宮城を代表する朝市の1つである名取市閖上(ゆりあげ)地区の「ゆりあげ港朝市」が、5月4日、被災した従来の場所で2年2カ月ぶりに営業を再開しました。
それに合わせ、足を運んでみました。
被災地の商業施設としては初の本格的な復活となり、大きな関心を集めています。
朝早くから大勢の人が詰め掛けました |
周囲は更地が広がったままで、かろうじて、朝市来場者の 車がにぎわいを演出していたようでした |
テント張りの店舗には、閖上港で揚がるアカガイをはじめとした魚介類に加え、地物の取れたて野菜が持ち込まれ、さらに、さまざまな加工食品や日用雑貨などが並んでいきました。
漁港そばの市有地(約6千3百㎡)を会場に、1年を通じ日曜・祝日ごとに開催され、震災前は51の出店を数えていました。
朝市の東側は、貞山掘が合流する内湾「広浦」になってい ます。手前に見えるのが新設の店舗棟 |
朝市は地域の商業拠点であり、仙台市近郊では不動の観光 名所となっていました |
櫻井広行・ゆりあげ港朝市協同組合理事長(58)は、現地での復活にうれしさをにじませ、次のように話していました。
「地元住民の皆さんにたくさん来ていただき、握手攻めに遭いました。前に進もうと思ったきっかけは、お客さまの支援があったからこそです。やっと閖上で復興の第一歩を踏み出すことができ、朝市が先陣を切ることができました」
来場者に感謝の気持ちを伝える櫻井理事長 |
こうした状況から当初、朝市の開催は絶望視されていたようです。ところが、同組合では動き出したのです。
震災直後の乏しい食料調達の事情を見るに見かねて、自分たちも被災者であるにかかわらず、市内全11カ所の避難所で無料配給を行いました。そして被災から1カ月もたたないうちに、1回という限定でしたが、朝市を再開したのです。
元の場所から内陸に5㎞ほど入った美田園(みたぞの)地区にあるイオンモール名取の協力を得て、駐車場の一部を会場とするものでした。
この英断への反響は大きく、再開の日時を問う声が相当数寄せられたといいます。以降、今回の現地復活に至るまで、朝市の営業は場所を変えることになりましたが、命脈を保ってきたわけです。
閖上港で揚がる新鮮な魚介類も人気を支えてきました |
木の温もりと香りを実感させる両建物は、以前にはなかった常設施設となりました。名取市に寄贈されて、ゆりあげ港朝市協同組合が借り受けることになりました。
震災後の組合員数は43で、店舗棟には先に14店が入居しました。当面は、テントによる出店を併用した営業展開となるといいます。
秋までにはさらに、宮城県のグループ化補助金によって、同様の施設が3棟増築される予定です。
店舗棟に対しては、木の質感が大変好評のようでした |
メイプル館には、カナダ文化の展示コーナーや、 平日も営業するレストランがあります |
買い物客に耳を傾けてみると、オープンを知って、久しぶりに来てみたという人がたくさんいました。商店主らとの会話を存分に楽しむ姿が、復活を象徴するものとなりました。
朝市での販売品目は、鮮魚、塩蔵・乾物品、野菜、果物、生花、精肉、総菜、味噌、加工食品などと、実に多様です。こうした品ぞろえの豊富さと割安価格での提供が、絶大な人気を支えてきたようです。
今後、旬に合わせたさまざまなイベントを開催する予定で、その都度、組合員以外の店舗などが加わるといいます。
販売商品は実に多様で、しかも割安です |
本格中華も楽しめるのです |
青果業の「栁(やなぎ)屋」では、栁沼宏昌代表が「安全面は組合全体で確認を取り、スタートさせました。お客さまにぜひ来ていただくことで、もう一度販売にかかわっていければ」と述べていました。
閖上地区で復興の先陣を切ることになった市場です。被災各地の商業施設、市場が追随していけるような見本を、これからのにぎわいで示してくれることを期待しました。
ゆりあげ港朝市
毎週日曜・祝日
午前6時から同10時まで
問い合わせ
ゆりあげ港朝市協同組合
名取市美田園7-1-1
022-395-7211
http://asaichi.yuriage.jp/
(取材日 平成25年5月4日)