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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2013年2月6日水曜日

2013年2月6日水曜日13:20
こんにちは。けいこです。


海岸線に沿って並ぶ町の景色が一変した東日本大震災から、もうすぐ2年になろうとしています。

「もうすぐ2年」と口にするのはとても簡単ですが、その中に込められたたくさんの人々の悲しみやつらさは、いくら月日がたっても簡単に癒えるものではありません。

被災を受けた町には、海とともに人々の暮らしがあり、日々の営みと生活のにおいがありました。
多くの被災地の海辺が更地となった今、三陸には素晴らしい町並みがあったことをあらためて思い出しています。

仙台市からほど近い七ヶ浜町。
7つの浜が点在するこの町もまた、津波で大きな被害を受けました。
そんな七ヶ浜町を愛し、景色を描き続けてきた方がいます。
イラストレーター・画家の古山拓さんです。

古山さんが描いた七ヶ浜の景色が、旅絵「七ヶ浜小さな旅」という1冊の本にまとめられました。
震災以前の姿も描かれているこの本からは、その時に流れていた潮の香りや風、気温さえ感じられる気がします。
この町を見つめ続けてきた古山さんに、この町への思いをお聞きしました。

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「七ヶ浜 小さな旅」から、花渕小浜の風景。
赤い建物は、津波の被害に遭い今はもう無いヨットハウス。

昔から、何度も海水浴などで訪れていたという七ヶ浜町の景色を描き始めたのは2008年。

「仕事が立ち行かなくなった時にふと灯台を描きたくなって、昔から馴染みがある七ヶ浜に足を運んでみたんです。町を回るというより港を回ってみようという思いでした。7つの浜が集まっていて“七ヶ浜”なんて名前も素敵じゃないですか。この時は自分の好きな漁港の景色もじっくり描きたいと思っていました」

町の南にある「松が浜」からスケッチはスタート。
実際に浜を回ってみると、リアス式海岸独特の入り江が港のいい佇まいを作り、浜それぞれに特徴があることに気付いたと言います。
七色の浜の景色は、古山さんの鉛筆を軽やかに滑らせます。

「この町を描きたい!描いていて楽しい!と思う気持ちはなんなんでしょうね(笑)。波長が合うのでしょうか。感じる空気が違うんです。肌で感じると言いますか…。動物的な勘がさえるのかもしれませんね。なんだか不思議です(笑)」

菖蒲田漁港の岸壁から港を見つめる作業員
この本を見ると、灯台を描いた絵が多いことに気が付きます。
表紙となっているのも、菖蒲田浜にある灯台の絵。
灯台のフォルムに何か引かれるものがあるのでしょうか。

「横の構図が多い海の景色を描く中で、ポンと立っている灯台は絵を引き締めるんですよ。灯台の周りで釣りをしている人。灯台の横を通る船。港の絵を描いていると非常に気になる存在になるんです。もしかしたら灯台は“木”のような存在かもしれません。ただそこに立っているだけで、その周りにはいろんなドラマがありそうじゃないですか。私も昔、灯台の下で息子と釣りを楽しんだりしましたからね」


今日はこの浜。
次はこの浜。
1つ1つの浜を歩き、腰を下ろし、手を動かす。
全ての浜を描き終えたのは震災後だったそうです。

描き溜めた絵はクロッキーブックで4冊。
通常は、「一度描いた絵を、もう一度あらためて描き直す」というのが古山さんの定番の絵の描き方だそうですが、今回は一度描いた線を極力生かそうと、水彩紙にコピーをとったものに色を付けているそうです。

「現地で描いた素描をそのまま生かしたかったんです。クロッキーブックに鉛筆に走らせる感覚は楽しいですよ。スポーツ選手にとってのシューズのようなものですかね。ぺらぺらした漉(す)き目のあるクロッキー紙に鉛筆を走らせている感覚が体に馴染むんです。できるだけクロッキーブックでしか出ない、現場の線を生かそうと思いました。ただ、クロッキーブックには透明水彩絵の具がなじまない。なので、水彩紙に直接コピーした訳です」


「my home town 私のマチオモイ帖」に出展された、古山さん手製の本。
表紙にすきこまれた茶色い点のようなものは、津波で倒れた木の一部です。

「実は、“七ヶ浜 小さな旅”の元になった本があるんですよ」
と言って古山さんが1冊の本を見せてくれました。
それが、上の写真の「七ヶ浜帖」です。

この本は、昨年2月に東京、5月に大阪で行われた「my home town わたしのマチオモイ帖」というプロジェクトのために製本されたものです。
全国のクリエイターがそれぞれの自分の思い入れのある「町」を冊子や映像など、自分の得意分野で紹介するというものでした。

