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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2013年2月21日木曜日

2013年2月21日木曜日13:24
皆さん、こんにちは。スーサンです。

東日本大震災で被災した企業の中には、地元以外に新たな拠点を設けることで、事業の再スタートを切ったところも出ています。今回は、そのうちの1社を訪問する機会に恵まれました。

事務所を兼ねた工場の真新しい姿は、県北地方の中央部に位置する美里町二郷の田園地帯で見ることができました。目の前を石巻市と大崎市鹿島台町を結ぶ県道が通り、旧本社・工場があった石巻市内からは約20㎞という距離にあります。

敷地は約9000㎡と広く、建物の延べ床面積は隣接する関連会社の工場と合わせ、約2700㎡です。

新工場のある美里町二郷は、合併前の旧南郷町に当たります
ハンバーグを製造する「大地フーズ」がこの地で操業を再開できたのは、平成24年8月のことでした。そこに至るまでには、紆余曲折があったようです。

旧本社・工場は石巻市魚町の水産加工団地内にあり、震災当日は7m以上の津波が直撃しました。

社屋1階の工場は壁が水圧によって破られ、製造ラインのすべてが流されました。帰宅直前だった従業員は、須永光春社長(47)の指示で急きょ2階の本社事務室へ集められました。緊張がしばらく続きましたが、2階まではあとわずかという高さで浸水は止まり、難を逃れたといます。

無残な姿を見せる津波襲来後の旧本社・工場
こうした一方で、早い時間帯の勤務を終えて帰宅していたパート従業員と関連会社社員の2人が、尊い命を失いました。

「後に従業員にアンケートを取ると、80%以上が海辺では働きたくないと答えました。津波がもたらした土壌汚染や、工業団地で以前からあった下水道施設の不備も懸念材料となりました。移転はやむを得ないかなとなりました」

震災当日に早くも事業の再開を決意したという須永社長。さらに続けます。

「震災の翌月から2カ月ほど、津波が来ても浸水しない石巻市内の土地があればと探し回りました。何カ所か候補を見つけることができましたが、結局、断念しました。交渉を終えて、いざ契約となると、事前に提示されていた金額が大幅に上回ることがしばしばありました。地域が混乱している時に足元を見られているなと感じました」


新工場によって、平成24年8月から操業が再開されました

ところが、事態は好転します。

東京都出身で土地勘がないという須永社長に代わって、幹部社員に周辺の土地探しが命じられます。しばらくすると、美里町出身の営業部長が、ある土地が空いているということを耳にします。そこは20年以上、国土交通省が河川用の土砂置場として使っていて、町有地であることが判明しました。

「以前と違って、価格交渉で難航することはないと思いましたが、なかなか決断がつきませんでした。基礎杭で耐震性を高めようとしていたのですが、杭を打ち込む岩盤まで相当の深さがあり、余分に工費が掛かることが分かったからです。取引銀行に相談したところ、条件の良い土地はほかにそうはないと言われ、やっと腹をくくりました。町には親身になって話を聞いていただき、支援していただきました」

同社は平成23年6月に町との交渉を始め、その後、町と国との協議などを見守りました。そして、同年12月に町と企業立地協定を締結するに至りました。

新工場はようやく翌24年3月に着工し、7月には完成します。総工費は、土地取得費を入れて約10億5千万円です。

ハンバーグを製造する2本のラインは月に700tまでの生産が可能であり、東北地方では最大級の規模といいます。

大震災を乗り越え、売り上げの早期回復を目指す須永社長
同社は、創業が平成8年という比較的新しい企業です。もともとは、埼玉県の食品販売会社が石巻市の企業と共同出資で設立した、大豆タンパク、イワシを原料にハンバーグを製造する会社でした。販売会社側の責任者として赴任したのが、現須永社長でした。

同社は共同出資会社の離脱などといった経過をたどりながら、須永社長の経営理念と商品開発力で、14億円近い年商を上げるまでに成長を遂げてきました。更なる飛躍を目指す途上での被災だったといいます。

「お金儲けに走らず、社会貢献をしていくという企業姿勢を貫いてきています。必要以上に利益を求めないことから、適正利潤というものにつながり、結果として価格競争力を高めていると考えています」

ハンバーグの種類は、畜肉はもちろん、大豆タンパク、魚肉などを原料に用い、200以上に及んでいます。代表的な商品である大豆ハンバーグやイワシハンバーグなどは、低カロリーの摂取といった健康志向の風潮に支えられ、狂牛病問題などを追い風に、販売増に貢献してきたとのことです。

販売先は、食品販売会社や、レストラン、配達弁当、社員食堂などへ供給する産業給食業界が多いといいます。

新工場には、高精度の放射性物質測定器を導入しています

原料の段階から製品の履歴が明確になるトレーサビリティも、
大きな特徴となっています
新工場では、品質管理が一段と強化されているようです。震災以降、最も懸念されている放射性物質の存在に対しては、高精度の放射性物質測定器を導入。厚生労働省よりはるかに高い基準値を設け、ホームページで測定結果を毎日公表し、安全の確保を徹底させています。また、「工場トレーサビリティ」は、製造工程の各段階でロットごとに原料の状態を履歴として残すという、新しい衛生管理システムとして機能しています。

売り上げは震災前の3割程度といいます。被災地の食品メーカーはどこも厳しい販売状況に置かれているようで、同社もその例外ではありません。それでも、2年以内に10億円、5年以内に15億円、10年以内に30億円といった年間売上高の目標を掲げています。

「他地域のメーカーが入り込んできている状態で、取引先からはなかなか当社に切り替えてはもらえていません。これから山場となる春の商談では、大きく売り上げをつくっていきたいと考えています。正直に事業を続けていけば、売り上げは確実に伸びていくと感じています。うちのハンバーグには絶対の自信があります」

同社の進出によって、地元での雇用が創出されています。同社の従業員数はパートを含み、震災前が78人、現在が42人です。新工場では再雇用された22人を除いて、新たに美里町の住民などが採用されています。募集は継続中とのこと。売り上げの回復によっては、大幅な雇用増も見込めます。

左から事務所、工場、関連会社の「ナチュラルプレカット」工場
製造ラインの1つである「焼きライン」を通過していく自信のハンバーグ
同社では、ハンバーグやかまぼこなどに使うカット野菜を生産する関連会社「ナチュラルプレカット」(社員数8人)を通じ、地元に貢献していく考えを町に伝えています。

すでに地元の「JAみどりの」から長ネギなど野菜を仕入れる仕組みができていますが、その量的拡大とともに、人材の育成を図っていくといいます。加工(2次)、流通(3次)を加えた、農業のいわゆる6次産業化に対応する高い技術力を目指すものです。

被災した逆境をはねのけ、新たに飛躍を誓う大地フーズのような企業が相次いでいくことを、期待していきたいと強く感じました。

同社のハンバーグは、直営のレストランである「ディーズ・ハピネス」のあすと長町店、イオンモール石巻店、同富谷店で味わうことができます。

(取材日 平成25年2月13日)