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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2014年6月26日木曜日

2014年6月26日木曜日19:31
キトラ古墳(奈良県明日香村)壁画 「白虎」の陶板
ザーリャです
現在、多賀城市にある宮城県の施設、東北歴史博物館で「発掘された日本列島展」の20周年を記念し、展示面積・展示遺跡・展示点数ともに過去最大規模となる「日本発掘 -発掘された日本列島2014-」が開催されています。

「日本発掘 -発掘された日本列島2014-」
東北歴史博物館HP  :  http://www.thm.pref.miyagi.jp/


前編では、開催の概要をご紹介しました。

国内過去最大規模となる「日本発掘 -発掘された日本列島2014-」開催中[前編](多賀城市)
2014年6月17日火曜日
http://kokoropress.blogspot.jp/2014/06/2014.html

「今回の『日本発掘』展は過去20年間に開かれた『発掘された日本列島』展のダイジェストです。その中でも、特に重要な発掘品を集めた、いわば『グランプリ大会』のような展示会です。博物館で仕事をしている私たちも、なかなか見ることができないものばかりなんですよ」
 「文化財の持つ魅力を、ぜひ肌で感じてください」
そう語る菊地逸夫さん
特別展の会場を案内してくださったのが、東北歴史博物館の上席主任研究員、菊地逸夫(きくち いつお)さんです。
菊地さんは、今回の「日本発掘」展の東北歴史博物館での展示企画を担当され、長い時間をかけて文化庁との準備を進めてきました。

一歩特別展の会場に入って、息をのみました。
15,000年を経て今も輝く黒曜石の石器や、祭祀の場さながらに祈りを捧げる埴輪の数々、縄文の炎そのものの火焔型土器・・・。
新潟県野首遺跡から出土した火焔型土器

今城塚古墳出土の埴輪。祭祀を行った区画から、たくさんの埴輪が発見されました

貴重な歴史資料であるという以前に、それが「もの」として放つ造形の美しさや迫力は、見る者の心を捉えて離しません。

今城塚古墳(いましろづかこふん:大阪府高槻市)の埴輪群は、ケースに入れない露出状態で展示されています。手が届きそうな距離にある埴輪と見学者を隔てるものは、何もありません。耳を澄ますと、祭祀を執り行う埴輪の息遣いまでが感じられそうです。
今城塚古墳 巫女形埴輪
巫女の隊列の先頭に立つ女性で、後には捧げ物を持つ巫女達が続きます
「今城塚古墳は継体天皇(けいたいてんのう)の陵墓だと言われる古墳です。これらの埴輪は、将来的には重要文化財などの指定を受けることが確実な、きわめて貴重な出土資料です」

その迫力に圧倒されている私に、菊地さんは言いました。

「被災地の皆さんに優れた文化財を間近に感じていただくために、見学する方に『近い』展示になっています。陵墓と言われる古墳からの出土品を、これだけ近くで見ることができるのも、今回が最後でしょう」

特別展に向けて、展示資料が次々と東北歴史博物館に搬入されました

厳重に梱包された文化財の数々。展示総数は950点に及びます
毎年、文化庁が主催し、全国の貴重な発掘成果を選んで紹介する「発掘された日本列島展」。
第1回開催以来20年間、東京で開催した後に全国を巡回するのが通例でした。今回の東北歴史博物館での開会は、東京以外の土地での開会という、「列島展」史上初の試みとなりました。ここ宮城県を皮切りに、一年をかけて東京、大阪、長野、福岡の順で全国を巡回する形となります。

「今回の20周年記念の特別展を復興の途上である東北から始めることには、実は大きな願いが込められています。『文化力』を復興の原動力にしていただきたいという、文化庁や私たちの願いです。」
開会式には青柳正規文化庁長官も出席し、復興への願いを語りました
5月31日に行われた東北歴史博物館での特別展の開会式には、青柳正規(あおやぎ まさのり)文化庁長官もみずから出席し、20周年記念の特別展を被災地からスタートさせる意義をお話されました。

