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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2012年3月17日土曜日

2012年3月17日土曜日11:00
春の気配が感じられるようになってきましたね。龍庵です。

栗原市の一迫に「風の沢」というちょっと変わったミュージアムがあります。岩ヶ崎に近い一迫。駐車場から竹林の小道を登っていくと、徐々に美しいわらぶき屋根の古民家が見えてくる。隠れ里のような佇まい。日本古来の里山のすばらしさが甦ったようなロケーションと建物。

竹の小道を過ぎて、わらぶき屋根の美しい家屋が見えてくる。
オーナーの杉浦節美さんと、息子さんの杉浦風ノ介さんにお会いして、「風の沢」が誕生した経緯をお聴きしました。
物づくりの人を通してこの土地とご縁が生まれ、この古民家に出会った杉浦さん。200年以上経った母屋と馬屋は二十数年放置されていたためほとんど埋もれた状態だったそうです。柱と構造だけ残し、屋根はトタンをはがしてかやぶき屋根に葺き替え、床を張り、建具などをもらい受け、頭領や職人さんと一緒にコツコツと再生していったとのこと。

いまでは貴重な日本家屋がみごとに再生された。
玄関を入ると、囲炉裏のあるミュージアム内。
杉浦節美さんは東京でギャラリーを経営し、不動産管理業も行っているということで、東京と行ったり来たりしながら、10年を経て現在に至り、2010年からミュージアムとして開館。1年目は焼き物、2年目は生け花、3年目の今年は紙をモチーフとした現代アートの長期展覧会が422日(日)から開催されます(冬の間は休館)。

物をつくるのは人間。原点じゃないですか。その物づくりの人たちのお力をお借りして、消えゆく里山の日本の風景を残したい。じゃあ、どう残すか?活用する。文化・芸術をツールとしてイベントを行い、土地を活用する。土地の力を活用して次の世代につなげようじゃないか、というのがコンセプトです」 

杉浦節美さんはこの「風の沢」のコアの部分をそう語ってくれました。

木造りの倉庫の内部はギャラリー。(下が内部↓)
陶器などの展示スペースの奥には、小さなギャラリー。モダンな内部。

「風の沢」の裏山には散策コースが。右手の小屋の内部は↓
ベンガラの壁と、柿渋の木、琉球畳のコントラストが美しい。

■杉浦ママが動くなら、と、支援金と物資がぞくぞく集まる。

そして、311の当時のことをこう振り返ってくれました。

「私たちもひっくり返って驚いたわけですよ。でも、自分たちの心配よりも先に、沿岸部の人たちを悼んだんですよね。一週間も経たないうちに、『スワンキークール』という自動車販売整備業をしている伊藤俊君という若者のリーダー格の人のことを小耳に挟んだ。自分の車に水とプロパン、食材を積んで、若者を集めて一番最初に沿岸部へ飛んで行った。米1俵あれば、1,000個のおにぎりがつくれる。あたたかいごはんを炊いて、みんなに渡した。

それを聞いて、すわ栗原に立派な若者がいる!この子たちの支援を年寄りの私がしないといけないと思い、私の東京などの知人たちにメールを発信した。『どこに力を貸していいかわからなかった。杉浦さんが動くなら』と言ってくれて、ダーッと集まってきたんですよ、お金と物資が。650万円ぐらい集まったんですね。それで栗原のおいしいお米や野菜、お肉、果物、それから精神的にまいりだした時のために酒やタバコも用意した。息子と伊藤君たち十数名が朝6時にバス2台とバンで向かった。帰ってきたのは深夜11時でした」

炊き出しで、地元の奥さんたちもおにぎり作りを手伝ってくれた。
栗原にも頼もしい若者たちがいるんですね。それにしても杉浦さんの人脈と信頼関係によって、あっという間に大きな支援金を集めることができたのというのですから、なんとも男前な姉御。
食材や炊き出しの支援に留まらず、さらなる物語へ。

縁側で語ってくれた杉浦さん親子。

■信楽の陶芸家たちが5000個の陶器を沿岸部へ。

「避難所ではカップラーメンの器を食器として使い回ししていた。こりゃ、なんとかしないといけない、ということで、息子がネットで陶芸作家たちに発信した。『おれらの器がこんなときに役立つなら』と、信楽焼の若手リーダー的な山田浩之君が中心になって、『杉浦さん、4トントラックでまず、5,000個をかき集めて持っていくから』と。作家物の陶器ですよ。『じゃあ、わかった。支援金があるから、ガソリン代と高速代はうちが出すから。日当は出せないけどね』と言ったら、『いや、杉浦さん、自分たちもここでチャリティーをして、お金を捻出していくから、どうぞ心配しないで』ということで、徹夜してここまで来てくれたんですよ。それで、仮眠する間もなく、炊き出しに出て、その器をみなさんに配った。それで食べていただいて、ホントに喜ばれたんです。帰ってきたら深夜の12時。ここで一杯飲んで、『私たちはまた明日、食材を集めるから、あなたたちはここでゆっくりして、温泉でも入って帰りなさい』と言ったら『いや、杉浦さん、おれらはこのまま朝に帰るよ。東のために西のおれらが頑張って働かにゃならん』と言ったんですよ。『エライ!どうぞ、そうして支えてやってくれ。助け合う心が、みんなを成長させるよ』・・・こういう支えがいろんなところでいっぱい起きたと思うんですよね」

