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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2013年3月5日火曜日

2013年3月5日火曜日11:46
こんにちは。けいこです。

亘理町の復興のシンボルとなるイチゴ。
被災から復活の一歩を踏み出し、収穫や出荷を遂げたイチゴ農家の様子はたびたび報道されています。
その知らせを目にするたび、うれしい気持ちになります。

そしてまた、そのイチゴを使った商品も復興を加速させる大きな力を持っています。
今回は亘理町名産のイチゴを原料に作られたワイン、わたり発 いちごだワ・イン「夢みる乙女」について紹介したいと思います。

鮮やかな赤い色がきれいなイチゴワイン「夢見る乙女」。
長年亘理町内の方々だけでなく、全国から好評を受けてきたこのワイン。
震災を乗り越え、昨年12月に2年ぶりに販売が再開されました。
復活するまでのお話を、亘理町小売酒販協議会会長の大堀清さんにお聞きしました。


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杉玉が吊るされた大堀さんのお店、「おおほり」。
亘理山元商工会の「一店逸品」認定店にもなっています。

このイチゴワイン「夢見る乙女」は16年前から生産され、毎年多くの方が買い求めています。
食前酒やデザートワインとして好まれ、お酒が弱い方や女性などからも人気だそうでここ数年は6,000本以上が出荷されていました。

販売当初は、販売開始数日で全て売り切れになってしまうこともあったとか。
次の年に製造本数を倍にしても10日ほどで売り切れてしまうこともあり、「数年待って手に入れた」という方もいたそうです。
2011年も例年通りに生産・販売の計画が立てられていましたが、震災の影響で生産も販売も中止となってしまいました。

「震災前日に会議があって、例年と同じ様にイチゴワインを生産することが決まっていたんです。3月11日の午前には、製造をお願いしている北海道の酒造会社に“今年もまた作るからよろしくね”なんてお願いをしていたところだったんですよ。その午後にあの地震が起きました」

町のイチゴ農家9割が被害を受けたという知らせを聞き、大堀さんは、2,3年はイチゴワインを作れないのではないかと思ったそうです。
震災の1週間後には酒造会社に連絡を取り、
「せっかく計画を立てたけど、きっと生産はできないだろうね」
という話もしていたと言います。
しかし、そんななかでも大堀さんの心には諦めきれない気持ちがありました。

「半分諦めていながらも、心のどこかで“イチゴがあったらいいなぁ、またワインを作れたらいいなぁ”と思っていて、町を通してみやぎ亘理農協に問い合わせをしてみたんです。もし、まだイチゴが残っていたら分けてもらえないかな…と思っていたところ、400キロのイチゴを提供してもらうことができました。まさかこうなるとは思いませんでした」

農協へ問い合わせをしたのが昨年の5月。
もしこれが1カ月遅かったら、今こうしてワインを手にできなかったかもしれないと当時を振り返ります。

しかし、イチゴが手に入ったものの問題は山積みでした。
農協から提供された400キロのイチゴは、震災後に収穫され冷凍保存していたもの。
そのため、放射能検査の必要があったのです。
宮城県での基準を満たしていても酒造会社がある北海道でさらに検査があり、その対応に時間を取られるなか、何度も何度も大堀さんと酒造会社とでやり取りが進められていたそうです。

たくさんの問題を乗り越え、8月には製造ラインをなんとか確保し生産再開。
イチゴワインの復活の兆しが見えてきました。

「やっぱりイチゴが手に入るにも関わらず、作らないなんてことはできなかったです。2年作らなかったら皆さんに忘れられてしまう。そんな気がしていました」


「おおほり」の店内には宮城のお酒をはじめ、たくさんのお酒が並んでいます。

400キロのイチゴから作られた本数は4,000本。
昨年より2,000本少なく生産数は今までで1番少ない数ではありますが、とても貴重なものとなりました。

昨年の12月1日に販売された後は、「2年ぶり」の販売再開ということもあってか1人で2,3本買って行く方も多いとか。
販売開始から飛ぶように売れ、現在は取り扱っているどのお店も1,2ケースほどしか残っていないそうです…。
大堀さんのお店にもほんの数本しか残っていませんでした。

