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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2013年7月4日木曜日

2013年7月4日木曜日9:00
こんにちはYUUです。

皆さんは、コンソーシアムという言葉をご存じですか?

Consortiumとはラテン語のConsors(パートナー)が語源で、2つ以上の個人、団体、企業、政府からなる団体を意味します。その共同体は、何らかの共通の目的に沿った活動をを行うために結成されます。

東北一円だけじゃなく、日本各地から学生が集まる仙台市では、2006年に大学間の連携組織として学都仙台コンソーシアムが設立されました。

学都仙台コンソーシアムは、今回の記事で紹介する復興大学の基盤となった連携組織です。

2012年4月より本格的にスタートした復興大学は、普通の大学、学校とはちょっと違います。

事業内容は「復興人材育成教育コース」、「教育復興支援」、「地域復興支援ワンストップサービス」、「災害ボランティアステーション」の4事業です。


http://www.fukkou-daigaku.jp/aim.html
(復興大学概略図)


この4事業の実施案を立案したのが学都仙台コンソーシアムなんです。文部科学省の大学復興センター構想の一つとして復興大学が承認され、現在、復興の担い手となる人材教育を行う一方で、被災した地域、企業・団体への復興支援を実施することが可能となったのも、学都仙台コンソーシアムという学校連携の基盤が、震災前より仙台市を中心として、宮城県内に存在していたからでしょう。

3人寄れば文殊の知恵と言います。毛利元就の3本の矢の故事でもいいんです。

横文字でコンソーシアムなんて聞くと、仰々しく捉えてしまうものですが、昔から語り継がれてきた成句をイメージしてください。知恵、人、物の結集で行動力、実行力をパワーアップする手法の現代版バージョンが、コンソーシアムだと私なんかは理解しています。




復興大学地域支援ワンストップサービス事業報告会


開会挨拶をする仙台センター長 
東北工業大学工学部 今西肇教授
6月12日、仙台駅前のアエルの7階で、復興大学地域復興支援ワンストップサービス(以下・ワンストップサービス)事業報告会が行われたので、興味津々で行ってきました。

復興大学の1事業であるワンストップサービスの活動で、特徴的なのは、復興大学により人選されたコーディネーターたちの地域企業や関連機関への巡回訪問です。拠点となるプラットフォームは、仙台と石巻地区に設置しています。平成24年度の報告書によると、平成25年3月末までの記録で、訪問企業総数は411社。複数回訪問する企業も当然あるので、訪問回数の総計は約600回を数えます。(平成24年度仙台センター調べ)


地域別件数で見ると、内陸企業283社、沿岸企業128社(同仙台センター調べ)と、震災の被害がより深刻な沿岸部の企業への巡回件数が少ないように感じてしまいますが、これは、2012年度上半期までは、交通網が遮断されたままだったり、活動再開の目途が立たない沿岸地域の企業訪問がかなわなかったためです。


石巻センター長 石巻専修大学経済学部 杉田博教授

ご存じの方も多いとは思いますが、宮城県沿岸地域は港の復旧、土地のかさ上げなど、自社の努力ではどうにもならない問題を抱えています。

ワンストップサービスの活動のメインとなるのは、数多くの企業訪問をした上で課題を抽出し、各支援機関や大学教員とマッチングして課題克服を目指すことにありますが、現状ではマッチングを試行する段階ではないと判断する企業が数多く存在するそうです。

石巻センター長を務める石巻専修大学経済学部の杉田博教授は、沿岸地域の多数の企業の現状を次のように説明しました。

  
「沿岸地域の企業については、人手不足の解消や販路の拡大など、震災以前からのそれぞれの業種や企業の課題と並行して考えていく必要性があると判断しています」


日本全国ほぼ例外はないと言って過言ではないでしょうが、地方の労働力不足は慢性的ともいえる問題です。震災で大きな被害を受けた宮城県沿岸地域の市町村のほとんどは、労働力の確保と新規雇用の創出という半ば矛盾する課題を震災以前から抱えていました。

新卒者を多数、採用するような企業が地元にないから、若者が地元を離れる。その結果、介護事業の分野のように、地域に必要な業種なのに、慢性的な人手不足が顕在化し、深刻な社会問題化してしまっているのが、日本の多くの地方なのです。

