header

宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

ヘッダー写真説明文

写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2014年1月15日水曜日

2014年1月15日水曜日17:30
YUUです。

先日、久しぶりに冬の動物園に行ってきました。




東北有数の動物園でもある仙台市八木山動物公園(以下・八木山動物公園)です。

現在は、多種多様な非日常を演出するアミューズメントパークが日本全国にありますが、それでも、動物園はちょっと特別な場所ですよね。

微動だにしないだけに逆に迫力あります、ホッキョクグマ
飼育下での繁殖が非常に難しく、冬の繁殖シーズンのみ同居しています
メスには妊娠時に使用する「産室馴らし」をしたりします
これって、もちろん置き物じゃありません。

北極圏最強の種、オスは体長2m以上、体重400kgを超えるホッキョクグマ。

もちろんガラス越しですが、こうした野生動物を間近で観察できる機会は、どんなアトラクションとも違った魅力ある「動物園」ならではの演出です。


生態系の頂点にいたイヌワシも環境破壊により生息数が減少
現在は、国内希少野生動物種に指定されています



猛禽類らしく、高い木の上から下界を見下ろしている鳥もいました。国の天然記念物、イヌワシです。

イヌワシは英語で「ゴールデンイーグル」。
そう、昨年日本一に輝いたプロ野球「東北楽天ゴールデンイーグルス」のチーム名にもなっています。
そればかりか、サッカーJ1[ベガルタ仙台」のチームマークのデザインにもイヌワシが取り入れられています。
それほど宮城県にとって縁の深い鳥です。

野球だけじゃありません
「ベガルタ仙台」のチームマークは
イヌワシの姿をデザインしています

「山の上で4、5時間観察を続けましたが、イヌワシの姿は望遠鏡で何とか姿を認識できるといった具合でした。動物園では、その全貌をしっかりと見届けることができますよ」

こう話してくれたのは、仙台市八木山動物園飼育展示課 衛生係の釜谷大輔係長。

釜谷さんは、獣医でもあり、2012年5月に無事赤ちゃんが生まれた「スマトラトラ」の種別計画管理者でもあります。

出産後のバユ(スマトラトラ)と赤ちゃん。赤ちゃんたちはおっぱいの争奪戦を終えて眠りはじめています
(画像提供・仙台市八木山動物公園)

震災の前、八木山動物公園では希少種であるスマトラトラの繁殖に取り組む計画がありました。
その計画は震災によって一時中断を余儀なくされましたが、その後の関係者の努力と内外の温かい協力によって再開し、成功を収めつつあります。

釜谷さんに振り返っていただきました。

====================

インドネシア原産のスマトラトラは現存しているトラのなかで最も小さい種で、絶滅危惧種としてCR(絶滅寸前)の指定を受けています。

日本国内の動物園には、八木山動物公園で生まれた4頭の子どもを含めても、5園で14頭のスマトラトラしかいません。釜谷さんは、その希少なスマトラトラの繁殖計画を管理する役目を担っているのです。

バユに先立ちアメリカハワイ州のホノルル動物園からやってきたスマトラトラ
オスの「ケアヒ」。ハワイ語で炎を意味するといいます
(画像提供・仙台市八木山動物公園)

2011年4月28日。アメリカハワイ州のホノルル動物園からスマトラトラのオスのケアヒが八木山動物公園にやってきました。

震災後、初めて八木山の地にやってきた動物です。

「2010年12月にメスのリップが亡くなり、一時期、園内にはトラがいない状況でした。トラを入れてほしいという来園者の方々の声と、『スマトラトラ種別調整園』としてぜひ繁殖させて『種の保存』に取り組みたいという職員の希望が届き、海外の動物園が若いオスとメスを貸してくれることになったんです」

実はケアヒは、2011年3月25日に来園することになっていました。

ところが、東日本大震災により輸送ルートは寸断され、八木山動物公園も施設被害のほか、燃料やライフラインが途絶えてしまいました。とても新しい動物(スマトラトラ)を受け入れる状況、態勢ではなくなってしまっていたといいます。

「いったんは、スマトラトラの導入を断念しなければならないのか、と考えたほどでした。しかし、多くの方々の応援とホノルル動物園をはじめとする関係各位の努力によって、無事、当初の予定より1カ月遅れの4月28日にケアヒに対面することができました」

