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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2014年3月22日土曜日

2014年3月22日土曜日19:27
YUUです。

関東甲信より東北地方の太平洋沿岸まで記録的なを大雪もたらした2月8日、9日。

一夜明けてもちょっと記憶にないほど、仙台市の幹線道路にさえ積雪が残る2月10日、私は白石市を訪れました。

蔵王連峰の麓、白石の地で、東日本大震災で集落が壊滅してしまった名取市北釜地区の農業者の方々が再起を図っているという話を取材するためです。


白石市福岡八宮の株式会社カキヤ敷地内にある
農業生産法人、有限会社蔵王グリーンファームの集出荷貯蔵施設

訪問先は、白石市福岡にある農業生産法人、有限会社蔵王グリーンファーム(以下・蔵王グリーンファーム)です。

この場所は、今年で創業45年、長年、白石市で食品加工業を営んできた株式会社カキヤ(以下・カキヤ)の本社工場敷地内にあります。


創業45年、白石市福岡に本社を構える株式会社カキヤ
ノリの佃煮、鮭フレーク、刺身用のつま、カット野菜など、多品目に渡る
食品の加工、販売を行っています。商品数は200種類ほどもあるそうです

蔵王グリーンファームは1995年、カキヤの農産物の生産、販売を目的とするグループ会社として創設されました。

「創業以来、当社は水産加工品の製造、販売を主業務として行ってきましたが、1986年より第2工場を開設して刺身用のツマ、おでん用大根の製造と販売を開始しました。水産物だけではなく、農産物の食品加工も手掛けるようになり、95年にグループ会社として蔵王グリーンファームを設立し、
カット野菜の製造、販売を行うようになったんです」

こう説明してくれたのは、有限会社蔵王グリーンファーム取締役で株式会社カキヤ専務取締役を兼務する菊地徹さんです。

この蔵王グリーンファームは東日本大震災の起こった2011年に、事業内容を大きく転換し、組織改編を行いました。

名取市北釜地区の被災農家の方々5名を役員として受け入れ、新しい体制の農業生産法人となったのです。

大津波に集落ごと飲み込まれてしまった北釜。
その地でチンゲンサイの生産を初めて行ったという桜井久一郎さんとカキヤの菊地英明会長は旧知の間柄で、営農再開のめどが立たない桜井さんに対し、菊地会長が「白石市で再起を図らないか」と声を掛けたのだといいます。

「2人は30年来の付き合いだったそうです。カキヤが刺身用のツマの食品加工を手掛けるようになった時期が知り合うきっかけだったと聞いています。名取市内で避難所生活を送る桜井さんに対し、何かできることはないかと胸を痛めていた会長が白石でのチンゲンサイ栽培を提案したんです」

震災の大津波によってまばらになった松林だけが残る名取市北釜地区

名取市東部の沿岸地区に位置し、仙台空港と太平洋に面した松林の間にある世帯数109戸の北釜地区は、東日本大震災によって、そのほとんどの家々が消滅しました。

この地域は古くから、砂質土壌の条件を生かし、野菜やメロンなどの栽培が盛んでした。チンゲンサイ、コマツナに関しては宮城県内最大の産地で、チンゲンサイは仙台市場では約8割のシェアを占めていました。こうした収穫後に傷みやすい軟弱野菜を栽培するためには、県内最大の消費地仙台市にほど近い地域性も有利だったといいます。

北釜地区の津波被害エリアは、地区の中心部から宮城農業高校周辺までの広範な範囲に及びます。名取市の復興計画で居住禁止区域に指定され、地元住民の方々も内陸部の美田園地区への集団移転を決めました。
一方で、震災直後より、桜井さんをはじめとする被災農家のほとんどは、代替地の確保も困難な状況が続いていました。

北釜地区内にあったビニールハウス約1000棟は全て破壊されたうえ、地区が居住禁止区域に指定されたことで、同地区で震災以前と同様に営農を再開することは不可能となりました。
桜井さん自身、菊地会長の提案がなければ、農業を続けることをあきらめようかと思ったこともあったそうです。

「2011年6月から、桜井さん一家親子3人が名取市内の仮設住宅より車で1時間かけて白石市に通い、土を起こしを始め、7月よりチンゲンサイの生産を開始しました」

白石の地で力強く育ったチンゲンサイ。葉に厚みがあり、味も濃厚だそうです
(画像提供・蔵王グリーンファーム)

当初は、桜井さん一家が代替地となる白石市で小規模に農業再開する計画だったといいます。

「桜井さんが北釜地区の農業者の中心的存在だったことで、他にも一緒に『白石で再起を図りたい』という被災農家の方々が一緒に蔵王グリーンファームに籍を置き、白石市で農業に従事することになりました」

