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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2013年2月7日木曜日

2013年2月7日木曜日15:43
皆さん、こんにちは。けいこです。

先月、成人式がありましたね。
これからの意気込みを聞かれ、
「被災した地元のまちづくりに関わりたい」と語る新成人の姿に頼もしさを感じました。

学園都市でもある仙台には、若者たちが通う大学などが数多くあります。
県内に広がる大学を中心に地域に根差してきたネットワークを復興の力に変えられたら、それはとても心強いことです。
今回は、現在宮城県内の大学・高専が一丸となり行っている復興支援の1つ、「復興大学」の取り組みを紹介します。

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宮城県には、大学・高専、自治体などが相互に関係を結んだ「学都仙台コンソーシアム」という組織があるのは皆さんご存じでしょうか。
大学間での単位互換や、サテライトシステムを利用した授業などが行われ、学術機関と行政が共同で地域を盛り上げていこうという仕組みが展開されています。

そんな中、震災発生を受けて県内の大学の学長たちが重ねた議論は、「復興の担い手として大学などの高等機関ができることは何か」ということ。
そして、「学都仙台コンソーシアム」で連携している学術機関と行政が固く手を結び、東北の復興のために一丸となって取り組もうという実施案を立案し、この「復興大学」が誕生しました。

2012年4月より本格的にスタートした「復興大学」は、深く傷ついた東北地方の再生と新生のため、人材育成と技術支援を中心に復興に寄与することを目指し、次の4つの事業を中心に進められています。

                 ○復興人材育成教育コース
                 ○教育復興支援
                 ○地域復興支援ワンストップサービス
                 ○災害ボランティアステーション


「復興人材育成教育コース」
地域を背負うリーダーの育成を主体とした講座が開かれ、
復興のためのさまざまな学問や知識を学びつつ現場での実習も行なわれます。
「教育復興支援」
児童・生徒の心のケアや学習支援、
教員のサポートを中心に活動を行っています。
「地域復興支援ワンストップサービス」
被災した地域、企業の復旧・復興に向けた支援を行います。
「災害ボランティアステーション」
多くの地域に学生ボランティアを効率よく送り届けられるよう、
ボランティアのミスマッチを防ぐために活動の仕組みを整えるボランティアステーションを設置。


今回は、復興大学の4つの柱の1つである「地域復興支援ワンストップサービス」のアシスタントコーディネーターの方に被災企業の現状や支援内容について、また、復興人材育成教育コースの方に受講生の様子をお伺いしました。

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地域復興支援ワンストップサービスは、県内の学術機関が地域や企業の抱える問題を共に考え、実践し、被災した地域や企業の復興支援のため復興への歩みを進める事業です。

昨年は、大学教員や地域の産業に精通したコーディネーター、そして事務局のスタッフが被災地の自治体や企業を訪問しました。
現在の問題や課題を調査し短期的課題・中期的課題を設定した上、課題に向けた対応を行ってきました。

訪問した県内の企業数は約500社以上。
沿岸部だけではなく内陸部にも積極的に足を運び、丁寧にヒアリングを行っています。
(コーディネーターの活動状況がワンストップサービスHPに掲載されています。こちらからご覧ください)

「当初は“被災した企業を中心に訪問を行い、被災状況や現状を伺うことが重要ではないか”と思っていましたが、それだけでは被災した地域や企業の立て直しが困難なことに気付きました。内陸部の企業や、いち早く再開した企業からもヒアリングを行い、それぞれの課題に対して企業間、あるいは学術機関との連携が可能か模索しました。企業の再建には、地域全体の連携が必要です。地方で中核となる企業との連携があり、被災した地域や企業の立て直しには大きな視野が必要だと分かりました。そのような中から復興への課題や、学術機関とのマッチングのあり方も見えてくると感じます。私も大変学ぶことが多い1年でした」

被災したとある水産加工業の企業では、震災によって加工場の操業ができず商品の出荷が減少しました。すると、スーパーの店頭には代わりの産地の商品が並んでいたそうです。
一度失った販路を取り戻すのはとても困難なのです。
そのため、商品と企業名、そして販路を守るため、出荷に制限があっても努力している企業はたくさんあると言います。

1つの企業だけで、これほど大きな死活問題を抱えています。
被災した企業全てに目を向ければ、企業の数だけ大きな問題があるということです。
そんな中、ワンストップサービスの皆さんが行政の手のなかなか届かない地域にも入り込み、丁寧なヒアリングと調査を通して地元の方の声に耳を傾けることで、企業や地域の復興の芽を育てています。

「私たちはいつも、1つの企業だけではなくて地域全体、産業全体を底上げしていくにはどうしたらよいか、ということを考えています。やはり、復興とは被災した地域の立て直しという視点だけではなく、広い視野を持ち“未来を作ること”だと感じています。そのため“豊かな暮らしとは何か”ということに目を向けていきたいと思っています」

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このワンストップサービスは、仙台と石巻の2カ所に拠点を置き活動しています。
被災地だけでなく、県内全域の企業などをくまなく訪問できるようにするためです。