ワンストップサービスの平成24年度事業報告書によると、さまざまな業種、中小企業で人材不足が深刻化している様子がうかがえます。地域、業種による構造的な人手不足に加えて、被災により居住地を内陸の仮設住宅やみなし仮設へ転居している元従業員や地元住民が多数存在するなど、被災地特有の事情が加われば、ある意味、当然の帰結ともいえるでしょう。

そこで、復興大学としては、ワンストップサービス事業について、従来のアプローチのほかに提案型アプローチによる事業展開が必要と考えて、地域特有の事情を踏まえた調査や活動を行うようになったそうです。

事業報告会では、仙台、石巻センター長によるそれぞれの事務局の概要説明が行われたあとで、各コーディネーターによる巡回訪問による所見、それぞれの事情に即した具体的なアプローチの実施例などが報告されました。


仙台センター
中里忠道コーディネーター(生産技術・中小企業支援)




石巻センター
伊藤孝浩コーディネーター(経営・中小企業支援)



事業報告はそれぞれ興味深いものでした。

学術連携のコンソーシアムが基盤となった復興大学は、被災した企業の企業再生・支援のために直接的に資金を供出したり、人材供給を目指す機関ではありません。ワンストップサービス事業において、活動助成、復興助成が受けられるようなマッチングを提案することが基本となる活動で、さらに踏み込んだ企業支援として、産学連携による商品開発、販路開拓のための提案、アドバイスなどを行っています。

プロジェクト支援活動として紹介された石巻市の雄勝(おがつ)地区再生支援の事業例などは、復興大学ならではの取り組みともいうべき内容でした。

伝統的工芸品に指定され、多くの著名人たちにも愛される雄勝硯(おがつすずり)を製造、販売する雄勝硯生産販売協同組合(以下・雄勝硯組合)は、震災により甚大な被害を受けました。雄勝硯組合は1970年代より東北工業大学との産学連携実績があったため、その連携活動を基盤として復興大学ワンストップ事業が進められてきました。



事業報告会会場で展示されていた
雄勝地区再生支援活動の写真ファイルと雄勝石、雄勝硯




この事業活動では、情報発信業務の見直しのため、HPのリニューアルを実施したり、各種展示会への出展(2013年クラフト見本市など)の促進にも努めました。新たな販路開拓のために不可欠な提案だったといえるでしょう。さらに三井物産環境基金復興活動基金の取得に向けた活動を推進、2013年4月、無事に復興助成が採択されました。

復興大学ワンストップサービス仙台センター副センター長の佐藤明さんは、このプロジェクトについて次のように説明します。

「東北工業大学では、工業意匠学科の時代から、宮城県内の企業と商品開発など産学連携支援を積み重ねてきた背景があるんです。震災の被害が大きかった雄勝硯組合とも以前より連携支援の実績がありました。そこで、このプロジェクトに関しては、復興大学のなかで東北工業大学が中心となって活動を進めてきました」

復興大学のワンストップ事業支援が行き届くと思われる学校が中心となり、他の学校が状況に応じて補完するといった効率がよく、生産性の高い支援活動を推進できるのが大きな特徴です。

佐藤さんによると、雄勝硯組合への三井物産環境基金の採択も決り、支援活動は今後も継続されるそうです。現在は、仮設工場・倉庫の建設のための建築の助言を実施しています。加えて、今年度、有形・無形の資源調査を行ったうえで、来年度以降は、住民とのワークショップ事業開始を視野に入れて、さらなる商品開発、流通、販路開拓を目指していく計画だといいます。




今回の事業報告会に出席して、被災地企業、団体活動に対する復興支援のような、幾層にも重なる課題を解決していくためには、地域の産学官が連携することで生まれた復興大学のような、リソース(知恵、技術、人材)をプール(皆で出し合う)するといった、コンソーシアムの定義、協力関係こそが、今後の復興に向けた歩みをさらに強めていくうえで、重要なことだと感じました。

ワンストップサービスの事業展開の実践例については、また、機会を改め、取材を重ねたうえで随時、報告していきたいと思います。


復興大学
http://www.fukkou-daigaku.jp


(取材日 平成25年6月12日)