カキヤ単独の支援、意向だけでは白石市での大規模な野菜栽培の再開は難しかったかもしれません。
しかし、白石市が農地の貸借等蔵王グリーンファームと地元との調整を行い、東日本大震災農業生産対策交付金の活用等を支援。宮城県農業生産復旧緊急対策事業補助金を活用するなどして、現在、出荷貯蔵施設も備えたパイプハウス122棟の体制となりました。

「蔵王グリーンファームでは農業生産法人として、20人の農業者が従業員として在籍しています。うち3名は、新規就農者です」

菊地取締役によると、新規就農となった新しい従業員たちは、農業の現状に対する問題意識も非常に高く、今後、蔵王グリーンファームの生産体制を強化していくとともに、更に多くの被災者や新規就農者を受け入れていきたい考えだといいます。

農業生産法人・有限会社 蔵王グリーンファームの従業員の皆さん
(画像提供・蔵王グリーンファーム)

名取市の沿岸部より蔵王連峰に抱かれた白石の地に所を変え栽培されるチンゲンサイ。

これまでの歩みは、決して順風満帆とは言えるものではなかったと菊地取締役は振り返ります。

「まず、沿岸部と山沿いの土壌が違うため、栽培管理に苦労しました。そして、何よりもこたえたのは、2012年4月の爆弾低気圧の襲来でした」

2011年7月より再開した野菜作り。約2カ月後にはチンゲンサイを初出荷。翌年の3月末には最初2棟から始まったパイプハウス栽培が122棟まで増えた矢先のことだったといいます。

「春の嵐の到来は、白石での再起が軌道に乗りかけて間もない段階でのことでした」

2012年4月3日から4日にかけて、白石市では最大瞬間風速33.2mを記録したといいます。ビニールハウス27棟が全半壊。作物も含めた被害総額は数千万円単位の甚大な額に上りました。

「ハウス栽培の規模を拡大したばかりの時の大きな自然災害ですからこたえました。2011年度はあくまで栽培、出荷を開始したという段階で、2012度からはある程度単年での採算をきちんと考えていけるだろうという見込みがすっかり崩れてしまいました」

宮城の農業に元気を‼とメッセージを残してくれた
有限会社 蔵王グリーンファーム 菊池徹取締役

暴風被害は蔵王グリーンファームにとって大きな痛手となりましたが、自己資本により速やかな復旧作業に着手。課題は山積しているものの、翌2013年度には、現在の体制となってから初めての単年度黒字化を実現したといいます。

「震災以前、名取市北釜産のチンゲンサイは、仙台市場で圧倒的なシェアを占めていました。ところが、震災被害で出荷が途絶えたのを機に関東圏などの農家に仕入れ先を変更する大型店などが相次ぎました。現在、白石で以前と同じように良質のチンゲンサイを大量に出荷できるようになっても、すぐ元通りというわけにはなかなかいきません」

大手流通、小売り店からすれば、地元宮城の被災農家を支援したいという気持ちがあっても、チンゲンサイをはじめ、震災被害の影響で入荷しない産品をいつまでもそのまま放置したままにはいきません。新しい仕入れ先ルートを一端確保すれば、被災農家が代替地で農業を再開したからといって、再び即仕入れ先を変更することができないのは無理からぬことです。

「状況を嘆いてばかりいても始まりませんから、栽培する野菜の品種にある程度多様性を持たせたり、農業生産法人という特性を生かして、新たな販路開拓、また、グループ会社カキヤの営業ルートを活用した出荷先の確保、付加価値を持たせた加工品の開発を目指すなどして対応していく考えです」

菊地取締役は、蔵王グリーンファームにとって販路開拓、拡大は今後を見据えたうえで確かに大きな課題だが、まずは、生産体制の強化、安定を図ることこそが重要だと話します。

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きっかけは1人の企業経営者と農業者の個人的なつながりでした。

2人の太い絆に多くの人々が手を携え、輪を広げたことで、復興を推進する大きな試み、事業活動が進捗しています。

桜井さんをはじめ、白石で再起を図るベテラン農業者の方々は、新規就農者の若手社員たちに「できる限りノウハウを伝えたい」と話しているといいます。

蔵王グリーンファームの事業活動の歩みは、被災農家の再起、震災復興という側面にとどまらず、新時代の農業振興を考えるうえでも、大きな挑戦といえると思いました。


有限会社 蔵王グリーンファーム
http://kakiya-k.com/zao%20green.html

(取材日 平成26年2月10日、27日)