7月20日、南三陸町歌津にある「長須賀海水浴場」が、地元の子どもたちのための“プライベートビーチ”として「復活」します。
国道45線から車で5分。 国道沿いにも案内板があります |
長須賀海水浴場は、伊里前湾に面した海水浴場。遠浅で波静か、水質もよく、例年、夏休み期間中は多くの海水浴客でにぎわっていました。
けれども、大震災の津波によって、砂は流失、護岸堤も破壊され、たくさんのガレキが打ち上げられるなどして、美しかった浜は大きく傷つけられてしまいました・・・。
2013年7月7日撮影。 この辺もかつてはキレイな砂浜でした・・・。 いちばん奥の左側が「こども海広場」になります。 |
昨年の夏のこと。
歌津地区の小中学生23名は、沖縄の恩納村へ4泊5日の旅に出掛けました。
経緯を詳しく書くと長くなってしまうのですが、ごく簡単に説明するなら、歌津地区を拠点として震災復興支援活動を続けている一般社団法人「震災復興支縁協会 つながり TSUNAGARI」の活動を通じた人脈の中から飛び出してきたお話です。
沖縄のホテル従業員の皆さんが、被災地のためにと300万円もの義援金を集めてくださったこと、沖縄の歌手の方がCDを製作して応援してくださったことなどから
「いつか沖縄にお礼に行かなくちゃね」と話しているうち、「じゃあ、思い切って行っちゃおう」と、話がまとまったのだそうです。
子どもたちは、恩納村の民宿に泊まり、憧れの沖縄の海で泳ぎ、浜辺を駆け、ボートに乗り、花火で遊び、沖縄料理を味わったりしながら恩納村の皆さんとの交流を深め、大きな夏休みを過ごすことができました。
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昨年の沖縄旅行の報告書です |
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ムーンビーチでのスナップ |
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多くの人たちと「絆」を結び、 たくさんの思い出を持ち帰ることができました。 |
「子どもたちには、『遠くに暮らす沖縄の人たちも、宮城のことを今でも思ってくれているんだよ。こうして応援してくれる人たちがいるってすごいことだよね。皆が大人になっても、今回のことは忘れないで、今度は自分たちが、誰かを助けてあげられるような大人になろうね。そしてまた、きっと沖縄に来ようね』という話をしました」
と、語るのは「TSUNAGARI」の代表理事である勝又三成さん。
そうして歌津に帰ってきたあと、子どもたちに沖縄旅行の感想文を書いてもらったのですが、その中の一文に、勝又さんたち大人は、ぎゅっと胸をつかまれたのでした。
そこには、こう書いてありました。
『でも、やっぱり、地元の海で泳ぎたいな』
沖縄の海がどんなに眩しくてキレイでも、歌津の海こそが、自分たちのふるさとの海なんだ――。
ふるさとの目の前に広がる、南リアスの海で泳ぎたい。それが“海の子・歌津の子どもたち”の願いなのだと、勝又さんたちは知ったのです。
勝又さんは、早速、子どもたちの『夢』を叶えるために、彼らのホームビーチを再生・再開させようと、2013年3月11日、砂浜と海底のガレキ撤去を開始します。
プロジェクト名は「長須賀海水浴場復活大作戦」。
夏休みが始まる7月20日をオープンの日に設定しました。
「TSUNAGARI」の呼び掛けに、多くの人たちが協力を申し出てくれます。
7月7日の取材日には、遊泳区域を示すロープに フロートを結びつける作業が行われていました |
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5月頃のスナップ。 北海道から沖縄まで、全国からボランティアがやってきてくれました |
福島県で被災された方は「遊んでいる機械だから」とユンボを持ってきてくれて、砂浜を1.5mも掘り起こしてくれました。
ダイビングのライセンスを持つ方々は、浜前の海に潜って、たくさんのゴミを回収しました。
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手にしているのは屋根瓦。 こうしたガレキもていねいに除去していきます |
ハワイから金属探知機を持ってきてくれた方もいます。釘や鉄骨、鉄板などを、いくつも見つけることができました。
子どもたちは、砂浜の片側から砂を「篩(ふるい)」にかけてさらに細かいゴミを取り出しました。
アメリカ本土から応援に駆けつけてくれた中高生たちもいました。
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アメリカから駆けつけた中高生たち。 未来へ繋がる交流の輪も広がっています |
こうして砂浜は、だんだんと元のキレイな姿を取り戻していったのです。
「日本各地、ほぼ全県の方が応援に来てくれました。そして海外からも。120人ぐらい集まってくれた日もあり、ほんとうに感謝です」(勝又さん)。
そして、7月20日、「長須賀海岸つながりビーチ 子ども海広場」がいよいよオープンします。
かつて2000mほどもあったビーチのうち、「復活」するのは150mほどですが、
「子どもたちは、もうワクワクしていますよ。自分たちの手で作ったんだという楽しみと誇り、夢を叶えるという喜びが、彼らの胸を躍らせています」(勝又さん)
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われら海の子っ! |
子どもたちが、自分たちの力で、自分たちの浜辺を取り戻そうとしたパワフルな活動。
それを、がっちり支えるステキな大人たち。
7月20日は、ゼッタイに晴れてほしいな。
たくさんの喜びの笑顔が、砂浜の上いっぱいに咲くはずです。
勝又三成さん(左端)ほか「TSUNAGARI」のみなさん。そして子どもたち。 この日(7月7日)はバナナボートの運航試験も行われました。 期間中の利用料金は一人1回1500円。 希望すれば、曳航中に急旋回してひっくり返してもらうこともできます |
「長須賀海岸つながりビーチ 子ども海広場」の開設期間は7月20日~8月10日。
オープニングイベントのほか、期間中にはさまざまなイベントも用意されています。
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一つ、、『ココロプレス』からお願いがあります。
「長須賀海岸つながりビーチ 子ども海広場」は、復活規模も小さく、“地元の子どもたちのためのプライベートビーチ”的な色合いの濃い場所です。
現地の方々は、地域外から遊泳に来られる方を拒んだりはしませんが、今回の開設の主旨をご理解いただき、混雑している日などは、どうか地元の子どもたちを最優先にしていただけますよう、お願いいたします。
なお、現地では、遊泳の監視、駐車場の誘導、浜や付近の清掃などを手伝っていただけるボランティアの方を、期間中毎日、募集します。
希望される方は、毎朝7:15までに現地の受付までにおいでください、とのことでした。
そしてもう一つ。
カンパもぜひ、よろしくお願いいたします。
(取材日 平成25年7月7日)