大崎市から車で買いに来る方や、「どこのお店で売っているの?」という問い合わせも多いようです。
沖縄の方からの連絡には驚いたと大堀さんは言います。
それだけ多くの方が興味を持って楽しみにしていたということですね。

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このワインは、イチゴの香りがとてもさわやかで、飲むとまるで生のイチゴを食べているような甘さが口に広がります。
そして、アルコール度数が低いことから、お酒が苦手な方にも「これなら飲める」と好評なようです。
私もこの取材の後実際にいただいてみましたが、赤い鮮やかな色がきれいで香りも良く、イチゴの甘酸っぱさがありながらも飲みやすくてとてもおいしかったです。
ネット上でも、「イチゴの味がしっかりあって甘くて美味しい」、「香りも良くて、飲みやすい」、「来年もまた購入したい」などといった書き込みを見付けることができました。

イチゴを使ったワインは全国に数多くあるようですが、このワインほどイチゴ本来の香りが強く出るものは無いそうで、
「以前、“わたり温泉 鳥の海”ではこのイチゴワインを食前酒に使っていたんです。このワインが注がれたたくさんのグラスがテーブルに並べられると、部屋中がイチゴワインのいい香りでいっぱいになっていました」
と、大堀さんは教えてくれました。
そして、今年のワインはとても色が濃くて見た目にもイチゴらしいとその出来を喜びます。

「“ワインができてよかったですね”という声をたくさんいただきました。でも、正直言うと最初は素直に喜べなかったです。ワインができたことはもちろんうれしいですけど、生産者の方が被災していることを考えると、本当に喜んでいいのかな…という思いがありましたね。原材料があって、工場があって、私たちのような小売り業がある。結局みんなで復興を考えていかなきゃいけないですよね。今年は生産本数が少ないので、大きな力になれるかはわかりませんが、一緒に町を盛り上げていけたらと思います」

再開にこぎつけた喜びを噛みしめつつ、ここまでの道のりの中に多くの方の努力と支えがあったことを大堀さんはよく知っています。
本当の復活はまだまだこれから。
今後は、イチゴの収穫量を見極めながら、出来れば震災以前の製造本数にまで回復させたいと言います。

「前進あるのみ!」
店主の大堀清さんと、奥様の由美さん。

後ろの「福幸を夢みて」は由美さんが書いたものです。

「どうしても後ろを振り返りたくなるんですけどね。振り返ってばかりいても悲しくなって商売も続かないので、“前進あるのみ”ですね」
という由美さんの言葉を受けて、ホワイトボードにその言葉を書いていただきました。

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亘理町とその隣の山元町では、現在大規模なイチゴ団地の造成・建設工事が進められています。
イチゴが復興の大きな足がかりになり、亘理町や山元町だけでなく宮城県の再生に向けた大きな力になっていってほしいと強く思います。

新しい一歩を踏み出そうとするイチゴ農家、北海道の地で協力してくれた酒造会社、そしてそれをたくさんの人に届ける大堀さんのような小売業の方々の力のつながりによって復活を遂げた「夢みる乙女」。
ぜひ、一度味わってみてください。

「よく冷やして、アイスにかけても美味しいですよ」と由美さんが教えてくれました。
私も今度、試してみたいと思います。


わたり発 いちごだワ・イン「夢みる乙女」は亘理・山元両町内の14店舗(一部の店舗ではネット販売も行っています)で発売中です。

商品や販売店についての詳しいお問い合わせは、
亘理町観光協会(0223-34-0513)、もしくは亘理町小売酒販協議会(0223-34-1601:大堀さん)まで。


(取材日 平成25年2月15日)