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宮城県復興応援ブログ ココロプレス

「ココロプレス」では、全国からいただいたご支援への感謝と東日本大震災の風化防止のため、宮城の復興の様子や地域の取り組みを随時発信しています。 ぜひご覧ください。

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写真 「19年連続 生鮮カツオ水揚げ日本一」に向けて、気仙沼では生鮮カツオ水揚げが順調です。「今年はとりわけ脂が乗っている」と関係者の表情もほころんでいます。
2015.7 ~宮城県震災復興推進課~
2012年1月3日火曜日

2012年1月3日火曜日12:00

さて皆さん、このダンディーな方が手にしている物が何だか分かりますか?




海辺で網の籠ですから、何かの漁具だということはすぐにピンとくると思います。
では、何を獲るのかというと、それはカニ。
それもカンボジアのマングローブの水辺に棲むカニを捕まえるための。

あれ、ここは確か牡鹿半島の先っぽ、鮎川港ですよね?

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ココロデスクです。

この写真の方は、益田文和さん。
東京造形大学教授としてインダストリアルデザインを教える一方、ご自身でも(株)オープンハウスというデザイン会社を経営しています。
かつては、frogdesign(本社ドイツ)の日本法人でデザインディレクターを務めていた時期もあると紹介したら、エッと身を乗り出す方もいるかもしれませんね。


益田先生とは、今回のボランティアで初めてお会いしました。「最上の元氣研究所・ボランティアセンターを支援する会 山形」が運営している石巻市苔の浦の「基地」で同宿しているのです。

最上の元氣研究所 湯治ブログ

遥々山形県の赤倉温泉から被災地のお風呂に源泉を輸送したタンク




「マングローブの繁る汽水域にこの籠を沈めておくと、夜中にカニが入ったきり出られなくなる。そのカニが、現地の人たちの貴重な収入源になるんです」


こうした籠は現地でも1つ1ドル程で販売されています。
円高の昨今では80円に満たない額ですが、平均日当が約75円といわれるカンボジアの人たちにとっては、1日働いても籠一つが買えるかどうか。
日本から支援の手を差し伸べようという動きは、以前からありました。
益田先生もこの考えに賛同してきた一人なのです。


「日本から完成品を送ることも考えられる。けれど、向こうの人たち自身も何か動くことで、より自立が確かなものになる。そのために、作り方と材料を提供して、そこから先はカンボジアの人たち自身の手で組み立てて完成してもらう。せっかくだから従来の製品を超えた性能で、しかも組み立てが容易なものを提供したいと、設計に取り組んでいるところです」

益田先生の目下の研究テーマは「サステナブル・デザイン」。持続可能な社会を建設するために、社会の仕組みから物のデザインまでを根底から考え直そうという研究です。


益田先生が、カンボジアのカニ籠にこだわる理由もそこにあります。


「問題は材料の網。もちろん新品を加工しても良いのだけれど、少しでもコストを下げられないか悩んでいた。そこへ漁村でボランティアに取り組んでいる仲間から、漁網の中には廃棄されるものもあるという情報がとどいたのです」


もちろん、使える網が大部分であり、廃棄される網はそう多くはありません。ただ、廃棄するとすれば、被災地にとって何らかのコスト負担は生じますし、環境への負荷も無視できません。
でも、もしもそれが、また有用な道具として甦るのなら・・・・・・

「使えなくなった漁網を求めています」というチラシを配ったところ、「なんだ、こんなもので良かったら、くれてやるよ」という申し出をさっそく何件かもらったそうです。


「被災した方々に、“支援します、物資を差し上げます”、と歩み寄れば、それは歓迎されます。ただ、本来支援する側であるはずの我々から“カンボジアの漁師のために要らない漁網を分けてください”とお願いをすることで、互いに対等の立場で生きているんだ、そして世界全体と繋がっているんだ、という共感のようなものが芽生えたような気がします」


「自分たちはこれほどまでにひどい目にあった。それでも、ほかの誰かの手助けになることができる。元気になってくれる人が地球のどこかにいる。―――それを実感することが、被災した人たちにとって生きる原動力になるのだと思います」

漁網は、被災地に来た学生たちがボランティアの合間に探して回ります。
漁網を探すために被災地をくまなく回り、つぶさに観察をすることで、これまで以上に被災地のことを深く知ることができているそうです。
将来、カンボジアの人たちがこの籠を使ってカニを獲ったら、それを適正な価格で日本に輸入する「フェアトレード」の構想もあるそうです。


海がもたらした津波という大きな不幸から立ち上がる。
立ち上がりながら、遠く海の向こうの人々が立ち上がるための力になる。
しかも奇想天外な方法で。
やっぱり海はどこまでもつながっているということなんだろう。
---益田先生のお話を聞いて、ココロデスクはそんなことを考えました




「ここには、様々な発想につがなるパワーがある」

メッセージボードにこう書き記していただき、ココロデスクは石巻を後にしました。


(平成24年1月3日)