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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2012年1月13日金曜日

2012年1月13日金曜日7:30
牡蠣と海を守るために、唐桑の森で植林活動を続けるカキ養殖業の第一人者 畠山重篤氏。
海を守るためには、そこへ流れる川と、その川へ豊饒な養分を運ぶ森を守らなくてはいけない。
壮大なる自然界の水循環を綴った著書「森は海の恋人」を、momoは何度読んだか分かりません。
震災で大切なお母様を津波で亡くされ、蝋燭の光のもとで書かれたという文藝春秋の手記(平成23年5月特別号)を当時読み、momoは祈るような想いで畠山氏の笑顔を仙台で待ちました。

「私は過去に何度か津波に遭ってきた。津波の後に牡蠣は倍以上の速さで成長してきた。大丈夫、きっと海はよみがえる」
ただならぬ恐怖と不安の中で、畠山氏は海の力をひたすら信じ続けます。

平成24年1月13日早朝「はなもく七三会」主催で開かれた、新春講演会「それでも海は壊れなかった」
そこには、震災前に何度か畠山氏をメディアで拝見した時と同じ笑顔がありました。
会と畠山さんご自身からご了承を得、気仙沼の宮城が誇るべき文化と、自然界の復興を論じた素晴らしい講演内容を、ここにご紹介します。


海が死んだのではないかと思った

気仙沼市唐桑で牡蠣の養殖をしており、親父に次いで私が2代目です。今3代目を息子が継いでおりまして、4代目に当たる孫も4人生まれました。
現在小学校4年の孫が継げば、これで家業が100年続くことになります。
孫に「おまえもお父さんのように牡蠣の養殖をやるんだよ」と教育を開始していたのですが、このような震災を受けまして。我が家は高台にあったおかげで残りましたが、商売に関わるものは何一つ残らず全部流されてしまいました。
暫くは何も手がつかない状態でありましたが、何が一番怖かったかというと、海が死んだんではないかということが一番怖かったですね。

海に生き物がまったくいなくなったんですよ。
海辺というのは、いろんな生き物が蠢いていますよね。
お金にもならないような生き物が海の中にはゴチャゴチャいるわけですよね。
それを餌にしている鳥やカニやフナ虫さえもすっかり海から姿を消してしまいました。

 NPO法人「森は海の恋人」理事長   畠山 重篤 氏

海で暮らしてきた人間ですので、海が生き物を育てる力というものをずっと知っておりますんで、海はそういう力があればですね、また何とかやれんじゃないかと思っていました。
とくに、牡蠣、わかめ、ホタテ、昆布というああいうものの養殖は皆さんが知っている通り、餌、肥料は一切やらなくていいわけですね。タネさえ海へまいておけばなんとかなるんです。だからそういう海の力さえあれば何とかなると思っていましたが、今回はその生き物がまったくいなくなってしまったわけです。ショックが大きかったですね。
息子たちも跡を継ぎまして、比較的若い従業員を2、30人ほど雇っていろんなことを展開していました。私はもうそろそろ引退する年ですので、次の世代や孫の世代のことを考えると苦しい日が続きました。



 海の生産力と復活力

すっかり濁ってしまっていた海ですが、GW前あたりの暖かい時期になってから澄んできまして、孫が「おじいちゃん、魚がいる」って言うんですよ。
見たらちっちゃな魚がコチャコチャやっていたわけですね。それは、もう本当に嬉しかったですね。それを境にしてですね、海の中は魚が溢れてきたわけですよ(笑)
一番驚いたのは、カツオがイワシを追いかける映像がありますけれど、そういうまーるいイワシの団子がですね、湾の奥のほうまで来ているんですよ。
時々サバとか、海のちっちゃいやつなんかに追っかけられるものですから、浜にぶちあがる。ダーーーーッとね。それを拾うんですよ。孫とざるを持って(笑)
皆も「これなんだべ」とそんな感じですよね。それを見て、これは大丈夫だなと直感しました。


蘇った唐桑の海                                                    photo/ kaii

私は51年前にチリ地震津波を水産高校2年のときに経験しました。
親父がチリ地震津波のあとには、牡蠣の育ちのスピードが倍以上になると話していましてね・・・・・・
津波の後って、今回の規模はデカすぎますけど、海の生産力、復活力は思った以上にスゴイということですよね。
今回は、そのことをまざまざと体験させられました。