仙台センターでのプロジェクトの1つが、石巻市雄勝で進められています。
雄勝と言えば、東京駅舎の屋根にも使用された「雄勝石(スレート瓦)」の生産地です。
その「雄勝石の産業を核とした生産と暮らしの再生」のための取り組みが、東北工業大学のチームが中心となって進められています。
この取り組みが発展したのは、雄勝硯生産販売協同組合と東北工業大学チームが地域ブランドづくりや商品開発において30年近い連携の歴史があったためだそうです。

雄勝硯生産販売協同組合の方々は、震災直後から流出したスレート材や硯になる石製品を拾い集めるなど、必死の努力を続けてきました。

「今までの道のりを、自分たちの声で発信したい」

そんな雄勝硯生産販売協同組合の方々の思いを受け、ワンストップサービスでは連携する東北工業大学と協力し、「まずはホームページを作成すること」からスタートしました。
出来上がったばかりの雄勝硯生産販売協同組合のHPはこちらです。
古いホームページが一新され、現地の声を伝える待ちに待ったサイトが完成しました。


今後は雄勝石を使った新商品の開発や販売、さらに日頃の情報を発信するブログの公開なども考えているそうです。
自治体も巻き込み、ワークショップなどで雄勝石の魅力の発信や、雇用の回復についても考えていきたいと言います。


この山から雄勝石が採取されます

雄勝石採掘現場での現地調査の様子


雄勝石は、お皿としての使用方法が増えてきているのはご存じですか。
和洋問わずに使え、料理の色を鮮やかに見せます。
しかし、その使用方法が注目されてきたところで震災が起きました。
今後はお皿をはじめ花器や箸置き、しょうゆ皿としても使える雄勝石が生活の中での身近な存在になっていくかもしれません。

雄勝石のスレートの一部。
その土地ごとの豊かな資源は、町を再生させる大きな力を秘めています。
そのほか、復興を「食」という観点からサポートしていこうという取り組みの、「食文化プロジェクト」があります。

石巻市内の水産加工会社と共同して、三陸の豊かな水産資源を背景にした食文化を見直し、復興の足掛かりをつかみ、地域再生に目指そうというものです。
また、同時にこのプロジェクトでは、石巻に昔からある捕鯨の文化の保存と伝承、そして鯨肉産業支援なども目指しています。
今後は食の重要性のアピールにつなげ、宮城の豊かな「食」を災害や防災にも役立てていける取り組みを進めていきたいと言います。


今回、いろいろとお話を伺っているうちに、ワンストップサービスで支援する問題の幅の広さに驚きました。
産業、文化、まちづくり、経営、教育…。
多様な問題のハード面からソフト面まで向き合い、小さな意見を吸い上げることができるのは、県内の学術機関を幅広い支援の機関としてとらえることができる、復興大学の仕組みがあるからではないでしょうか。

「抱える問題は本当にたくさんありますが、少しでも解決の芽を作っていきたいんです。思いを持って活動を続けていけば、少しでもその芽が生まれるのではないかと感じています。まだ取組は始まったばかりですが、学術機関と地域や企業の連携により、その成功事例を1つでも作ることで、被災した企業の方へ少しでも勇気づけていきたいです。来年度はさらに地に足のついたアウトプットのかたちを提示していければと思います。産業支援はこれからが本番なのかもしれません」


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多感な時期を、震災の混乱の中で過ごした現在の大学生たち。
復興の過程を見続ける中で社会に飛び込むであろう彼らは、東北の未来、再生を託されていると言ってもいいかもしれません。

「やはり、モチベーションが高い学生が多いからでしょうか。授業では積極的に発言する様子が見られますね」

「復興人材育成教育コース」で運営事務をされている職員の方は、そんな話をしてくれました。

「座学だけではなく復興の現場を見学すると、実際に現場が抱えている問題を目の当たりにします。それが大きな気付きにつながっているようです。“なんでこんな状況がまだ改善されないんだ”学生からはそんな声も聞こえてきます。“もう少し現場を見せてほしい”という要望もあって、その姿はとても頼もしいです」

取材でお話を伺ったとき、また、そのお話をこうして記事としてまとめている今、被災地の複雑化した現状と、それを乗り越えるための壁の大きさをあらためて痛感しています。
それでもやはり、その壁を乗り越えた先には、震災から立ち上がった町の姿があるんだと信じていたいです。

近い将来、その先頭に立っているのが復興への思いを持ち続け、復興大学で学んだことを大いに生かしてくれる学生たちであることを願っています。
ここ宮城から、そして「復興大学」から、未来を作る人材が育っていきますように。
そして、今必死でその大きな問いに向き合った学生たちが十分にその能力を発揮できる社会であってほしいと思います。

『若い力 希望 未来』

地域復興支援ワンストップサービス、復興人材育成教育コースの職員の皆さん


(※写真提供:復興大学ワンストップサービス)

(取材日 平成25年1月23日)