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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2014年3月7日金曜日

2014年3月7日金曜日23:34
こんにちはエムです。

平成26年2月1日、「みやぎNPOプラザ」で開催された、井上きみどりさんの基調講演
「わたしが震災まんがをかいたわけ」を取材させていただきました。

これは先日ご紹介した「月刊杜の伝言板ゆるる」創刊200号記念イベントの中で行われた基調講演です。

2014年2月25日火曜日
「月刊杜の伝言板ゆるる」200号突破(仙台市宮城野区)
井上きみどり さん

井上きみどりさんは仙台市在住の漫画家であり、コラムニストとしても活躍している方です。
現在、私たち宮城県民にとってなじみ深い新聞、河北新報の夕刊でもイラストコラムを連載中です。

作品は東日本大震災を取材した「わたしたちの震災物語」の他に、「オンナの病気をお話ししましょ。」「マンガでわかるコドモの病気」(すべて集英社刊)「ふくしまノート」(竹書房)などがあります。
それらは「体験&取材コミック」と呼ばれ、きみどりさんが実際に取材して描いた確かな内容のコミック作品です。
初期の作品(「YOU」で11年連載していた育児マンガ)「子供なんか大キライ!」は累計100万部を越えるヒットを記録しています。

基調講演ではまず、きみどりさんがどうやってマンガを描いているのか、私たちはあまり知らない漫画家の作品作りを、順を追って説明してくださいました。

「取材前の下調べは時間をかけて入念にします」
スクリーンを使った分かり易い基調講演でした

視覚的な媒体であるマンガは、長い文章だけで書かれたものと比べると、より場面や感情が理解できるという利点がありますが、その労力に比べると、短い時間で読み終わってしまうという、作る側の苦労もあります。

特にきみどりさんが描いている「体験&取材コミック」が完成するまでには、相当の労力と時間がかかっているということでした。
15ページのマンガを完成させるまでには、取材から完成まで時間にして平均で約120時間。(その他、下調べや移動時間なども相当かかっているはずです)
1日8時間労働に換算すると15日間という長さです。それをパラパラっと読んでしまうと何分もかかりませんが、それだけの時間と労力がかけられていることは忘れてはならないと思いました。

〈ネーム〉と呼ばれる下書き。ここで規定のページ数に内容を絞る。
この作業が一番苦しいということでした
ネームを元に描かれた実際の原画

そんな労力が詰まった「わたしたちの震災物語」ですが、きみどりさんはなぜこのような取材形式のマンガを描こうと思ったのでしょうか。

「震災直後、いろんな支援団体やNPOが被災地に入ってくれているのを見て、日本にはこんなに支援団体があるんだ。すごいな。と思ったのがきっかけでした。
この支援団体の事を、若い世代に伝えるすべはないのかと考えた時、自分の描いている『体験&取材コミック』つまり、取材をしてマンガを描くという方法が有効ではないかと思ったのです」

震災3週間後、きみどりさんは、初めは支援団体だけを取り上げて描こうと思って取材をスタートしました。しかし取材を続けていくうちに、被災者の話も取り上げないのはかえっておかしいと気付き、被災体験も含めた話にし、それを一冊にまとめることにしました。

また、きみどりさんは各地で講演をする機会も多く、そのたびに「被災地は今どうなっているの?」「本当のところはどうなの?」と聞かれるそうです。
テレビや新聞などで情報は伝わっているはずなのに、質問者が知りたいこととは何なのかと考えた時、それは被災地の人の “気持ち” や “感情” なのだと気付いたそうです。
知りたいと思っている人たちに被災地の現状を分かってもらうには、マンガはまさに適した表現方法です。

こうしてできあがった「わたしたちの震災物語」は、他の媒体では伝えきれない当事者の感情や思いなど、マンガならではの分かり易さで描かれています。

平成23年11月18日発売  A5判  176ページ
定価:830円(税込み/平成26年2月現在)

それを読んだ被災した方からは、「ようやく気持ちの整理がついた」
県外の方からは「やっと被災した人の気持ちが分かった」などの感想が寄せられています。

しかしきみどりさんは、特に関東から西の地域では、震災当時も現在も、被災地の現状はあまり知られていないと感じることが多いそうです。

平成24年の秋頃行われた震災関連のチャリティーイベントに参加した時のことでした。ある女子中学生からこんな質問をされました。
「プレハブはまだあるんですか?」
仮設住宅をプレハブと表現されたこと、そして、まだあるんですか?と聞かれたこと。
2重の意味でショックを受けたきみどりさんは、情報として伝わっているはずなのに伝わっていないし、何を知らないかも分からない、漠然とした知らなさがある現実を味わいました。

「伝わっているようで伝わっていない」は「知っているようで知らない」に通じること。
きみどりさんはそこを明確にすることに欲求を感じると言います。

「私のできる事は取材したみなさんの思いを描いて伝えること。
世の中には多くの人が知らない、光が当たっていないところがありますが、そこに私がどれだけ光を当てられるのか、それを『表に出したい』と思ってやっています。
それに人はみんなそう思うものじゃないですか? 
私はそれを体を使ってやってるだけなんです」

また、「伝えたい」という欲求の対象を国際支援にも持ったきみどりさんは、平成25年にはアフリカのザンビアを訪れ、すでに取材活動に入っています。
他にも子供の問題にも取り組み、現在は教育団体で理事をしているとのこと。

“正義感” や “使命感” を強く持ち、その気持ちに突き動かされているのかな。と、勝手に思って質問したところ、返って来たのは「そういったものはありません」というあっさりした答えでした。
どうしてこのような取材形式のマンガを描いているのか、自分でもよく分かっていないというきみどりさん。
しかし淡々としながらも、動きはとても軽やかで、その視線は世の中の弱い部分に真直ぐに向けられていました。

今後、もし漫画家を辞めたらボランティアをすると言うきみどりさん

講演の後、ココロプレスの取材に応えてくださった内容も含めて紹介させていただきました。

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公式ブログ「ハイ、井上きみどりです!」 
http://hi-kimidori.cocolog-nifty.com/kimy/

◇井上きみどりさんのコミックは上記の公式ブログから、または Amazon でも購入できます。

(取材日 平成26年2月1日)