「内容を聞いて、“これはもう七ヶ浜町しかない!”と思いました。震災の後だったので、消えてしまった風景がたくさんありましたよね。その景色を留めておくためにも、慌てて手作りの画集としてこの本をまとめました。今まとめておかないと自分が後悔すると思ったんです。それに、これは一般の人にも見てもらえるチャンスだと思いました」
手作業でテープを貼り3冊のみ製本された「七ヶ浜帖」
この本が「七ヶ浜 小さな旅」の基礎となっています。
東京でも大阪でも反響が大きく、古山さんの元には「これが書籍になったらいいのに」という声が多く届けられたそうです。
そしてそれらの声が広がり大きく実を結び、今回の自費出版へとつながりました。
七ヶ浜へ足を踏み入れてから4年。
この本に込められた古山さんの思いは七ヶ浜のみならず、三陸や被災した全ての地域へと広がっていました。

「私は昔から三陸を取材して歩いてきました。この本は“七ヶ浜 小さな旅”という冠を付けていますが、三陸への思いを託したものです。七ヶ浜の景色を通して、どこか故郷の景色を重ねたり、行ったことのある港町に重ねてくれたらいいかなと思っています。そう思ってもらえたら本望です。これは、七ヶ浜の名前を借りた“三陸讃歌”です」


坂道から見える代ヶ崎浜

私は上の絵を見て、気仙沼市唐桑町にある小さな漁港を思い出していました。
リアス式海岸のくぼみにある、誰にも見つからないような小さな漁港と、漁船が並ぶ風景。
三陸にはそんな景色が延々と続いていました。

そしてそれは、どこかの誰かの大事な思い出の景色でした。

旅絵画集「七ヶ浜 小さな旅」は三陸讃歌 です

「この本は、いろんな方に見てほしいですね。三陸ってこんなにいい景色だったんだって思ってほしいですし、またこんな姿が見られる町になれるといいなとも思います。そしてこの本を通じて、私に力をくれた七ヶ浜への感謝の気持ちを伝えたいです」

私はこの本から、七ヶ浜町の素晴らしい街並みを教えてもらいました。
この本を片手に、古山さんが見た景色をなぞってみたいと思うほどです。
震災で失われた景色が数多くあっても、それでもその場所に立ち、昔の港の姿を思い返したくなります。

その時に同時に思い出すのは、思い出がいっぱい詰まった石巻の姿かもしれません。
小さい頃に遊びに行った、陸前高田の「高田松原」のきれいな海岸線かもしれません。
七ヶ浜のこの本から港を持つ痛んだ町の以前の姿をもう一度思い起こし、これから辿る復興への希望につなげていきたいと思います。

あらためて1日も早い被災地の復興を願うばかりです。

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「七ヶ浜 小さな旅」は、
 
・八文字屋書店 セルバ店
八文字屋書店 泉店
ヤマトヤ書店 仙台三越店
金港堂本店(画集・「広瀬川小さな旅」も取り扱い中)
・紀伊国屋書店 仙台店
・ジュンク堂 仙台TR店
・ジュンク堂 仙台ロフト店、
・ジュンク堂 仙台本店(15日から)
・ブックスみやぎ エスパル店
・あゆみブックス 一番町店
・あゆみブックス 青葉通り店
・あゆみブックス 仙台店

で購入できるほか、七ヶ浜町内では

七ヶ浜国際村ギャラリーショップFROM BLUE
七ヶ浜社会福祉協議会
・多賀城・七ヶ浜商工会
・民宿「とと家」
・七ヶ浜町役場受付
・七ヶ浜アクアゆめクラブ(仮設サポート拠点)
・七ヶ浜アクアリーナ
・稲妻呉服店(七ヶ浜汐見台)

でも販売中です。
古山さんのブログでは通信販売も行っています。

また、古山さんが英国を描いた絵を展示販売中の仙台市青葉区一番町にあるヒーリングカフェ「ピア」店頭でも購入可能です。

3月5日から17日には晩翠画廊にて、古山さんの個展「小さな記憶」が開催されます。
3月11日という節目を挟んだ2週間の展示で、画集の原画も展示販売されるとのことです。

古山さんが描いた復興支援の形を、ぜひご覧になってみてください。

(※図版提供:古山拓さん)



(取材日 平成25年1月17日)