ときどき声をつまらせながら、杉浦さんはそう語ってくれました。聞いているこちらの胸にも熱いものがこみ上げてきました。

5000個以上の陶器が積まれた4トントラックが到着。
被災された方に心から喜ばれた。
信楽焼と聞いて、喜んで集まる人々。
信楽から駆けつけた陶芸家の皆さんと杉浦さん。
仮眠して帰る陶芸家の山田さんたち。

■「一汁一菜」プロジェクト、そして「カフェ・デ・モンク」。

陶芸家の山田浩之さんはさらに「一汁一菜」というプロジェクトを京都造形大の先生とスタート。ごはん茶碗、お皿、鉢、湯飲み茶碗の41セットで箱をつくり、信楽や京都から車で通い、あまり手の行き届かないような避難所や仮設住宅などを一軒一軒まわって、手渡してきた。昨年の最後の活動は1227日に石巻へ行ってお渡しして、大変喜ばれたということです。

半年ぐらい過ぎますと、物は不十分といえども足りきて、やっぱり今度は『心』なんですよね。精神的なものをどう支えるか。その人たちから苦労したことなどのお話しを聞くということで、通大寺の金田和尚が『カフェ・デ・モンク』を始められた。『杉浦さん、コーヒーカップを持って行っていいか』と。それでコーヒーを飲んでもらって、信楽の器も差し上げたら、すごく喜ばれたんです。『まだあるかい?』、『まだあるよ、持って行って』と。和尚はそれを続けておられるんです。

それから、鎮魂法要として、秋田の西馬音内(にしもない)盆踊りを呼んで、お坊さんたちが供養塔をつくりまして、美しいかがり火のもと、お囃子と舞いを観ていただきました。みなさん、涙を流して観ておられました。
陸前高田では20寺あったお寺のうち4寺が流された。残ったお寺が普門寺に集まって、大法要をしたんですね。その時にも、西馬音内の町長に『みなさんからいただいた支援金があるので来てください』とお願いしたら、『そういうことでしたら、私たちは無償で協力しますよ』と言ってくださいました。バス1台にスタッフ60名ぐらいが来てくれて、大供養が行われました。一晩、かがり火のもとで慰められたかな、と」
杉浦さんは多面的な支援を、昨日のことのように語ってくれました。

大きな囲炉裏での焚き火。いつまで見ても見飽きない。

■ 今年は日本各地で「皿走受(さらそうじゅ)展」。

さらに、今年は「皿走受(さらそうじゅ)展」を企画。一枚一枚の皿に般若心経278文字を書き込んで、亡くなった人への鎮魂と生きている人の命をつなぐ皿として、展覧会が仙台の百貨店・藤崎を皮切りに、日本各地で巡回展示。制作したのは一関市の陶芸家、井上哲治さん。

「井上さんの登り窯は全壊して、友人や生徒も亡くして、立ち直れないぐらいにふさぎ込んで酒浸りになっていた。『何をしているの。いつまでもそれではイカン!』ということで、亡くなった人たちを弔う上でも、般若心経皿をつくろうじゃないか、となったわけです」 

 時に厳しく喝を入れざるをえなかった杉浦さんが、熱いハートからそう語ってくれました。。
この皿走受の売上げの一部は、津波で親を亡くした孤児たちの進学を支援する育英基金「みちのく未来基金」に寄付されるという。あなたの街でこの展覧会を見かけたら、ぜひ覗いてみてくださいね。


次々と支援活動とプロジェクトを精力的に起こしてきた杉浦ママはなんとも自然体。
“どんぶく”をあんな風にカッコよく着こなせる人も稀ですね。
僧侶でもある杉浦風ノ介さんは飄々としたユニークなクリエイター。

栗原の奥の院に、「風の沢」あり。
ここはどこにでもある里山であり、どこにもない桃源郷。
「風の沢」をモデルケースとして、日本の里山が蘇っていく姿が見えるような・・・
その風と、土と、火には、縄文の息吹が微かにいまだに脈打っている・・・

北に栗駒山を配し、
近くには鳴子温泉郷、
東にはサンクチュアリ伊豆沼、
そして北には世界遺産・平泉。

恵まれた豊かな環境であることを気づかせてくれる「風の沢」では、
「風の道」をつくろうじゃないか、という構想も生まれている。

ボブ・ディランも歌っていたように、
風に吹かれて、耳を澄ましてみれば、
答えはすべて風の中に・・・
龍庵拝
 
風の沢ミュージアム&ギャラリー
 〒987-2302 宮城県栗原市一迫片子外の沢11
TEL   0228-52-2811

「紙思考 本濃研太展」
2012年4月22日(日)~10月21日(日)  水・木 休館
 
(平成24317日)