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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2013年9月11日水曜日

2013年9月11日水曜日12:02
YUUです。

夏は節電、節水。省エネの意識が問われる季節です。

とはいえ、エネルギーの無駄使い、環境を考慮したうえでの節約は良いでしょうが、災害や水不足による否応なしの断水、給水制限は多くの人々の日常生活に支障をきたす大きな原因になってしまいます。

3.11の震災で断水が長期化した仙台市太白区の八木山エリアなどでは給水所に行列ができ、地名通り、山全体が宅地化されたエリアなのにガソリン不足で車も使用できず「水汲みに行くのはほんとうにきつかった」と、当時を振り返る年配の方の声が現在でもよく聞かれるほどです。


生活用水が不足すること=暮らしが成り立たないのは、決して大げさな物言いではないでしょう。

災害時や非常時の施設運用、応急給水作業の効率化は、水道行政の災害対策を知るうえで欠かせないポイントです。

震災への備えを知る(前篇)では、仙台市最大の茂庭浄水場の建物、水道管の耐震化への取り組みをレポートしましたが、後編では、まず、浄水場の非常用設備を紹介したいと思います。



茂庭浄水場の非常用送水ポンプ
災害時にはエンジンポンプを発動させて送水する

上の写真は茂庭浄水場に設置された送水ポンプです。

浄水場の敷地内の地下に設置されています。

平常時は稼働していませんが、先の震災の時のように広範囲に被害が生じた場合、普段ならばこの茂庭浄水場からは配水していない八木山地区へも送水し、断水エリアを縮小するためのものです。

「この送水ポンプ設備の新設工事中に東日本大震災が発生し、震災対応に間に合わなかったことは非常に残念です。設備が完成していれば断水が長期化した八木山地区の断水エリアの縮小や、断水期間を短くできたはずです」(仙台市水道局 給水部計画課 西野雅夫主幹)

仙台市の水道水の約25%は宮城県仙南仙塩広域水道から供給されています。宮城県広域水道の水源は七ヶ宿ダム、浄水場は白石市の南部山にあり、県内17市町村が受水しています。

3.11の震災では、宮城県広域水道の送水管に被害が発生し、県内で長期化した断水の一因となりました。

仙台市水道局では、震災対応の検証を重ねたうえで、大きな災害時にも断水が長期化しないように、今後の取り組みを強化していく考えのようです。


西野さんは、次のように説明してくれました。

「まず、施設整備という観点からは、管路を含めた施設の耐震化や、茂庭浄水場に設置した送水ポンプのような非常用設備の整備を進めます。さらに、長期の停電に対応するために、非常用自家発電整備の燃料タンク容量の見直しや、使用燃料の種類を市場での流通量が少なく調達しがたい重油から軽油や灯油などへと変更することなどを検討しています」

また、災害時のダメージから早期に給水を再開させるために有効な水運用機能の強化を図る考えだといいます。

「仙台市の水運用機能は大きく分けて2点あります。ひとつは、ブロック配水システムによる水量や水圧の適正管理です。もう一点は、配水エリアに複数の水系から送水できるようにすることです」

ブロック配水システムは、仙台市のような広域な配水地域を小さな範囲のブロックに分割し、ブロック毎に水量や水圧を測定し、適切な水量と水圧を確保する方式のことです。

ブロック化することで、トラブルの早期発見が容易となるだけではなく、災害時の管路の破損事故による影響の拡大を防ぎ、効果的に復旧工事を進めることができます。

「先の震災のような大きな災害時には、応急給水をしながら、応急復旧を進めることになりますが、
その場合、ブロックが適正な大きさで細分化されていることで、断水エリアを最低限に抑え、早期に復旧ができます」


平成25年4月現在、仙台市内には125カ所の配水計量ブロックがあります。
これを141カ所に再編する予定です。


配水ブロックの適正細分化は、震災以前より、仙台市水道局が計画的に進めてきた水道事業ですが、今後の目標は、泉区の中心街エリアなどの大きなブロックを細分化し、現在の125ブロックを141のブロックに増やすことだそうです。

