のキャラクターロゴを制作してくれました。
以来、寄磯とホヤの熱烈なファンです。



一般社団法人海友支援隊は震災から3カ月後の2011年6月に結成されました(7月に法人化)。
以来、「三陸石巻金華ほや・帆立復興支援プロジェクト」に取り組んでいます。

代表理事の稲井龍弥さんは、
「寄磯のホヤやホタテの養殖を見守ってきました。これまでは支援でしたが、ホヤの水揚げが再開した今、生産者の皆さんの自立を応援することに活動を切り替えていきます」
と語ります。
そのために近々、通販サイトを立ち上げる計画だそうです。

浜村ゆうさんと、一般社団法人海友支援隊の代表理事・稲井龍弥さん

一般社団法人 海友支援隊
http://www.kinka-hoya.com/


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会場ではステージイベントも行われました。

仙台市秋保の「民族歌舞団ほうねん座」。
活動初期の50年ほど前に、民謡を採収するためにこの寄磯にも通ったそうです

石巻焼きそばの歌を歌う、ご当地アイドル「巻っこ」

浜に伝わる獅子舞も、特別に披露

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復興感謝祭の会場の隣にある水産加工会社、マルキ遠藤商店。
店先にはパステルカラーが基調の販売ブースが出ていて、女子学生風の人たちが懸命に何かをPRしていました。
なにやら、漁港らしからぬ雰囲気です。

「どうぞ、召し上がってください」

試食をすすめられたのは、ワカメ。
ん? 感じたことのない歯ごたえ。香りも鮮烈。
そうか、採れたてだからか。さすが、産地は違うなぁ。
・・・・・・、いやいや待てよ、今年のワカメの水揚げはとっくに終わっていて、これは加工品のはず。


不思議そうにしていると、真っ黒に日焼けしたお父さんが説明してくれました。マルキ遠藤商店の代表、遠藤仁志さんです。

「ウチでは、寄磯伝統のしぼり製法で、ワカメ本来のシャキシャキした食感と、ふわりと漂う磯の香りを守っています。
市販されている塩蔵ワカメの大半は加工の際に塩分や水分を加えすぎるため、ワカメ本来の食感や風味が損なわれてしまいます。
ウチの場合は水増ししないので、その分、出来上がりの量が少なくなってしまいます。
手間も掛かって割には合わないけれど、寄磯のワカメの本当の味を知ってもらいたくて、こだわり続けてきました」


「寄磯のこだわりのワカメを、もっと知ってもらいたい」
震災でボロボロになったふるさとのために立ち上がったのは、お嬢さんの遠藤裕子さんです。

東京で大学生活を送っていた時に震災が発生。
「ふるさとで何か役に立ちたい」と一念発起して、デザインを学ぶために武蔵野美術大学に再入学しました。
「せっかく品質が良いのだから、多くの人の目に留まれば、きっと売れるはず。そのためには、デザインをはじめ”売り方”を変えなければ」。

基礎デザイン学科の宮島慎吾教授の門を叩いたところ、「ビジネスの実践の中でデザインを試すことができる、絶好の機会」と賛同してもらえました。
そして、宮島先生の指導のもと、学生有志のデザインチームと共同で水産食品の商品開発に着手。
この復興感謝祭の日が、新商品のお披露目だったのです。

新しく立ち上げたブランドは、「よりいっそうおいしく YORIISO」

地名の寄磯(よりいそ)と「よりいっそう」をかけたネーミングです。


「よりいっそうおいしく YORIISO」。
わかめ、こんぶ、まつも、ふのり、ひじきの5種類です

商品は、わかめ、こんぶ、まつも、ふのり、ひじきの5種類。
パッケージは、海産物には見えない、おしゃれなパステルカラーです。
まるで、ダイエットや美容関連商品のようで、女性にウケそうですね。

YORIISOプロジェクトの皆さん。
中央のお父さんがマルキ遠藤商店代表の遠藤仁志さん。その向かって左が裕子さん。
右端はお母さんで、左端が武蔵野美術大学基礎デザイン学科の宮島慎吾教授です。

6月末にはオンラインショップも開設して、インターネット通販にも取り組むそうです。

YORIISO ブランドサイト
http://yoriiso.com/


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帰宅するなり、ホヤ30個とホタテ13枚をせっせと殻むき。
不器用な私ですが、途中からだんだんと手際が良くなったような気がします。

ホヤは刺身と酢のものでいただきました。
刺身と言っても、そのままの味がすばらしく、醤油をつけるのがもったいないくらいでした。

ホタテは、貝柱はもちろん「貝ひも」も刺身に。
それと、殻ごと電子レンジでバター焼き。

その貝柱の甘いこと甘いこと。

ホタテのバター焼き、貝柱の刺身(左奥)、ホヤ。
せっかくなので、盛り付けも豪快に

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さて、冒頭でお話した、「私は、生まれる前からホヤが大好物だった理由」とは。

私は隣の山形県の生まれですが、母は宮城県出身。
私がお腹にいた頃、つわりがひどかったそうです。
その時「ホヤの酢の物が食べたい!」と駄々をこねたものの、当時の山形ではホヤなんてどこにも売っていませんでした。
それどころか、魚屋さんでさえも「何それ?」。

父はやむなく、仙山線、仙石線と汽車を乗り継いで、塩竈の市場まで行って買って来たのだそうです。

母がそのホヤを酢の物にして食べたところ、つわりはたちどころに治まったそうです。
きっと、おなかの中で私がリクエストしたのでしょう。
ずいぶん昔のことなので、もう覚えていませんが(笑)


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最後に、実験してみたら予想以上においしかった、おすすめレシピをご紹介しましょう。
冷凍しておいたホヤを取り出して手早くつくった、休日の一品。
ホヤのパスタです。


ホヤを凍ったまま細切りにして、熱々でアルデンテのパスタにキュウリと一緒に載せただけ。
塩もコショーも一切使っていません。
解凍していくにつれて、ホヤが遠い海の滋味をゆっくりとパスタに染み込ませていきました。

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通販は下記でも取り扱っています。

株式会社マルワ興産
〒986-2404 石巻市寄磯浜清水1-2
TEL 0225-48-2409
FAX 0225-98-7613
maruwakousan@hotmail.co.jp


(取材日 平成26年6月1日)