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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2013年6月11日火曜日

2013年6月11日火曜日9:30

石野葉穂香です。

今ではがらんどうになってしまっている志津川の街の北側の一角に、高々と掲げた大漁旗を海風にたなびかせた、まるでバラック小屋のような食事処・「おおもり食堂」があります。

街があったところの北側縁。手作り感いっぱいのお店です。

先月の記事、『512万歩の歌い旅』の取材の時、旅人・むらなが吟さんが、志津川の街でミニライブを開いたお店です。
その記事のこと、皆さん、覚えていらっしゃいますか?

あれから1カ月。
“マスター”こと渡辺清吾さんの元気な顔にまた会いたくなって再訪してみました。

――石野です、おぼえていらっしゃいますか?
「おぉー、あんどぎのね~。いやいや、お世話様でした~。吟さん、どごまで行ったべね? いやぁまず座らいん」

――すみません。お腹空いてます。取材前に、何かおすすめを食べさせてください。
「あいよ。おすすめね? テーブルで焼ぎながら食べる『ホルモン定食』だナ」

栄養と元気がいっぱいのホルモン焼きは
マスター手ずから仕込んだもの

『おおもり食堂』は、震災前は『焼き鳥おおもり』という名前の、港のそばの居酒屋としてねじりはちまきのオヤジさんたちで、夜遅くまでにぎわっていました。
でも、あの日、津波は、お店を根こそぎ倒壊させてしまいました。

しかし、渡辺さんは、震災から8カ月後の2011年11月23日、以前、お店があった同じ場所に、自力で店舗を建て直し、営業を再開したのでした。


こちらは“手前”の部屋。
写真右手奥に、もう一部屋あります。

「自分で板切って、釘打って、ドアももらってきて、んで、自分で絵を描いて、色塗ったんダ」
手作りのお店。店内には、渡辺さんが書いた色紙や絵が、いくつも貼り付けられています。


時々の思いをしたためた色紙。
今でも少しずつ増えています。

「落ち込んだりしたときに、なんかいろいろ、こみ上げてくるんだよね。それをそのまま書いだのっサ。考えて書いたもんではないんダ」

これらの絵や色紙を、マスターは一冊の本にもまとめて刊行。
在庫はもうありませんが、本はお店でみることができます。

以前の店舗は自宅を兼ねていました。
その“家”もなくなった今は、仮設住宅住まいを続けています。
「家だった場所から“帰る”。それが現実サ」

――居酒屋でじゃなく、食堂で再開したのはなぜですか?
「オレもちょっと病気して、立ち仕事とか夜遅い仕事はキツくなったの。……それに“飲んでる場合じゃない”っていう雰囲気もあったしね」
だけど、いちばんは、『焼き鳥おおもり』でいつも飲んでいた“仲間”が亡くなったり、街を離れてしまったことが寂しくて、お酒のお店という気持ちになれなかったのではないでしょうか。
「んだな。カウンターで飲んでたヤツが波に飲まれて帰ってこない、っていうのが、今でも信じらんねぇ」

何を思い、誰を思って生きてきたか、
お店の中にマスターの“心の言葉”があふれています

仮設住宅では、お年寄りに「コンサート、コンサート」とせがまれて、ギターやハーモニカで、懐メロを演奏することもあるそうです。
「じいちゃん、ばあちゃん、喜んでくれるんだよね。やっぱ楽器は心を癒してくれるサ」

ギター、ハーモニカがお得意な渡辺さん。
音楽好きが集まってくることもしばしばです

むらなが吟さんは、一回目の徒歩旅行の時、ふらりと『おおもり食堂』に立ち寄ったのだそうです。
「ギター背負ってるからサ、『なんか弾いてよ』って言ったの。んで、吟さんが弾いてくれたのが『テネシーワルツ』でサ。感動してネ。そのまま一緒に飲んだのサ」
そうして今年5月、吟さんは再び志津川を訪れて、『おおもり食堂』でミニライブを開いたのでした。


「街の復興計画のからみで、11月には今の場所から引っ越さねばならねえけんト、商売は続けるよ」

――次はどんなお店にしたいですか?
「ホルモンの加工と直売すっかなって思って。どっちかというと加工と直売がメイン。店は小さくていい。でも、みんなが集まれる場所は残したい。お茶ッコ飲んだりできる場所ね。楽器の音も聞こえてくるような」

天井にもご自身の作画がいっぱい。
多くの人とコミュニケーションしたい。おしゃべりできる場所を作っていきたい、と渡辺さん。
誰もがそうかもしれませんが、でも、マスターは、人一倍「寂しがり屋さん」なのかな?と感じました。

「やっぱ海のそばがいいのっしゃ。オレはこの街でもっともっとがんばっぺど思ってます。いなくなってしまったヤツらの分までもね」

『あまちゃん』に登場する“じっちゃん”みたいに、
元は世界の海を駆けめぐった漁師さんなのです

ときどきしんみりしちゃうけど、
ぶっとい声と、おいしい食事で訪れる人をもてなしてくれるやさしいマスター。
「元気もらいにきたよ~」と訪ねていくと、マスターも元気になれるはず。
そしてマスターが元気なれば、もっともっと大きな元気が街中に広がって行くはず。
“元気”のリレーとキャッチボール――!

ちなみに『おおもり食堂』という名前は、南三陸町志津川大森という地名が由来です。
でも、その名前通り、出してくれる定食類はいずれも“大盛り”です。

ご飯もホルモンも大盛りっ! のホルモン定食
塩とタレ、2種類でどうぞ (800円)


自慢のホルモンを、ぜひ、いただいてみてください。

(取材日/平成25年6月5日)