配水エリアに複数の水系から送水できるようにすることは、非常時に備えるシステム強化としては、配水ブロック化より分かりやすい取り組みです。複数の浄水場から給水を受けられるようにしておくことで、どちらか一方に被害があっても、もう一方の施設が無事であれば、断水が長期化する事態は避けられます。

東日本大震災では、宮城県広域水道の送水管に被害がでましたが、宮城県広域水道受水地域のうち、「南中山、紫山、高森」などのエリアは、福岡浄水場(泉区)からの給水も受けられる「2系統化」が整備されていたため、宮城県広域水道の単独配水エリアに比べれば早期の復旧が図られました。



震災後に茂庭浄水場に設置された注水補給基地
注水補給基地を設けることで、
給水車への水の補給を効率よく行えます


震災後、茂庭浄水場には新たに応急給水作業の効率化を図るための注水補給基地が設けられました。

上の写真の注水栓より、給水車へ直接水を補給することが可能なため、給水作業の効率化、迅速化が図れます。

先に紹介した配水ブロックの適正細分化、単独水系の解消などの事業と比べると何気ない備えのようにも思えますが、応急給水作業の効率化を図ることは、震災などの緊急時には、非常に大切なことです。

西野さんは、震災時の応急給水作業を以下のように振り返ります。

「東日本大震災は、約50万人の市民が断水となる事態になりました。宮城県沖地震の被害想定では約8万人の断水でしたので、まさに想定外というか、運搬給水の限界が露呈しました。仙台市では給水車を6台配備していましたが、実際には給水車による応急運搬給水は、他都市水道事業体や民間業者などの応援車両を含めて1日最大75台が活動にあたりました。日本全国から支援していただきましたが、状況が刻々と変化するなかで十分な情報を提供できず、効率よく対応できませんでした」

仙台市内には、非常用飲料水貯水槽が21基ありました。震災後、津波被害エリアに設置されていた2カ所を除いた19基を順次立ち上げて対応しましたが、100㎡の容量が早々に底を突いてしまったそうです。

十分な備えをしていたつもりでも、広域に及んだ震災の被害は余りにも大きすぎました。


「いつも通りが一番大事!」
日々の備えを怠らないことが、高い防災意識につながると話す
仙台市水道局の職員の皆さん
前列左が計画課の日下貴史さん。ボードを手にしている右が同じく川村澄志さん
後列左が茂庭浄水課の斎藤恒一さん。右が計画課の西野雅夫さん


仙台市水道局では、震災対応とこれまで取り組んできた各種対策の効果を検証したうえで、各方面からの災害対策を計画、実施しています。

それでも、災害対策は、「これで十分」という判断が、専門家でさえも容易には下せない領域にあることを、私たちは先の震災で思い知らされました。

ライフラインを守る公的な立場は、普通で当たり前、非常時の対応が遅れれば非難の矢面に立つことも少なくなくありません。

今回の取材で懇切丁寧に、防災に対する意識、備えについて話してくれた水道局の西野さん、斎藤さん、川村さん、日下さんは「いつも通りが一番大事!」とメッセージボードに記してくれました。


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諸外国の中には、水道水を飲料水としては使えない国がたくさんあります。

日本の水道は品質だけではなく、安全性、利便性、漏水率の低さなども世界有数の水準にあります。

高水準の公共サービスを享受するには一定の対価が必要ですが、地方自治体から委託を受けた民間会社が水道事業を行うケースが多いフランスのように、水道料金の値上がり幅が論議され、パリ市のように民間委託から公営化に戻すといった事例も現在のところ日本ではありません。

震災による長期間の断水などは、二度と起きないことを願うばかりですが、自然災害は、現代においてもいまだに人知の及ばない領域があります。

日々、当たり前のように提供される公共サービス、ライフラインの防災の備えを知ることは、震災の怖さ、被害の大きさを顧みて、日常の個人個人の防災意識を高める意味でも大切なことだと、今回の取材を通じてあらためて感じました。



震災対応の検証レポート「東日本大震災 仙台市水道復旧の記録」を閲覧するには下記ホームページで。

仙台市水道局   仙台市太白区大野田29番地の1
http://www.suidou.city.sendai.jp



(取材日 平成25年7月30日)