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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2013年9月4日水曜日

2013年9月4日水曜日14:15
YUUです。

猛暑も嫌ですが、異常気象はもっと困ります。

東北地方が梅雨明けする前の7月下旬、隣の山形県では記録的な大雨の影響で、4市2町が最長9日間の断水を余儀なくされました。

報道によると、晴天続きの水不足とは違って、集中豪雨により土砂が河川(寒河江川)に入り込み、浄水場の処理能力を大幅に超える濁りが発生したためのようです。

宮城県民にとって、自然災害によるライフラインの切断は、震災当時の記憶を鮮明に呼び起こすものです。

停電、断水が続く言いようのない不安は、多くの人々にとって、二度と経験したくない種類の体験でしょう。

個人ごとの震災へ備える意識は、3.11以前と以後で大きく変化したと思いますが、日常生活を支えてくれている、なくてはならないライフラインを預かる組織、施設の備え、取り組みはどうなのでしょうか。

普段、大抵の人が訪れる機会が少ないと思われる仙台市太白区の茂庭浄水場に行ってきました。

仙台市に4カ所ある主要浄水場の1つ茂庭浄水場


スイッチを押せば明かりがつく。
蛇口をひねれば水が出る。

当たり前のように私たちが享受している生活は、多くの先人たちの知恵と、日々の専門的業務に携わる人々によって支えられています。

浄水場は、河川やダム等から取水した水を浄化、消毒して、市民へ供給する施設です。

例えるなら、安全な水を生産する工場のようなものです。浄水場で浄化、消毒処理を行うことで、私たちは日々、安全な水道水を大量に利用することができます。

先月の山形県内の断水処置は、豪雨の影響でダムの水が浄水場で浄化しきれないほどひどく濁ったために、多くの人々が困難に直面する事態となっても水の供給を止めざるを得ないと判断されたみたいです。

浄水場は水道に関わる安全装置の役割を担っているのです。



茂庭浄水場の浄水施設。筒状の大きな煙突のように見えるのが着水混薬井
着水井(ちゃくすいせい)は河川などの原水の浄水場での最初の水槽
着水井から出た原水は、ろ過処理やpH(水素イオン指数)の調整、消毒などが行われる

茂庭浄水場は仙台市に4カ所ある主要浄水場の1つで、昭和45年から稼働している仙台市最大の浄水場です。主に若林区、太白区、宮城野区へ給水しています。上の写真に見える筒状の着水混薬井を囲む外観はかなり印象的で、「近代水道百選」にも選定されたそうです。


震災後、設置された建物を囲む耐震フレーム


もし、浄水場の施設が地震で倒壊したら?

浄水場は安全な水の生産工場なだけに、その影響は計り知れません。

幸い、茂庭浄水場をはじめとする仙台市内の浄水場では、東日本大震災により、浄水機能に大きく影響するような被害は発生しませんでした。

各浄水場では、震災以前から計画的に建物などの耐震化を進めていましたが、今回の震災を踏まえ、より一層の耐震化を推進するそうです。




施設内の連絡橋もチェーンで固定されている

「茂庭浄水場をはじめ、浄水場は取水、配水をスムーズに行いやすいように山あいに設置されています。地盤の関係もあるのでしょうが、建物そのものの地震による被害はほとんどありませんでした」

こう話してくれたのは、仙台市水道局の浄水部茂庭浄水課の斎藤恒一場長です。

建物そのものは深刻な打撃を受けなかったものの、先の震災では、法面(のりめん)などの土木施設において被害が多く発生しました。

また、茂庭浄水場は電力の供給が98時間途絶えてしまいました。非常用自家発電設備により浄水処理に必要な電力は確保できましたが、燃料補給などの設備運用に苦労したそうです。

仙台市水道局は、昭和53年の宮城県沖地震の経験から、震災対応を念頭に置いた水道行政を推進してきました。しかし、今回の震災では他のインフラ全体の被災により、都市機能そのものに支障が出る事態が次々と起こりました。

仙台市水道局給水部計画課の西野雅夫主幹は、震災直後の混乱を次のように説明してくれました。

「インフラ全体の被災の影響という意味では、流通機能がまひしたことや、長時間の停電とともに県内の石油備蓄基地の被害が重なったことは象徴的な出来事といえるでしょう。応急給水や復旧作業用の車両の運行、送水ポンプ場の非常用自家発電設備の稼働に支障が生じるほどでした」
 
水道の重要施設には非常用自家発電整備を設置していますが、大規模な震災では、その整備を稼働させる燃料の確保がままならないという、不測の事態を招きました。

想定していた稼働時間を大きく超える停電に加え、タンクに補給する燃料の確保がままならなくなるという事態は、震災対応を念頭に置いてなお、想定外の出来事だったようです。

24時間の停電に対応できる容量の燃料タンクはあったものの、最大4日間にも及んだ停電は想定していた自家発電の稼働時間を大きく超えており、併せて県内の石油備蓄基地の被害、物流の遮断により燃料確保がままならなくなる事態は危機管理の想定外でした。

水道局では検証委員会を設け、さまざまな角度から、東日本大震災における被災状況や対応などを評価、検証し、今後の取り組みや課題についてレポートをまとめたといいます。震災対応の詳しい検証レポートは、「東日本大震災 仙台市水道復旧の記録」としてまとめられており、水道局のホームページで閲覧できます。

「浄水施設は水道事業の基幹施設です。今回の震災被害は軽微でしたが、被害想定が最も大きい直下型の地震にも対応できるように今後も着実に耐震化を図っていきます。また、地震による被害を受けやすい水道管路の耐震化も、災害拠点病院等への供給ルートを耐震管に入れ替えたりするなど、効率的に進めています」(給水部計画課 西野さん)

仙台市の管路の耐震性は、平成22年度の厚生労働省の調査では全国平均を大きく上回っていまが、現在でも耐震性に劣る管路が約15%残っています。

耐震型継手の概要
地震時にはロックリングに挿し口突部がかかり、大きな衝撃を受けても管が抜けないようになっている



「平成14年から敷設する管路はすべて耐震管にしています。これは、継手の抜け防止機能と地震動や地盤変動に柔軟に抵抗する鎖構造を持つ継手形式のものです。今回の震災も含め、他所で起きた過去の地震でも被害は報告されていません」(同)

仙台市の水道水は、市内全域に張り巡らされた水道管を通して、各家庭や建物に届けられます。水道管は、地盤条件が良いところや津波被害のない丘陵地帯だけ重点的に敷設するわけにはいきません。

材質や継手部分が耐震性に優れた管への取り替え、総合的に管路の耐震化をより推進していくことは、震災対応を踏まえた今後の水道行政にとって欠かせない事業のようです。

気象庁の発表では、東日本大震災後、今年3月11日までの丸2年間で震度1以上(有感)の余震回数は9577回を数えるそうです。余震や誘発地震の収束は専門家でも完全に予測することは難しく、今後、中長期的な震災対応の行政政策とは別に、早急に改善が求められる施策も私たちが漠然と考える以上に多いのかもしれません。


今回は浄水場をはじめとする水道施設の震災時の被害、耐震化の取り組みを紹介しました。

後編では、応急給水など、震災が起こった場合の事故対策や、茂庭浄水場の非常用設備の整備などをレポートしたいと思います。


仙台市水道局  仙台市太白区大野田29番地の1
http://www.suidou.city.sendai.jp


(取材日 平成25年7月30日)