年間の自殺者が1998年から連続して3万人を超えています。
これは異常な事態です。
ゆがんだ社会構造が遠因なのでしょうか?
現代人の心が風の中のともしびのように大きく揺れていることだけは確かです。
自殺を考える人、自殺をしようと思う人の最後のよりどころとして「いのちの電話」があります。
社会福祉法人 仙台いのちの電話を訪ねました。
今年の11月で発足30周年を迎えるいのちの電話は、全国に50の事務局がある組織。
日本での自殺予防活動の草分け的存在です。
事務局の永井恵さんにお話を伺いました。
「相談件数は年間25000件くらいです」
「電話は1日に70件くらいあります。女性が多く、平均40分の相談です」
「誰にも相談できなくて、一人で思い悩んでしまうんですね」
「今一番話したいことは何か、悩みを焦点化していくことに細心の注意をはらっています」
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「仙台いのちの電話」事務局の永井恵さん |
事務局長の本田登代子さんは、
「自殺しようと思い詰めるほど悩んでいる方が、お話してくださることで、自分自身で解決の糸口を見つけるよう、下支えするのが私たちの役割です」
「とにかく声を受け止めることから始まります」
そんな相談力のエキスパートであるボランティアの相談員が震災後、30人以上減ってしまいました。
約250人以上いた相談員のうち、自宅が津波や地震で被災した人が20人。
その他体調を崩したり、身内の介護などで活動できなくなった人もいたのです。
24時間相談体制を維持するためにはギリギリの相談員で対応している現状。
震災関連の相談は少なくなったものの、自殺に関する相談が増えてきているようです。
事務局では相談体制を強化したいと願っています。
また、「仙台いのちの電話」で東日本大震災を受けて2011年5月から「ささえあいの会」、9月から「ほっとカフェ」を企画開催しています。
「ささえあいの会」は震災で大切な人を亡くされた方が想いのたけを語り合い、分かち合い、支え合う場として開催。
「ほっとカフェ」は仮設住宅に入居している方を対象に、淹れたての本格コーヒーでほっとするひとときを過ごしていただくというもので、仙台市内、亘理、塩竈、石巻で開催、この1年で842名の参加者があったそうです。
命の防波堤としての役割がますます大きくなる「仙台いのちの電話」ではメールでの相談にも対応しています。
全国のいのちの電話にまだ6カ所しかないメール相談実施センター、ここでも仙台は草分け的な存在です。
「電話をかけてきた人が思いとどまってくれていることを信じて相談を受けています」と永井さん。
相談員の応募資格は23歳から63歳。
月2回 1回あたり3時間活動できる人。
研修期間は2年間で、昼と夜の2クラスがあります。
グループ演習を通じて人間関係の基礎訓練を積み、死生観やカウンセリング理論を学びます。
最後に永井さんに質問をしてみました。
「相談者の悩みなどをご自分の日常生活まで引きずることはありますか?」
「それはほとんどありませんね。次に受けてくれる相談員がいますし、たくさんの仲間で支えていると思うようにしていますので」
プロのお仕事だと感じました。
「仙台いのちの電話」相談電話
022-718-4343 (年中無休 24時間対応)
インターネット相談窓口
http://www.inochinodenwa-net.jp/
仙台いのちの電話事務局
022-718-4401
(取材日 平成24年9月19日)
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<読者の皆さまへ>
この記事の筆者であるnew-Tさんは、2012年10月11日、癌のため急逝されました。
59歳のお誕生日の2日前に取材したこの記事が最後となりました。
new-Tさんは、「劇作家、演出家、俳優・石川裕人」として40年以上もこの宮城で演劇に取り組んできました。
私はその業績のごく一部を知るにすぎませんが、上演に触れていつも感じていたことは、彼が「生きていることのほんとうの意味」を問い続けて演劇を作っているということでした。
そんなnew-T=石川裕人さんの最後の記事が、自殺を予防する取り組み「いのちの電話」を取材した「いのちの最後のよりどころ」となったことに、生きているということの深い不思議を感じます。
new-T=石川裕人さん。長い間、お疲れさまでした。
ご冥福をお祈りします。
(ココロデスク)
石川裕人さんの個人ブログをご紹介します。
石川裕人劇作日記・時々好調
http://gekisaku.oct-pass.com/