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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2013年5月4日土曜日

2013年5月4日土曜日10:44
皆さん、こんにちは。スーサンです。

被災地発となる次世代エネルギーの研究開発で、実証実験が始まると聞いて、仙台市宮城野区蒲生にある市の下水処理場「南蒲生浄化センター」に行ってきました。

同センター内に「藻類バイオマス技術開発実験室」が新設され、4月24日、その開所式が行われたのです。

南蒲生浄化センターは、震災で水処理施設が壊滅的被害を
受けましたが、平成27年度末を目標に復旧工事が進められ
ています
藻(そう)類とは、水中に生息する植物のことです。海藻などのような大きいものは少なく、ほとんどがマイクロメートル(1千分の1ミリ)という単位でしか計測できない微細なもので占められているといいます。

その一部が、石油に近い成分を生み出すのだそうです。

バイオマスとは、エネルギー源となる生物資源という意味です。

この実証実験は、仙台市と筑波大学、東北大学が共同で行っています。

平成23年11月に3者による共同研究協定が締結。平成24年7月には、文部科学省から「東北復興のためのクリーンエネルギー研究開発事業」として採択されています。

役割分担としては、仙台市が場所の提供など、筑波大学が藻類の培養技術、東北大学が油の抽出・精製技術となっています。

センター1階の空きスペースに新設された「藻類バイオマス
技術開発実験室」
開所式典には関係者ら約20人が出席しました。

奥山恵美子・仙台市長は、「新しいエネルギーを求めていくという大切なプロジェクトが、仙台の地で芽を出そうとしているのは誇りに思います」とあいさつ。

吉川晃・筑波大学副学長は、藻類バイオマスの生産技術が「国の次世代エネルギー政策の主要な手段の1つに位置付けられています」とした上で、「この技術を震災地の仙台で確立し、地球規模での(エネルギーという)課題に貢献したい」と述べました。

原信義・東北大学理事は、筑波大学に技術提供の謝意を表すとともに、「技術の実用化は東北初の次世代エネルギーを実現することになり、東北復興で1つの象徴となります」と話しました。


あいさつに立つ吉川晃・筑波大学副学長(中央)
新たなエネルギーの研究開発で、実験室がなぜ下水処理施設の中に設けられたのでしょうか。

それは、使用される「オーランチオキトリウム」と「ボトリオコッカス」という2つの藻類の性質に起因しているのだそうです。

オーランチオキトリウムは有機物を吸収して増殖し、体内に石油に近い成分である、炭化水素の「スクワレン」をつくるといいます。下水処理施設では多くの生活排水が処理されていますが、その中には有機物がふんだんに含まれていて、その生育環境が整うというわけです。

具体的には、活性汚泥と呼ばれるものがエサとなるようです。通常、生活排水は沈殿という工程を経て、処理水と汚泥に分離されます。汚泥は、今のところは焼却処理の後、大部分が埋立処分されています。

しかし、汚泥をこのオーランチオキトリウムの栄養分とすれば、焼却しなければならない汚泥の量が減少するだけではなく、汚泥を焼却するための燃料が産出されることになります。

結果的に化石燃料の節約と二酸化炭素の排出量の削減にもつながるのです。

左から、培養中の「ボトリオコッカス」、同様の「オーランチオキト
リウム」、オーランチオキトリウムから抽出された「スクワレン」
一方のボトリオコッカスは、光合成を行うことで重油に相当する炭化水素を生み出します。光合成では必須とされる二酸化炭素は、汚泥焼却で発生するガスを利用することが可能といいます。

この藻類は同時に、増殖で無機物の窒素やリン酸を栄養分とするといいます。これらは、下水処理の処理水に多く含まれているのです。

生活排水を浄化しながら油を生産していくという、資源循環型の仕組みが目指されているのです。

油の生産自体は、こうしたことを背景に、コストが大幅に減少することが見込まれています。

実験室は、南蒲生浄化センター内建屋1階の空きスペースに設置されています。延べ床面積80㎡で、事務室1室、実験室2室から構成されています。

実証実験では、藻類培養の最適環境などを見極めるといいます。

オーランチオキトリウムは光合成をしないため、一番奥のタン
ク内で培養されています
人工照明を受けて光合成をしているボトリオコッカス
実験で提供されるオーランチオキトリウムは、従来のものに比べ、10倍の生産能力を有しているといいます。日本在来のもので、平成22年12月に沖縄県で、藻類バイオマス研究の第一人者である筑波大学の渡邉信教授が発見しています。

丸森町出身で東北大学卒の渡邉教授は、地元での実験施設の開所を喜び、「世界に先駆け、藻類バイオマスと下水処理を統合した新しい技術を確立し、その技術移転をしていきたい」と、抱負を力強く語っていました。

また、油の実用化については、EU(欧州連合)内でジェット燃料の10%がバイオマス燃料に転換が義務付けられる2020年を、1つの経過段階だとする見方を示しました。

前述のスクワレンにも言及し、化粧品の原料に流用されている点や現状の生産コストなどを踏まえた上で、被災地で生産していくことの可能性を明らかにしました。


奥山市長らに仕組みなどを説明する渡邉教授(中央)
近年、世界中で石油の代替エネルギーが模索されていますが、藻類バイオマスには数々の利点が挙げられています。

生産効率は、トウモロコシなどからつくるバイオマス燃料に比較して、数十倍から数百倍高いとされています。食糧生産とは競合することはなく、製品化は既存の石油精製施設で足りるといいます。

オーランチオキトリウムとボトリオコッカス。

なかなか覚えることができない名前ですが、被災地にとっては、夢と希望を与えるものであることを強く感じました。

(取材日 平成25年4月24日)