                                                                                                             photo / kaii

牡蠣の成長


50数年前、私の家の近くに東北大学牡蠣研究所ができて、そこに理学部の今井武夫先生という方がおりました。
学問を東北大学の中だけにとどめておくのではなく、地域の方に還元しなくてはいけないという考えをもっておられました。
牡蠣の研究者として大変有名な先生で、世界中から牡蠣の種を取り寄せて、人工的に牡蠣の赤ちゃんを作って、生産者に渡して村おこしをしようという目的がありました。
つまり、子供を人工的に作って、人工的なプールの中で餌を培養して、人工的に餌を作って、無限に支配している中で海の生物を作ろうという思想がありました。
農業でも土で作るのではなくて、工場で作るものができていますね。それはそれで意味があることだと思いますが、人工的な管理の中でそういうことをやるのは限界があります。
そういう水産の流れが続いていて、牡蠣、アワビ、魚の赤ちゃんを作るということにお金が注ぎこまれました。 ところが、牡蠣が成長していくための餌を供給するのには、莫大な経費がかかるのです。

ヒラメ等の沿岸重要魚種の研究者であられる田中克先生(京都大学名誉教授)は、学生たちを連れて日本の沿岸部を調査をして回りました。そうすると、沖の方で産卵した赤ちゃんが、一回波打ち際に全部集まることがわかった。
ヒラメの生理生態を研究して、ヒラメの将来のことを考えて沿岸域を回ると、波打ち際を見たら日本の沿岸部のほとんどがテトラポットの塊になっているじゃないですか(苦笑)
ヒラメのことを考えると砂浜のことを考えなくてはいけない、砂浜を守るには海から供給されている川を見なきゃいけないということに気づいたというんです。



  森・里・海関連学

 その時、田中先生は牡蠣のために山に木を植えている漁師がいることを思いだしたらしいのです。
20数年前から牡蠣の養殖をやっている漁師が、「森は海の恋人」という標語を掲げている。
山に木を植えている変な奴がいるらしいこと、ずっと気になっていたというんですね。
企業でも物事を全部切って考えている部分があるが、自然界でもそんな風に切って研究する大学のシステムになっていた。
川の流域全体を見渡すという発想は、日本の大学にもなかった。
自然科学というのは農学部の中の研究ですが、水産は水産、山は林学、農業は農学、全体的に統合した学問がなかったということ。 これはいつか誰かがやらなきゃいけない、大学が独立行政法人ということになってきて、個性を出さなくてはいけない。


京都大学はフィールド科学教育研究センターという全学共同利用施設を立ち上げ、「森・里・海連関学」という学問を立ち上げました。
川の流域には人間の生活が横たわっている。人間の生活のことを取り込まないと学問とはいえない。
川の流域に住む人々の生活、それを「里」と名づけた。
8年前の秋に京大で開かれたシンポジウムで基調講演をやりましたが、そういうこと連携して考える時代がとうとう来たなと、強く実感しましたね。
《中編に続く》


・・・・・ああ、畠山さんが眼の前で笑っている。
 NHK『プロフェッショナル仕事への流儀』で放送された「それでも海を信じてる」(平成23年12月12日放送)の中で、体調を崩されているという話があり、本当にこの講演が実施されるのか、私は秘かに心配していました。しかし、身振り手振りでお話された畠山さんの元気なお姿に、そんな心配など、安波山(あんばさん)の遥か彼方へ飛んでいきました!唐桑の海が元気になるのと同じくらい、畠山さんがお元気になられて本当に嬉しい! この日の夕食は牡蠣フライで祝杯をあげ、水山養殖場さんで作られた唐桑の四季のスライドに再度涙したのでありました。

▼「鎮魂の森」に指定された気仙沼市 安波山(あんばさん) by kaii
http://kokoropress.blogspot.com/2012/01/blog-post_3658.html

後編では、小学館児童文学賞を受賞された名著「森は海の恋人」は、気仙沼の歌人、熊谷龍子さんとの出会いによって作られたという感動秘話をお伝えします。
題して、「宮城県が誇るべき気仙沼の文化と柞(ははそ)の森」
どうぞ、お楽しみに!





 仙台はなもく七三会新春講演会
 主催:仙台はなもく七三会  http://hanamoku73.blog106.fc2.com/blog-date-201202.html

 (取材 平成24年1月13日 ホテルメトロポリタンにて)

《MEMO》
畠山 重篤(はたけやま・ しげあつ)
1943年中国上海生
NPO法人「森は海の恋人」理事長
京都大学フィールド科学研究所研究センター社会連携教授
代表著書 「森は海の恋人」(文春文庫)
「牡蠣礼賛」(文春文庫)
「鉄は魔法つかい、命と地球をはぐぐむ鉄物語」(小学館)

NPO法人「森は海の恋人」
http://www.mori-umi.org/base.html