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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2014年1月22日水曜日

2014年1月22日水曜日19:54

 YUUです。




国道45号沿い、塩竈市内を石巻方面に向かうと、カキの浜焼き食べ放題でも知られる「塩竈かき小屋」の看板が見えます。



五光食品(株)本社。東日本大震災では1階部分が浸水し、
壁やドアなどは大きくへこみ、流失したそうです

「塩竈かき小屋」を経営するのは、塩竃市新浜町に本社のある五光食品株式会社。

同社は、宮城県の名産である「カキ」と「牛たん」を2本柱とした加工食品を製造販売しています。

本社所在地は、平安時代より歌枕に詠まれ、江戸期に編纂された「伊能図」にも所在が記されている「まがき島」を間近に臨む場所です。

塩釜港に浮かぶ小さな島「まがき島」
古今和歌集をはじめ八代集にも数多く
の歌枕が残されています

海岸沿いより20~50m、標高2m(震災前)の場所に本社工場は立地。

東日本大震災による津波の被害は甚大でした。約70cm沈下した護岸のかさ上げ工事が終了し、現在、同社の関係者は一様に一安心しているといいます。


本社工場1階部分と機械室等は高さにして1~2m浸水し、数多くの商品、機械、資材が泥まみれとなり、廃棄処分となったそうです。

本社から2~300mほどにある直営店舗2店も1階部分は津波に洗われました。


震災前はこのスペースに眼前に「まがき島」を臨める
五光食品(株)直営の食事処「まがき小屋」がありました

震災前は本社工場の隣接地にカキの直売所、まがき島を眺め、美味しいカキが食べられる飲食店がありました。

「津波の直撃を受けて、プレハブの建物は土台だけを残し、20~30mほど移動して傾いておりました」

震災当時をこう振り返ってくれたのは、同社の佐々木和二専務取締役です。

同社の被災は
建物や機械や商品など物品の被害だけではなく、広範囲に及びました。
主力商品である「カキ」の産地が津波により壊滅的な被害を受けたため、仕入れルートが途絶えてしまうという商売上の大きなダメージを受ける結果になったのです。

「震災までは、主に岩手県の三陸沿岸から仕入れていましたが、その方面の産地の復旧はまだまだです」

「そのため、震災直後より、カキの加工品、自社製品の製造を再開するにあたって、新たな仕入れ先ルートを開拓する必要に迫られました。2011年度は北海道産のものを多く仕入れましたが、2012度からは漁場が再開した宮城県産のカキの仕入れルートを開拓しました。2013年度になって、ようやく女川産のカキで仕入れ先を固定できたような状況です」


新凍結技術、電磁波を使用する「定点凍結法」を可能にするハイパーフリーザー。
従来の冷凍時に起こった細胞破壊を抑え込み、食品本来の風味やうま味を損なわない
といいます
食品加工品の製造販売を行う五光食品の主力商品である「カキ」、「牛たん」の加工食品には、原料の品質にこだわるだけではなく、共通する大きな特徴、製法があります。

ハイパーフリーザーによる定点凍結技術を可能にした冷凍加工技術です。

あまり耳慣れない言葉かもしれませんが、定点凍結法とは、食材の水分をコントロールしながら凍結する技術です。電磁波エネルギーを採用する冷凍機「ハイパーフリーザー」が、それを可能にしました。

「従来の冷凍法だと食品の細胞膜が破壊されてしまい、冷凍食品を解凍調理するときに細胞内の養分などが液状になって流失するドリップ現象が起こってしまいます。食材のなかの大切な養分が失われるわけですから、変色や味、香り、食感が損なわれる原因となります」

この技術導入によって、五光食品では、食材の新鮮な風味を閉じ込めたままうま味を損なわない冷凍食品加工を可能にしました。

「ハイパーフリーザーの導入は、当社の二本柱であるカキ、牛たん製品の品質向上には欠かせないことでした。ただし、最新技術を導入した機械だけに価格も高額です。工場内にあるさまざま機械のなかで最も高額で4000万円を超えます」

このハイパーフリーザーの設置場所も津波による浸水はありましたが、際どいところで機械そのものの損壊はなんとか避けられたといいます。

ハイパーフリーザーの下部部分
白地の線がうっすら見えるところまで浸水したそうです

夏場に海水を冷却し、その水によりカキの洗浄を行っていた設備
津波により泥をかぶり、すっかり駄目になってしまったといいます

上の写真は、津波の浸水により駄目になってしまったという、海水を冷却する機械です。

震災以前は、夏場には25℃以上になる海水を10℃前後まで冷却し、その海水により生カキを消毒する設備を備えていました。現在は、本社と別棟の倉庫に放置されたままです。

このように震災による多大な被害を受けた五光食品ですが、先に記したように会社にとって被災による負の影響は、建物や機械の損壊だけにとどまりませんでした。主力商品であるカキの仕入れルートが遮断されたことで、震災のあった2011年度は営業再開後も商品の製造、出荷が思うにまかせなかったといいます。

「事前にはちょっと想像がつかないほどに広域被害があった東日本大震災の影響を身に染みて感じました。私どもだけではなく、取引業者の多くも工場や施設が被災したたため、商品を製造するにも資材が間に合わない事態が頻出しました」

津波被害による産地の被災影響が顕著だったカキの仕入れだけではなく、同社にとってもう一方の主力商品である牛たんの仕入れにも、震災の影響は色濃く出ました。

2013年12月2日に営業を再開した五光食品直営の「塩竃亭」
同社のオリジナル商品が購入できるみやげ処と人気の「浜焼きかき」が食べられる
食事処が併設されています

震災によって強い逆風にさらされた五光食品ですが、会社再建、復興の歩みを着実に歩んでいます。

「できることをひとつずつ、製造、販売する商品の品質維持をまず念頭において、一歩一歩、課題をクリアしてきている現状だと思います」

2013年12月2日には、震災後、長らく営業を停止していた「カキ」と「牛たん」のみやげ・食事処「塩竈亭」の営業を再開しました。

塩竃市内にある同社直営のもう1店舗「塩竃かき小屋」と同様に、人気の「浜焼きカキ」を通年で提供できるといいます。


かき生産者と供に復興するぞと、メッセージを残してくれた
五光食品株式会社・佐々木和二専務取締役

取材を終えて、五光食品株式会社の佐々木和二専務は、かき生産者と供に復興するぞ」とのメッセージを残しました。

自社、自身が震災の大きな被害に直面してきたからこそ、他者を思い、復興は個人、企業いずれも単独のかたちではなし得ないこと、という思いを吐露してくれました。

カキ1つに限っても、生産現場の復興は、漁場が元通りになるだけではなく、各生産者の引き合い、出荷、物流の状況が、震災以前の状態に近づかなければ、復興は道半ばと言わざるを得ません。

生産者、企業いずれの立場でも、互いに歩みを進めてこそ、復興が進捗する。

そんな強い思いを、佐々木さんのメッセージから感じました。


五光食品株式会社
goko-h.com


(取材日 平成25年12月5日)