それらの思いを象徴する展示があります。

第三部「復興のための文化力-東日本大震災の復興と埋蔵文化財保護-」
被災地では今、迅速な復興を実現するために、復興事業と埋蔵文化財保護の両立が慎重に検討されながら発掘調査が行われています。その結果、被災地の豊かな歴史を示すさまざまな成果も見つかっています。
岩手・宮城・福島の7遺跡の調査成果を展示される特別展の「第3部」
「忘れてはならないのは、これらの成果の陰に、派遣職員の皆さんの力があるということです。全国から派遣された埋蔵文化財の専門職員のみなさんが、被災地の現場で、地元の方々とともに寝起きしながら復興調査に取り組んでいます。そういった皆さんの熱意が、このような成果に結びついているのです」
震災後、延べ80人の発掘担当者が全国から宮城県へ派遣されました
菊地さんも、1995年の阪神淡路大震災の翌年から半年間、宮城県の埋蔵文化財専門職員として兵庫県に派遣されていた経験があります。

「その時は、災害公営住宅を一刻も早く完成させるというのが大命題でした。当時の私も迅速な調査を一番に心がけていたのを憶えています」

当時を思い出しながら、菊地さんはそう語りました。
時間ができると、菊地さんは今でも関西に向かいます。派遣先の皆さんとは今でも親交があり、兵庫県を第二の故郷のように感じているそうです。
宮城県の発掘調査を紹介する「地域展」も開催されています
「今回の復興にともなう発掘調査で興味深いのは、『震災による発掘調査』で『過去の震災の痕跡』が次々と見つかっていることです」

菊地さんはそう語ります。

「地域展 復興と創造のために―宮城の復興 発掘調査―」

宮城県での調査成果が展示されている会場です。
会場の正面ですぐ目に飛び込んできたのが、地層の展示でした。
特殊な樹脂を塗ってはぎ取った地層の標本。
巨大津波によって運ばれた砂が堆積しています
「岩沼市の海岸線から1.2キロの距離にある高大瀬遺跡(たかおおせいせき)では貞観地震(西暦869)と慶長奥州地震津波(西暦1611)の津波の痕跡が見つかり、仙台市の海岸線から4キロの荒井南遺跡(あらいみなみいせき)・沓形遺跡(くつかたいせき)では弥生時代の大津波の痕跡が発見されています」

これらの痕跡を見る限り、今回の東日本大震災による津波も、決して「未曾有」(みぞう)の災害ではなかったことがわかります。

弥生時代や平安時代、そして江戸時代の先人たちも、それを乗り越えて現代につながる復興を遂げているのです。

多くの子どもたちが見学に訪れていました

今回の展示会では、『文化財は国民の共有財産である』という考えのもとで、写真撮影も自由に行えます(ストロボ撮影は禁止)。また、チケットがあれば、その日は何度でも再入場が可能。カメラを片手に、休日の一日をゆっくりと東北歴史博物館で過ごせるのも大きな魅力です。

「歴史や文化財に宿る力は、復興のための心の糧にもなるものです。ぜひ会場へ来ていただいて、『文化力』を肌で感じてください。私も特別展の会場でお待ちしています。『ココロプレスで見た』とお声掛けいただければ、見どころのご案内もしますよ!

案内の最後に、菊地さんはそう言って微笑みました。

特別展の会場にて、解説員さんも一緒に

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(取材を終えて)
私も博物館を訪れるのが好きですが、今回の特別展は、「とにかくすごい!」というのが感想です。その魅力のすべてをブログでお伝えするのは不可能です。みなさんもぜひ、博物館を訪れ、実物資料の前に立って、「五感で感じる」ことを強くお勧めします。
今は博物館の周辺の緑も美しく、間もなく多賀城では「多賀城跡 あやめ祭り」(6月24日~7月6日)も始まります。次の休日には、東北歴史博物館を訪れてはいかがでしょうか。
菊地逸夫さんにも、ひょっとしたら会えるかもしれません。
緑が美しい東北歴史博物館

(取材日 平成26年6月10日)