header

宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

ヘッダー写真説明文

写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2013年6月28日金曜日

2013年6月28日金曜日9:05
こんにちはYUUです。

2011年3月11日の記憶は、被災地に暮らす人々にとって、現在もふとした瞬間に、鮮明によみがえるものだと思います。 

人は、どんなに楽しい記憶でも、頭の片隅からも消し去ってしまいたいような悲しい記憶でも、四六時中、思い浮かべ続けることはできません。そんなことが可能な生物がいるとしたなら、喜怒哀楽の想念が常に体を駆け巡ることになり、きっと、心肺機能や脳がオーバーヒートしてしまうのではないでしょうか。

記憶とは、時の経過とともに、それが、どんなに鮮烈なものであっても、思い出す機会が少なくなったり、曖昧になっていくものです。だから、人々は、語り継いでいかなければならないと思った記憶を記録として残すのでしょう。



震災後の子どもたちの切実な思いを集めた報告書


公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンと一般財団法人地域創造基金みやぎでは、「東日本大震災直後の状況下で子どもたちが地域において担った役割を風化させてはならない、《記憶から記録へ》」という企図のもと、「震災後に中高生が果たした役割の記録プロジェクト」を実施し、今年4月、その報告書を発行しました。

内容は、2012年10月11日~2013年1月7日まで、震災後に「中高生が誰かのためにした」、あるいは大人が「中高生のはたらきをみた」というエピソードを、東北6県を中心に募り、合計205通もの返答が寄せられたものをまとめたものです。

ある機会に目を通したこの報告書は、非常に興味深いものでした。

さまざまな報道記録でもなかなかカバーしきれない、被災地現場の当時の肉声が伝わってくるだけではなく、アンケート調査の対象を中高校生中心に絞ったことで、震災直後の混乱の様子、防災、支援活動の観点から検証すべき、記録に残すべき重要な視点が浮かび上がってきます。

プロジェクトを担当した地域創造基金みやぎの鈴木祐司常務理事は、次のように話してくれました。

「セーブ・ザ・チルドレンは、『子どもの権利』が実現されている世界を目指すことをヴィジョンに掲げている国際NGO(民間非政府組織)です。そうした団体と我々が協働して、東日本大震災の復興支援活動の一つとして、子どもたちにふさわしい社会への回復を助成を通じて支援する事業として『こども☆はぐくみファンド』を立ちあげました。このプロジェクトは純粋な記録であるとともに、復興の担い手である子ども・若者の存在を、実際に震災直後に果たした役割からも捉えなおしたものです。子どもと大人の地域における関わりを考えるきっかけになればと思っています」

このプロジェクトでは、投稿用紙の配布、回収を経たアンケート調査、公開にとどまらず、詳しい聞き取りを了承してくれた子どもたちの中から7グループを選び、インタビューも実施しました。

インタビューの対象者たちは、宮城、岩手、福島の被災3県の子どもたちの他、日本で唯一の環境防災科がある兵庫県立舞子高等学校で学ぶ高校生たちも含まれています。



実際のインタビューの様子(提供:地域創造基金みやぎ)


投稿の編纂やインタビューアーとしても実際の業務に携わった、地域創造基金みやぎの志賀恭子PRオフィサーは、投稿してくれた子どもたちの思いについて、こう話します。

「編纂作業の間、回収した投稿を読み直すたびに、子どもたちの率直で切実な思いが伝わってきました。投稿を一部手書きの文面のまま紹介しているのですが、投稿用紙にびっしりと書きこまれた震災当時の子どもたちの考えや行動の記憶を記録して紹介することは、震災の記憶を風化させない試みであると同時に、今後の地域の防災、減災のあり方を考える上でも、大切なことだと思います」

志賀さんに、回収した投稿用紙の生原稿をちょっと見せてもらいました。

回収された投稿用紙
子どもたちの思いで、ほとんどの原稿用紙の紙面がびっしりと埋まっています


ほとんどの解答用紙が、このスペースでは「思いを書ききれない」といった感じで、余白がほとんど見えないほど、回答欄が埋まっています。

アンケートに書ききれない部分をすくいあげる意味も含めて実施された、報告書のインタビューを読むと、こんな受け答えがありました。

━中学生らしいことって、どういうことですか?

「中学生っておとなでもない。子どもでもないじゃないですか。なので、おとなじゃできなくて、子どもでもできないことをやるみたいな。おとなでは気づかない点っていうのもあるし。子どもが騒いでいたら叱りたくなるところを、一緒に遊んであげて、遠くで遊ぶ、迷惑にならないように遊ぶ感じとか。中学生だからできることをやれたかなって思います」

震災後の厳しい状況下にあって、避難所や仮設住宅では、中高生世代が自ら考え率先して動き、
炊き出しを手伝ったり、支援物資の仕分け、配布などを大人の代わりに行ったといいます。インタビューに答えたこの中学生のように、保育所や幼稚園の再開がままならないなかで、幼い子どもたちと遊んだり、世話をしてあげることで、「中高生たちが幼い子どもと遊んでくれたから、生活の第一歩を踏み出せた」という親の声も多かったそうです。

鈴木常務理事は、今回の報告書を通じて伝えたいメッセージについて、こう言います。

「大きな災害時、子どもたち~特に中高生世代は、保護される、守られる存在であると同時に、地域にとって、大きな役割を果たしうる存在でもあると思うのです。過度の負担にならない範囲で、子どもたちが実際に防災、復興活動に参加することは、自分たちの暮らすまちのことを考えるきっかけになり、地域に貢献できる何かがあると気付くことにもなると考えています。報告書をご覧になっていただければ、子どもたちが地域を支えた記録が、ダイレクトに伝わると思います」


「中高生が震災直後の地域を支えた記録を是非ご覧下さい!!」
創造基金みやぎ 鈴木祐司常務理事

数多くの投稿に目を通し、編集作業中、多くのことを考えさせられたという志賀PRオフィサーは、震災後の子どもたち~中高生の力を忘れない、子どもたちの記憶を記録する今回のプロジェクトが、今後の復興のあり方、より良い地域づくりに繋がれば、と願いを記してくれました。


「忘れない 広げる 中高生の力」
震災後、子どもたちが地域で担った役割りを風化させてはならない
と、記録の必要性を話してくれた志賀恭子PRオフィサー



35年前の6月12日、宮城県沖地震が発生しました。

宮城県に生まれ育った40代から50代の人々は、当時、中高校生でした。

東日本大震災と宮城県沖地震と両方の震災を体験した人にとって、被害は違っても、生涯にそう度々経験するものではない激震の恐怖と、子ども時代の大地震の体験と大人になって遭遇した3.11の震災は、等しく凄まじいものであったはずです。

著名なイギリスの劇作家オスカー・ワイルドは、「人の記憶にいつまでも残るのは恐怖と笑いだ」と、劇作について話しています。それでも、地面が割れてしまうのではないかとおびえてしまうほどの恐怖体験ですら、実際の人の記憶というものは、私自身を顧みても、長い年月を経ているうちに曖昧になってしまうものだと思います。

《記憶から記録》へ

震災直後の特殊状況化で、子どもたちが担った役割や行動を記録して、語り継いでいくことを目指したこの報告書は、地域の防災に恒久的に寄与する役割を果たすことでしょう。

同時に、この報告書を読むことで、子どもたちが地域の「未来を担う」希望であるだけではなく、現在を生きる地域復興の中心として欠かせない存在であることを再認識させられました。


一般財団法人地域創造基金みやぎ
http://www.sanaburifund.org


(取材日 平成25年6月17日)