バユが八木山動物公園にやってきた時の様子
スマトラトラ輸送のための立派なコンテナには、
GANBARE SENDAIと記されたトラのイラスト入りパネルが貼られていました
(画像提供・仙台市八木山動物公園)
ケアヒがやってきたおよそ2カ月後には、オランダのバーガーズ動物園からメスのバユが運ばれてきました。

野生動物の繁殖は、一般の方がイメージする以上に難しいといいます。

「まず相性、マッチングの問題があります。園内は野生の状態とは違って限られた空間で、かつ相手も1頭だけです。よほど相性が良くないと、メスが繁殖期(発情期)を迎えても繁殖行動に移らない場合が多いんです」

トラのような大型のネコ科動物はオスとメスの相性が悪いと、繁殖期に同居させたとたん、互いに敵とみなして襲いかかり、闘争に発展するケースすらあるそうです。

さらに、繁殖を成功させるには血統的な問題もあります。

「スマトラトラは、野生下でその数を400頭近くまで減らしています。生物の多様性を維持していくためには、それぞれの個体の遺伝子の多様性を維持していく必要があります。そのために今、世界の動物園が協力し合っています」

世界中の多くの動物園や水族館が所属している世界動物園水族館協会(通称・WAZA)では、2008年5月に絶滅の危機にひんするスマトラトラを世界規模で救うために、国際血統管理計画(通称・GSMP)の種として選定しました。

そうした種の保全に関する世界規模の取り組みの1つが、各地域の動物園の出産の状況などをつき合わせ、移動の計画を立てることなのだそうです。今回のケアヒとバユのように繁殖適齢の若い個体が海外からそれぞれ別に導入されたのも、その成果だといえるでしょう。

出産前のバユ。お腹が大きく膨らんでる様子が分かります
(画像提供・仙台市八木山動物公園)
未曾有の震災後、それぞれ別の国からやってきたケアヒとバユは、偶然か、ともに希望に導かれてやってきた2頭のためか、相性が抜群だったそうです。

バユの発情が認められたのでケアヒと同居させると、動物園スタッフの心配をよそに、2頭は互いに威嚇しあうこともなしに割合スムーズに繁殖行動を始めたそうです。

「2012年度、バユは妊娠し、3頭の子どもを出産しましたが、初産では子どもをうまく育てることができないケースが多いと言われる通り、懸念が現実のこととなってしまいました」

トラの母親は、自然と子育てを覚えるのではなく、最初は、子どもに害を与えることさえあるのだそうです。特に初産の場合は授乳させないことが多く、赤ちゃんに人間の匂いがつくと、すぐに拒絶反応を起こしてしまうといいます。

「実際、1頭は授乳を確認できず、人工哺乳に切り替えました」

残念ながら、2012年に産まれた3頭の赤ちゃんは、釜谷さんをはじめとするスタッフの献身的な対応も空しく、無事、成長することはかないませんでした。

しかし、ケアヒとの相性抜群のバユは、今年も無事に妊娠し、出産しました。

しかも、4頭とも元気な子どもを、です。

トラは5頭までの子どもを産むそうですが、3頭産むことが最も多く、4頭産むこと自体確率が低く、その4頭を無事に産んで、すべてを育てるのは非常に珍しいそうです。


========================================
地震と原発事故で、海外の美術品などの日本への貸し出し中止が相次いでいた時期に八木山動物公園にやってきた2頭のスマトラトラ。

その2頭の頑張りで生命を授かった4頭のトラの子どもたち。

猛獣であっても、いや、猛獣だからこそというべきか、子どものかわいさは格別です。

今春に産まれた4頭は、元気に生育中で、すでに赤ちゃんとは言えない容姿になっていますが、
まだまだ愛くるしく、午前中限定の公開を見にやってくる来園者たちの注目を集めています。

「震災による困難にもかかわらずやってきた2頭の子どもたちが、震災後、初めて動物園を訪れたというような方たちにも笑顔と「いやし」を与えていると思うと、本当にうれしく思います」


後編では、出産時のバユ、無事に一般公開までこぎつけた子どもたちの様子を震災後の動物園の状況を振り返りながら、続けて紹介します。

下記HPにはスマトラトラの案内も載っています。
仙台市八木山動物公園
www.city.sendai.jp/kensetsu/yagiyama/

(取材日 平成25年12月4、6日)